周囲の音が聞こえない静かな場所にいるときに「キーン」といった高い音や「ジジジ」といった低い音が聞こえた経験はないでしょうか? 実際には音が鳴っていないのに、何か聞こえるように感じる状態を「耳鳴り」といいますが、疲れているときや気圧の加減、さらには年齢を重ねることで耳鳴りの症状を感じる人は多いよう。また、耳鳴りは慢性化すると日常生活に支障がでるため注意が必要です。

耳鳴りのイメージ画像

耳鳴りは体内で発生している雑音

漢方薬を中心に一般用医薬品と医療用医薬品を販売するクラシエ薬品株式会社が、全国の20~70代の男女200名を対象に耳鳴りの実態を調査*。その結果、なんと全体の半数が「耳鳴りを感じたことがある」と回答。特に40代と60代以上が多く、中高年以上の経験率が比較的高いようですが、その他の世代も40~47%が耳鳴りを経験しており、決して少なくはありません。

*【調査概要】
調査対象:全国の20代~70代の男女200名(有効回答数) 調査期間:2023年1月6日 ~ 2023年1月10日 調査方法:インターネットアンケート/クラシエ調べ(株式会社ドゥ・ハウスmyアンケートlight利用))

耳鳴り経験の調査結果グラフ

そもそも耳鳴りはどこからの音なのでしょう? 耳鳴りは周囲から聞こえる音ではなく、体の中で発生している雑音です。人間の体は、内耳にある蝸牛(かぎゅう)内の有毛細胞が音の振動を電気信号に変換して脳へ届けることで音を認識しています。しかし、その途中に機能障害が起きると音を認識しづらくなります。 耳鳴りの症状は「自覚的耳鳴り」と「他覚的耳鳴り」の2種類。脳が音の不足を感じ、不足した音を補うために本来はない音を作り出すものを「自覚的耳鳴り」、耳周辺の組織から発生する音を「他覚的耳鳴り」といい、それぞれ以下のように、聞こえ方も異なります。

■自覚的耳鳴り
☑本人にしか音が聞こえない
☑原因は多岐にわたる


■他覚的耳鳴り
☑注意して聞けば本人以外にも聞こえる
☑体内で実際に雑音が発生している
☑血液の流れによる雑音(ドクドク、ゴー、ザー)
☑筋肉の痙攣による雑音(コツコツ、ポコポコ)

また、耳鳴りを感じたことがあると回答した人に耳鳴りの特徴を尋ねたところ、「キーン、ピーン」といった高い音と回答した人が約7割、片耳だけで起こると回答した人は約5割となり、耳鳴りを感じる音や不快感には個人差があるようです。

耳鳴りの特徴についての調査結果グラフ

疲れとストレスで耳鳴りが起こりがち

どんなときに耳鳴りを感じるのかは世代別に違いがあるようですが、「疲れを感じたとき」「ストレスを感じたとき」は全世代で上位に。ストレスや疲れを感じると自律神経が乱れ、体を活発にする交感神経が優位に働きます。これにより、血管が収縮し、耳周辺の血流が悪くなるため耳鳴りが現れやすくなります。ストレスや疲れが原因の場合は「キーン、ピーン」 といった金属音や電子音のような高い音を感じたり、同時に肩もこる傾向があります。 

どのようなときに耳鳴りが起こるか調査結果グラフ

世代別耳鳴りが起こったシチュエーション

50代、60代以上では、「年齢と共に耳鳴りを感じやすくなった」が上位にランクイン。加齢によって耳鳴りを感じる割合が高くなっている様子がうかがえます。音が聞こえる仕組みには蝸牛内の有毛細胞が重要な役割を担っていますが、加齢が進むと、有毛細胞自体が徐々に減少します。また、加齢とともに血圧が上がると、高血圧の随伴症状としても耳鳴りが起こります。 

一方、30代、40代は「気圧の変化を感じたとき」が上位に。耳鳴りは、気圧の変化による不調のことを指す「気象病」の症状のひとつとしても知られています。気圧の変化によって皮膚と鼓膜に圧力がかかることで、耳が余分な音を逃がしにくくなってしまい、耳鳴りを引き起こすのです。 

20代のみ「長時間イヤホンを使用したとき」との回答が上位で、世代での特徴が明らかに。大音量で音を聞いたりイヤホンを長時間使用すると、耳は大きな音や衝撃により損傷を受けてしまいます。テレワー クでイヤホンを使用する機会が増えたり、場所や時間を問わずイヤホンを使用する習慣も耳鳴りの原因となるので注意が必要です。

規則正しい生活と水分補給で耳鳴り予防

耳鳴りを予防するには、自律神経を整えるために睡眠不足を解消したり、イヤホンの長時間の使用を避けるなど、まずはライフスタイルを見直すことが大切です。

漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成され、これらが互いに影響しあっていると考えられています。健康のためには気・血・水の3つが十分かつバランスよくめぐっていることが大切ですが、 耳鳴りは、3つの構成のうち「血」が不足することや「水」の代謝が悪くなることで生じると考えられています。

「血」が不足すると聴覚器官に栄養を届けることができなくなり、機能低下を起こして正しく音を感知できなくなるため耳鳴りを引き起こします。また、「水」の代謝が悪くなると、聴覚器官である蝸牛に「水」が停滞してむくんだような状態となり、正しく音を伝えることができず、耳鳴りにつながります。水分代謝が悪くなっている場合には、水はけをよくするために水分を摂取するのも有効ですが、一度に多くの量を飲むのではなく、こまめに摂取を。一方、水分の流れが滞る「水滞」はすでに余分な水が体内にたまっている状態なので、くれぐれも水分のとりすぎに注意しましょう。 

また、耳鳴りによる症状には漢方薬という選択肢も。漢方は、身体の中のバランスを整え、症状を改善するはたらきがあるため、不調にしっかり向き合いたい人におすすめです。 

七物降下湯(しちもつこうかとう) 
高血圧による耳鳴りにおすすめ
加齢とともに減っていく「血(けつ)」を増やし、めぐりを良くすることで、耳鳴りなどの高血圧の随伴症状を改善していく処方です。 漢方では血圧の上昇によって現れる不快な症状に着目し、体のバランスを整えることで症状の改善から血圧の調和までも図ります。「七物降下湯」は、年齢とともに衰えた内耳器官に栄養を与えることで耳鳴りを緩和したり、全身に栄養を与えます。また、熱を冷ますことで熱感や興奮を静めて、のぼせや血圧の上昇を整えます。
●クラシエ七物降下湯エキス錠(第2類医薬品) 

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) 
気象病症状に伴うめまい、耳鳴りにおすすめ
体の余分な水分を尿として排出させる処方。滞った「水(すい)」の巡りを改善することができ、体のバランスを整えてくれる効果があります。さらに、「心 (しん)」にもはたらき、動悸や息切れなどを改善します。 
●「クラシエ」漢方苓桂朮甘湯エキス顆粒(第2類医薬品)

耳鳴りがするということは、体が不調であるというわかりやすいサイン。疲れやストレスをためずにうまく休んだり発散させつつ、ときには漢方薬に頼るなど、自分をいたわることを優先に考えるきっかけにしたいですね。

構成・文/長岡絢子 Photo by Pixsooz / iStock / Getty Images Plus