口臭が強いのは男性より女性だったというデータがあります。なぜ女性の口臭がひどくなることがあり、どうしたら防げるのか? 意外な落とし穴とともに、その原因と対策を歯科医師の石井さとこ先生に伺いました。

石井さとこ

「ホワイトホワイト」院長

石井さとこ先生

歯科医師。口もと美容スペシャリスト。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。歯と体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口もとメイクについてのアドバイスに定評がある。俳優・モデル・アナウンサーからの信頼も厚い。著書に『マスクしたまま30秒‼ マスク老け撃退顔トレ』(集英社)、『美しい口もと』(ワニブックス)、『口元から美人になる 52の法則』(講談社)ほか。コスメキッチン限定発売のオーラルケア商品「NATURAL DROPS」監修。

女性の口臭が気になる場合の原因は

女性 口臭 原因

増田美加(以下、増田):口臭は、お酒やタバコを好む男性のほうが、より気になるというイメージがありますが、「口臭白書」*1で実は、若い女性の口臭が中高年の男性よりも深刻というデータがあるそうです。それはなぜでしょうか? 口臭の原因を教えてください。
*1「口臭白書」ブレス・ハザードプロジェクト2019年調査

石井さとこ先生(以下、石井先生):それには女性特有の原因があります。女性ホルモンの変動が大きい思春期、妊娠・出産期、更年期に口臭悪化のリスクが高くなるからです。女性ホルモンの揺らぎによって、唾液の分泌量が少なくなる時期があり、口の中が乾燥します。するとにおいやすくなるのです。PMSの時期も同じです。

もうひとつ気にしたいのは、“ダイエット口臭”です。過度なダイエットをすることで体内のタンパク質や炭水化物が奪われ、基礎代謝が低下し、栄養不足になることがあります。すると、体は中性脂肪を燃やし始め、その過程で、脂肪酸に変化してにおい始めるのです。

また、ダイエットによるエネルギー不足で疲れやすくなると、乳酸がたまるのですが、乳酸から出る老廃物はアンモニア臭がするのでこれもにおいます。疲れると口臭を感じるという人は、多いのではないかと思います。ファスティングやプチ断食が流行っていますが、栄養はしっかりとることが大事。栄養不足は口臭の原因にもなります。

栄養はサプリメントに頼り過ぎず、食事でとりましょう。口を動かし歯を使って“噛む”ことのメリットはたくさんあります。唾液の分泌はもちろんのこと、脳にとっても良い刺激になります。

それから、ストレスがかかって交感神経が優位になると、唾液の分泌も抑えられ喉も口も乾きます。すると、ネバネバ唾液が増えて口臭の原因になることも。リラックスして副交感神経が優位のときは、サラサラ唾液です。サラサラ唾液は口の中を自浄して、ウイルスや菌の侵入を防ぎます。

もちろん、歯周病や虫歯を放置していることによる口臭もありますから、歯科医院には定期的に通ってください。鼻や喉の病気でにおう場合もあるので、気になる人は耳鼻咽喉科を受診してください。

一方で、気にしなくていい口臭は、朝の口臭です。就寝中に唾液が半減して菌が活発化することが原因。この場合は、歯磨きをして朝食を食べて、体が活動し始めると消えていきます。

口臭予防のための水とガムの使い方

女性 口臭 予防 

増田:女性の口臭対策のメインは、無理なダイエットをしないことと、唾液の分泌を促すことですね。サラサラ唾液をたくさん出すには、どうしたらいいのでしょうか?

石井先生:口の中が渇いたなと感じたら、水を飲んだり、ガムを噛んだりすることはすぐにできる対策になります。よく噛むことは大切です。口や舌を良く動かすことで唾液が出るので、噛み応えのあるものを食べましょう。リンゴを皮ごと食べるのはおすすめです。リンゴポリフェノールは、口臭予防作用もあります。

唾液が減りやすいPMSの時期や更年期は、水分をとることとよく噛むことで、唾液を出す習慣を意識しましょう。水分は、水をとるのがいちばんいいです。口内はアルカリ性に保ちたいので、虫歯、歯周病になりやすい酸性の状態を中和してくれる水が最適です。

午後3~5時ころが疲れて唾液が減る時間帯。“口臭警報”を早めに察知して、水を飲んだり、ガムを噛んだりして予防してください。

増田:歯磨きのコツはありますか? 

石井先生:食べたらすぐに磨くことが大事ですが、3食すべて丁寧な歯磨きができないこともあると思います。大切なポイントは、夜寝る前の歯磨きをしっかりすること。

寝ている間は、昼間より50%唾液が減るので、夜のケアは大事です。歯磨きは、歯ブラシだけでなく、フロスと歯間ブラシは必須。この3つを使えば、歯垢の9割近くを落とせます。歯ブラシだけだと6割くらいしか落とせません。

口臭 歯磨き 歯のケア アイテム

サラサラ唾液のためのお口エクササイズ

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10秒かけてゆっくり回すのがポイント

増田:サラサラ唾液をたくさん出すためのお口のエクササイズを教えてください。

石井先生:口内でゆっくり舌を回すだけの「10秒舌回し」を紹介しますね。上のイラストのように、口を閉じた状態で、歯の表面をなめるように口角の裏側を出発点に、上の歯を舌でなぞるように前歯、反対側の口角、さらに下の歯とぐるりと一周回します。

右回りをしたら、左回りも。1周、10秒くらいかけてゆっくり回すのがポイントです。唾液がたっぷり出て口臭予防につながります。ほうれい線や二重あごなどのたるみ改善効果も期待できますよ!

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

イラスト/大内郁美 企画・構成・取材・文/増田美加