複数の箇所にピントが合う多焦点眼内レンズ。
手術を受ける際には医師の説明をしっかり聞いて、自分に最適なものを選ぶことが重要です。

教えてくれたのは
ビッセン宮島弘子さん
ビッセン宮島弘子さん

1981年、慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院眼科で研修後、3年間、ボン大学で白内障の新しい手術を学び帰国。2003年より東京歯科大学水道橋病院眼科教授。日本眼科学会専門医。’18年よりアジア太平洋白内障屈折矯正手術学会理事長

現在、単焦点眼内レンズの手術は全額保険、多焦点眼内レンズの手術は一部保険

単焦点眼内レンズの手術は保険適用ですが、多焦点眼内レンズを入れる場合は、20年3月まで保険が適用されない先進医療の対象で全額自己負担となっていました。20年4月の保険改正で、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が先進医療から選定療養の対象となりました。選定療養とは、患者さんが追加費用を負担することで、保険適用外の治療を保険適用の治療と併せて受けることができる医療です。

具体的には、通常の単焦点眼内レンズと変わらない部分は保険適用、多焦点レンズを選択することで増える費用、すなわち単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの差額と追加検査が保険適用外で自己負担になります。

今まで保険が適用されなかった多焦点レンズに一部保険が適用されることで、眼内レンズの選択肢が広がったともいえます。

それぞれにメリット、デメリットがある単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ。なかには両方を組み合わせたり、単焦点でモノビジョン(片方の目で近くを見て、片方の目で遠くを見る方法)にするやり方もあるのだそう。

「ただ、そこまでするには患者さん一人一人と時間をかけて話し、レンズの適性を見極める必要があります。見え方には、些細な違和感が気になるタイプかそうでないかといった性格も影響するため、カウンセリングにも時間がかかるのです。とはいえ、日本の保険診療で一人に長い時間をかけるのは正直難しい。お金がかかってもじっくり相談したいという人は、保険診療でなく自由診療という選択肢もあります。」

白内障治療イメージ

「単焦点眼内レンズは保険適用ですが、多焦点眼内レンズは保険適用の費用に加え、多焦点眼内レンズを選択することで増える費用が自己負担となります。この負担金は、東京歯科大学水道橋病院の場合、眼内レンズの種類によって異なり、片眼約15-19万円です。」(ビッセン先生)

【多焦点レンズの種類と特徴】

多焦点レンズの種類と特徴

◆選定療養が使える国内認可レンズ◆

●パンオプティクス●
現在のところ、 選定療養適用の3焦点レンズはこれだけ
3焦点
遠方 ○
中間 40〜100cm ○
近く 30cm ○
乱視矯正可 ○
ハロー、 グレア △

●テクニスマルチ●
手元がよく見える
2焦点
遠方 ○
中間 40〜100cm △
近く 30cm ○
乱視矯正可 ×
ハロー、 グレア △

●シンフォニー●
遠くから中間まで自然に見える
EDOF
遠方 ○
中間 40〜100cm ○
近く 30cm △
乱視矯正可 ○
ハロー、 グレア △

◆全額自費診療の未認可レンズ◆

●ファインビジョン●
ほとんどメガネをかけずに生活できる
3焦点
遠方 ○
中間 40〜100cm ○
近く 30cm ○
乱視矯正可 ○
ハロー、 グレア △

●レンティス●
近視や乱視が強くてもオーダーメイドで適切なレンズが使える
2焦点
遠方 ○
中間 40〜100cm ○
近く 30cm ○
乱視矯正可 ○
ハロー、 グレア △

次回は、白内障の治療に関するQ&Aをご紹介します。

イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/上田恵子
※OurAge 2020.09.11掲載