そもそも便秘についての認識が間違っていると、思わぬトラブルを招く場合も! ここでは、誤解していることも多い便秘のホントについてQ&Aでご紹介します。

慶應義塾大学医学部 内科学(消化器)専任講師。慶應義塾大学病院 消化器内科にて便秘外来を担当。専門は、消化器内科、食道、胃、十二指腸、機能性消化管障害など。日本消化器病学会専門医。過敏性腸症候群診療ガイドライン作成委員
Q 更年期になるとなぜ便秘がひどくなるの?
A 筋肉の衰え、ストレスなど、複合的な要因が考えられます。
「女性ホルモンのエストロゲンは腸の運動を抑制するので、エストロゲンが減る更年期には便秘が解消しそうですが、実際は男性も女性も加齢とともに便秘の人が増えてきます。原因としては、大腸の中にある筋肉の衰えが疑われています。加えて、女性は更年期に伴う体の変化がストレスになり、大腸を動かしている自律神経を乱します。これらが複合して、更年期の便秘の原因になっていると考えられます」
Q 便秘薬を常用すると腸が黒くなるってホント?
A 刺激性下剤を常用すると、腸が真っ黒になる「大腸メラノーシス」に。
「本当です。センナなど刺激性の下剤を長期間服用すると、腸の粘膜に色素沈着が起こり、腸が真っ黒になります。これを『大腸メラノーシス』といいます。病気ではありませんが、大腸の神経機能が鈍って次第に下剤が効かなくなることもあるので、刺激性の下剤はどうしてもつらいときだけにし、使用は短期間にとどめて」

Q 宿便って ホントにあるの?
A 医学的には定義されていませんが、下剤を飲んでも便が残る場合が。
「医学的には”宿便”という言葉はありません。ただ、大腸内視鏡検査などをする際に、下剤を服用しても腸に便が残ってしまう人はいます。便がたまりすぎていて下剤でも出きらなかったり、直腸にコロコロの便が残っていたりするのです。これはある意味、宿便といえるかもしれませんが、多くの人がイメージするように、便が腸にこびりついているわけではありません」
Q トイレでいきみすぎるとよくない?
A いきむと血圧が上がり、脳卒中などを招くこともあるので要注意。
「便秘だからといって、無理に便を出そうとしてトイレでいきみすぎるのはNG。切れ痔などの原因になるだけでなく、いきむと血圧が急激に上がるので、脳卒中の原因にもなりかねません。つねにいきまないと出ないという人は、医療機関で便秘薬を処方してもらい、いきまなくても排便できるようにすることがおすすめです」
Q 糖質制限をすると便秘になりやすい?
A 食物繊維が不足して便秘になる人もいるようです。
「ダイエットのために糖質制限をするのがはやっていますが、ご飯などの糖質を極端にカットすると一緒に含まれている食物繊維もカットされてしまうため、便秘になる人が多いようです。ダイエットには有効だとはいえ、極端に糖質制限をするのは、便秘を防ぐためにはおすすめしません」

Q ストレスがあると便秘になる?
A 交感神経が優位になり、腸の動きが悪くなるので便秘になりやすい。
「体のほかの臓器と違って、腸は自律神経の副交感神経が優位になったときに活発に動きます。ストレスがあると交感神経が優位になり、腸の動きが悪くなるので便秘になりやすいのです。便秘対策には、ストレスをうまく発散してため込まないのも大事です」
次回は、「生活習慣」のなかで心がけるとよい、便秘を解消する“大腸活”テクをご紹介します。
■しぶとい便秘を解決 OurAgeで読む
便が出やすい「直腸と肛門」の角度があるって知ってる?/便秘を解消する生活習慣①
水溶性食物繊維や発酵食品はしっかり摂るべきだけど、摂りすぎにも問題がある!?/便秘を解消する生活習慣②
ラスト/ハヤシコウ 取材・原文/和田美穂
※OurAge 2020.06.26掲載