八田真理子先生のイラストによる、連載第6回の扉

集英社の女性誌10誌が実施したアンケートの結果、10代20代の女性たちには生理前につらい症状が起こる「PMS(月経前症候群)」に関する悩みがたくさんあることがわかりました。PMSの疑問や不安に、産婦人科医の八田真理子先生にお答えいただきます。

今月お話をうかがうのは…
八田真理子先生

産婦人科専門医

八田真理子先生

聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 理事長・院長。地域密着型クリニックとして思春期から更年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行なっています。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。

PMSが起こるのは、生理前に女性ホルモンが大きく変動するから

増田PMS(月経前症候群)を経験している女性は、月経(生理)のある女性の約70~80%もいるといわれます。その中で、中等症から重症のつらい症状に悩まされている人が、約20人に1人はいると報告されています。年代別では20~49歳が多く、なかでも20代に多くなっています*1。八田先生、PMSはどうして起こるのでしょうか?

*1 20~49歳の日本人女性1187人を対象に行われた調査「Arch Womens Ment Health; 9(4): 209-212, 2006」より

八田先生PMSは、月経3~10日前の期間に起こる精神的、身体的症状で、月経開始とともに、軽快したり消失したりする症状です。原因はまだはっきりわかっていないことが多いのですが、2つの女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの変動が関係していると考えられています。

排卵がある女性は、排卵から月経までの期間に、エストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されます。この期間の後半(つまり月経前)にエストロゲンとプロゲステロンが急激に変動し、脳内の神経伝達物質のセロトニンやGABA(γ‐アミノ酪酸)などが低下することで、PMSが起こると考えられているんです。
でも、脳内の神経伝達物質はストレスの影響も受けますから、PMSは女性ホルモンの変動だけではなく、さまざまな要因が関係して起こるのです。

PMSの症状には、どんなものがあるの?

増田:PMSには、100~200種類ともいわれるほど多種多様な症状がありますが、どんな症状で悩む人が多いのでしょうか?

八田先生:多いのは、イライラする、怒りっぽくなる、うつっぽくなる、胸(乳房)が張る・痛いなど。それから、食欲が増す、眠い、腹痛、むくむなどもよくありますね。PMSのおもな症状チェックをまとめましたので、参考にしてみてください。

PMSチェックリスト

*2 『産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020』日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会: 174-176, を参考に改変

症状がつらい人の特徴は?

増田:PMSがつらい人とそうでもない人がいるのは、なぜでしょうか? つらい人の特徴はありますか?

八田先生:基本的に、排卵が正常に起こっている女性ならば、症状の程度に違いはあっても誰もがPMSの症状が出る可能性はあります。一般的には、食生活(栄養バランス)や生活スタイル(睡眠、運動など)の乱れ、塩分・糖分・カフェインの過剰摂取、喫煙、飲酒などが症状を悪化させるといわれています。

特にメンタル症状は、エネルギー摂取量の不足がベースにあるのでは、と私は思っています。炭水化物を摂っていないと、イライラの原因にもなるんです。私の印象ですが、ダイエットを続けていたり、食事をバランスよく摂れてない女性にPMSが多い気がしています。つらい症状に悩んでいる人には特に、食生活の大切さを伝えたいですね。

脳内の神経伝達物質のセロトニンやGABAは、腸内細菌叢からも分泌されています。月経前に便秘になりやすい場合、便秘を改善することでPMSがよくなる人もいます。お通じを良くするためにも、食事や運動は大切です。また、PMSと性格の関係はまだよくわかっていませんが、几帳面な人は、自分の体や心の症状に、より気づきやすいという可能性はありますね。

増田:PMSがつらい人と月経痛がつらい人とは、重なりますか?

八田先生:はい、重なると思います。PMS症状が強い傾向の人のうち約8割は、月経痛(生理痛)がひどいという報告もあります。女性ホルモンの変動の振幅が大きい人は、PMSにも月経痛にもなりやすいのかもしれません。

リモート取材中の八田真理子先生

リモートで取材に対応いただいた八田真理子先生。

PMSは充電期間とポジティブにとらえてみて!

八田先生:PMSは、女性の体が妊娠の準備をするために起こる症状です。水分や栄養を体にため込み、活動量が減って内向的になるなど、外界から体を守ろうとする原始的な女性の本能のひとつ。PMSの時期は、感情が豊かになるときでもあります。ネガティブにとらえず、メンテナンスや充電をするときと前向きに考えて、本を読んだり映画を観たり、リラックスできることをして過ごしてはどうでしょう。

PMSは症状の種類も程度も、本当に人それぞれ。ですから人と比べるのではなく、自分自身がどう感じているかが重要です。つらいと感じたら、我慢する必要はありません。まれに病気が隠れている場合もあるので、つらい症状を抱えている人はぜひ一度、婦人科を受診してください。

増田:八田先生、ありがとうございます。PMSを体と心のメンテナンス期間とポジティブに考えるって、いいですね!
次回は、PMS症状を具体的に改善する方法について、さらに詳しく伺います。

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増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

撮影/島袋智子 イラスト/itabamoe Photo by RyanKing999/iStock/gettymages  取材・文/増田美加 企画・編集/浅香淳子(yoi)

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