頭の片側がズキズキ痛む「片頭痛」に悩まされている人は男性より女性のほうが多く、20〜50代と幅広い年代に発症しているようです。他人事とは言っていられない身近なこの病気のこと、あなたはどれくらい知っていますか?

頭痛に悩む女性の画像

「痛みが見えない」病気だけに、やっかいなんです

本人にとってはものすごくツライのに、その痛みを周囲に理解してもらえないこともあるのが頭痛。そのため、つい痛みをガマンしてしまったり、無理をしたりしがちです。でも一方で、「仕事や家事に集中できない」「サボっている(甘えている)と思われてしまう」など、日常生活に支障をきたしているという現実も…。

そんな頭痛のなかでも、"片頭痛の実態"を詳しく知ることができたのが、先日行われた「片頭痛コントロールカレッジ」。頭痛の悩みを抱えるインフルエンサーを対象したオンラインセミナーで、3人の頭痛専門医によるレクチャーに加え、インフルエンサーたちも参加してのパネルディスカッションも行われました。

オンラインセミナー

日本頭痛学会、JPAC(頭痛医療を促進する患者と医療従事者の会)、アムジェン株式会社の共催でリモート開催された「片頭痛コントロールカレッジ」の様子。

教えてくれた先生方
平田幸一先生

獨協医科大学医学部 副学長

平田幸一先生

日本頭痛学会 代表理事/専門医、日本神経学会 名誉会員/元理事 等、日本神経治療学会 名誉会員/前理事長。

坂井文彦先生

埼玉国際頭痛センター長

坂井文彦先生

日本頭痛学会 顧問/名誉会員/元理事長/専門医、日本神経学会 名誉会員/元会長、国際頭痛学会 名誉会員/元理事長/元会長。

松森保彦先生

仙台頭痛脳神経クリニック 院長

松森保彦先生

日本頭痛学会 代議員/指導医/専門医、日本脳神経外科学会 専門医、日本脳卒中学会 専門医。

頭痛の種類に合った治療法があります

「頭痛には、くも膜下出血など他の病気の一症状として起こる「危ない頭痛」と、頭痛そのものが病気で痛みが繰り返し起こる「困る頭痛」があります」と言うのは、仙台頭痛脳神経クリニック 院長の松森保彦先生。その"困る頭痛"として代表的なのが、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など。これらは検査をしても大きな異常は見つからず、生命にかかわることはごくまれ。とはいえ、痛みが繰り返されるから「困る頭痛」なんですね。

このうち、緊張型頭痛は「頭が締めつけられるような痛み」をほとんど毎日感じ、肩や首のこりを併発。ただ、その痛みは軽いことも多く、運動で紛れることもあります。群発頭痛の症例はそれほど多くなく、目の奥にじっとしていられないほどの強い痛みが走り、それが年に数回、1カ月ほど続くのが特徴です。

そして、"困る頭痛"の中でもいちばん身近で問題なのが、片頭痛


「片頭痛の患者は全国で推定840万人。男女比では圧倒的に女性のほうが多く、男性の約4倍とされています。なかでも特に突出しているのが30代の女性。仕事や子育てなど、アクティブに過ごしている方たちが片頭痛に悩まされているのです」とは、獨協医科大学 副学長の平田幸一先生。

松森先生いわく、「頭痛は、助けてのサインです。痛み止めは我慢せずに早く使いましょう」とのこと。ただし、「痛み止めを月に10日以上使うと頭痛が悪化する可能性があります」とも。

とはいえ、片頭痛のために「出かけるのがツライ」「次にいつ痛くなるのか不安で人と約束もできない」といった状態になることも多いため、そのままにしていてはQOL(生活の質)は下がる一方です。そんな人はぜひ一度、頭痛外来などの専門医に相談を。2021年4月から、片頭痛の原因となる痛みの伝達物質(CGRP)をブロックする薬での治療が保険適用に。頭痛の頻度や程度を改善し、痛みの持続期間を短縮する予防治療が始まっています。

自分のためにも治療にも、〈頭痛ダイアリー〉が役に立ちます

ちなみに、自分の頭痛は片頭痛なのかわからないという人もいるのでは? 片頭痛のおもな特徴は以下のとおり。

・頭の片側がズキズキ痛む
・その痛みが月に数回繰り返される
・吐き気や嘔吐を伴うことも
・光や音で痛みが発生
・動くとツライ!

光や音は日常的にあるものだけに、言い換えればいつでも片頭痛が起こる可能性があるわけです。また、緊張やストレス、疲労などから引き起こされたり、空腹や月経、食べたものや飲みものが原因となることも。「香り」がトリガーになる場合も多く、香水、芳香剤、柔軟剤など一般的に「いい香り」とされるニオイを嗅いで片頭痛になる人もいます。なるほど、これでは「外出するのが怖い」という人が多いのもうなずけます。

そこで役立つのが〈頭痛ダイアリー〉
「自分の頭痛を観察することにより、どんなときに片頭痛が起きやすいかなどが整理できるようになります」とは埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦先生。治療にあたる医師にとっても、痛みが見えない頭痛の程度を探る指標となり、適切な治療計画を立てやすくなるのだとか。


木田千裕さん

患者代表として登場した木田千裕さんも、頭痛ダイアリーを長年活用しているんだそう。
「最初の頃はどうつけるのかとまどってしまうこともありましたが、振り返ってみることができるので、自分の頭痛とのつき合い方がわかってきました」

頭痛ダイアリー

頭痛ダイアリー記載例

↑こちらは、坂井文彦先生が監修した頭痛ダイアリーとその記録例。頭痛ダイアリーは、日本頭痛学会の公式サイトからダウンロードできます。頭痛が起きた時間帯や痛みの程度、日常生活への影響度、飲んだ薬などを自分で記入していきます。

また、今年8月よりスタートしたLINE公式アカウント「片頭痛@LINE ヘルスケア」(監修:日本頭痛学会、コンテンツ提供:アムジェン株式会社)を利用して頭痛ダイアリーを記録することもできます。スマホならより手軽に始められるかもしれませんね。このアカウントページには、片頭痛とうまくつき合う方法や、日本頭痛学会認定の専門医が所属する病院検索なども用意されています。

11月28日(日)13時〜「第2回 片頭痛コントロールカレッジ」開催

もっと頭痛ダイアリーのことが知りたい、片頭痛の知識を深めたいという人は、患者であるみなさんやそのご家族、興味のある方が誰でも参加できるオンラインセミナー「第2回 片頭痛コントロールカレッジ」を要チェック。開催日時は11月28日(日)13:00〜14:30。視聴は無料で、アムジェン株式会社が運営する「片頭痛コントロール」サイトから申し込めます。日本頭痛学会のサイトと片頭痛@Lineヘルスケアからも上記アムジェンのサイトにリンクされています。

「ただ頭が痛いだけ」とあきらめて片頭痛を放置してしまったり、まわりが痛みを理解しないことは、大きな経済損失につながるという研究結果もあります。自分のためにも、また片頭痛に悩むまわりの人のためにも、正しい知識を持っておきたいものです。

取材・文/佐藤素美 Photo by Photostock_Studio/iStock/gettyimages