健康や美容に“睡眠“が大事というのは、誰しも一度は耳にしたことがあるはず。質のよい睡眠で得られる効果はさまざまで、細胞の再生や血行改善、自律神経の調整などがあります。でも、睡眠が大事、とわかってはいても、日々忙しく過ごす中で、十分な睡眠時間や質のよい睡眠をとれている人は少ないのではないでしょうか?

yoiは、北欧発のオーガニックCBDブランド「ENDOCA」が支援する「臨床CBDオイル研究会」が4月に開催したセミナーを取材。その中から興味深いテーマをピックアップして3回にわたりご紹介します。今回は、日本カンナビノイド学会認定登録医、日本睡眠学会会員で皮膚科専門医でもある岩本麻奈先生の講演から、先生が提唱する“睡眠美容”に役立つCBDオイルの活用方法について。

OECD加盟国でも最下位! “寝不足”国家日本にはCBDが効く?

夜と時計のイメージ写真

OECD(世界38の先進国が加盟する経済協力開発機構)の「世界一の睡眠貧者の国はどこか?」という統計によると、日本人の1日あたりの平均睡眠時間は約440分(7時間半ほど)。世界平均の約500分(約8時間半)を大きく下回り、日本は最下位レベルの“睡眠貧者”国家でした(ちなみにアメリカは約520分、イギリスは約510分、日本に次いで下位の韓国は約460分でした)。

さらに、「各国の1日あたりの男女別睡眠時間比較」では、欧米の主要国やOECD加盟国の平均は女性のほうが睡眠時間が長いのに対し、日本は男性より女性のほうが睡眠時間が短い傾向に。昨今、睡眠不足は健康や美容だけでなく、経済効果にも影響があるとの見方もあるそう。日々のQOL向上のために、短い時間でも質のよい睡眠をとるにはどうすればいいのでしょうか?

各国の1日当たるの男女別睡眠時間比較のグラフ

体内環境を整える「ECS(エンドカンナビノイドシステム)」

岩本先生によれば、人間の体には“ホメオスタシス”を司る「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」というマスターコントロールシステムがあり、これが生命の存続、健康維持にとって非常に重要なのだとか。

“ホメオスタシス”とは日本語では「生体恒常性」といい、体温や血液量、血液成分など、生物の内部環境を一定の状態に保ち続けようとする能力のこと。ECSは、人間が本来持っているホメオスタシスを維持するために、神経伝達物質である体内のカンナビノイド(エンドカンナビノイド)が受容体に作用して細胞に適切な指示を与えるネットワークシステムです。近年は、加齢やストレスによってECSの働きが低下することや、その働きが弱るとカンナビノイド欠乏症になり、さまざまな病気にかかる可能性があることが研究により明らかになっています。

一方、医療や美容業界など、近年さまざまな分野で注目されている成分「CBD(カンナビジオール)」は、100種類以上あるフィト(植物性)カンナビノイドのひとつで、日本では麻(大麻草)の茎や種子から抽出される成分のみが流通しています。CBDには精神を高揚させる作用や中毒性がなく、ストレス緩和やリラックス効果があることが知られています。

ECSを向上させるためには、運動や食事、鍼灸、マッサージ、呼吸法、瞑想に加えてやはり質のよい睡眠がもっとも効果的。そして、体外から摂取する植物性カンナビノイドも、ECSの働きに作用することがわかっています。CBDの摂取によってもたらされる深い睡眠は、ECSの働きを活性化させ、健康維持や美容にも効果を発揮すると岩本先生は言います。

“睡眠美容”におすすめのCBDスタイルは?

CBDオイルを舌下に垂らす女性イラスト

ストレスや環境の変化、体の不調などいろいろな要因で眠れない状態が続くと、精神的にも身体的にもつらいですよね。とにかく眠るために睡眠薬を処方してもらうというケースもありますが、睡眠薬や寝酒に頼る前に、CBDに精通した医師のいるクリニックに相談してみるのも解決策のひとつ。

岩本先生が提唱するのは、細胞再生や血行改善、自律神経の調整といった睡眠の恩恵を健康と美容に役立てる“睡眠美容”。先生の勤務するクリニック(「ナチュラルハーモニークリニック表参道」「グランプロクリニック銀座」)では、カウンセリングののち、ライフスタイルの見直しやサプリメントの処方、栄養ホルモン検査やアレルギー検査、睡眠に効果的な入浴法などの指導に加えて、CBDオイル(経口吸収)、CBDバーム(経皮吸収)の処方も行なっています。基本的に、CBDには重篤な副作用がなく使いやすいものの、個人のカンナビノイドトーン(エンドカンナビノイドの欠乏度合いの違い)によって摂取すべき適量が異なり、薬やサプリを常用している人は薬物相互作用などもあることから、CBDに詳しい医師に相談するのがおすすめだそう。

つらい月経トラブルにも効果を発揮するCBD

「ECS(エンドカンナビノイドシステム)」は、卵子を形成する元となる卵母細胞の産生から分娩まで、女性の重要な生殖イベントにも深く関係しています。このシステムの乱れは子宮外妊娠や子宮内膜症などにも関連するため、女性特有の不調にもCBDは効果を発揮する場合があると岩本先生は言います。例えば、月経困難症の女性が症状の重いときに1日に数回、CBDバームを下腹部に塗布することを継続した結果、徐々に鎮痛剤を服用せずに過ごせるようになり、使用開始から半年後にはCBDバームを使わずに生理をやり過ごせるようになったケースもあるとのこと。

CBDを外用する場合、アレルギーや耐性も考慮する必要があるため、個人で使用する際は低濃度からの使用がおすすめ。実際に、低濃度のほうが効く症例も少なくないそうです。また、クリニックでの臨床結果はすべて、CBDだけの効果ではなく、適切なカウンセリングとライフスタイルの改善があってこその結果だと先生は考察しています。ライフスタイルを整えながらCBDを適切に使用することで、より効果的に作用するといえそうです。

睡眠の質や女性特有の不調に悩んでいるときは、日々の生活を見直しながら、プラスアルファでCBDの効果に期待してみるのも手段のひとつかもしれません。

構成・文/長岡絢子 イラスト/forest sternal   Photo by BrianAJackson / iStock / Getty Images Plus