歯を白くしたい、ふっくらとしたみずみずしいくちびるでいたい、というのは誰もが願うこと。歯の黄ばみやくすみを取る方法と、美しいくちびるケアの仕方を、モデルや俳優からの信頼も厚い歯科医師の石井さとこ先生に伺いました。

「ホワイトホワイト」院長
歯科医師。口もと美容スペシャリスト。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。歯と体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口もとメイクについてのアドバイスに定評がある。俳優・モデル・アナウンサーからの信頼も厚い。著書に『マスクしたまま30秒‼ マスク老け撃退顔トレ』(集英社)、『美しい口もと』(ワニブックス)、『口元から美人になる 52の法則』(講談社)ほか。コスメキッチン限定発売のオーラルケア商品「NATURAL DROPS」監修。
歯の黄ばみ、くすみを減らす食べ物とは?

増田美加(以下、増田):歯の黄ばみ、くすみに悩んで相談に来院する女性は多いですか?
石井さとこ先生(以下、石井先生):歯科関連の調査では、20代~50代の働く女性の80%に口内環境に何らかの悩があるという結果が出ていて、その1位が歯の黄ばみ、くすみ、汚れでした。2位が歯垢、歯石、3位が口臭です。私のクリニックにいらっしゃる患者さんのお悩みの傾向も、同じです。
増田:歯の黄ばみ、くすみの原因は何なのでしょうか?
石井先生:加齢によって歯の色はどうしても濃くなり、黄ばみやすくなります。加齢とともに、象牙質(エナメル質のすぐ下にある歯の組織のひとつ)の色が濃くなっていくこともありますが、歯が黄ばむ原因の多くは、歯の表面のエナメル質にあります。
ステイン(着色汚れ)が歯の表面のエナメル質に沈着するのです。毎日とっている食べ物や飲み物、嗜好品の色素がエナメル質表面の膜と結びつき、ステインになって歯に付着、蓄積します。
ステインの元になりやすい食べ物、嗜好品は、タバコ、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、赤ワイン、チョコレート、カレー粉などです。
口呼吸や歯磨き不足による口内の渇きも原因になります。唾液は、口臭予防になるだけでなく、歯の黄ばみ予防にも大切な役割を果たしているのです。
食べ物、飲み物の選び方で、黄ばみやくすみの原因を減らすことができます。歯に色がつきやすいのは、コーヒーより紅茶。カップを見ても紅茶の茶渋のほうが残りやすいですよね。
最も色がつきやすい飲み物は、赤ワイン。赤ワインを飲むときは、水を隣に置いてこまめに水を飲むようにしましょう。外食時に赤ワインをいただくときは、トイレに立つタイミングなどで、綿棒で歯をぬぐうことで沈着するのをさらに防ぐことができます。
食事をして口をゆすぐときには、色のついたお茶ではなく、水がいちばんです。片方のほっぺがいっぱいになるくらい水を含んで回してゆすぎます。色の濃い食べ物で、歯に色がついたと思ったら、すぐに水を飲んだり、歯磨きシートで拭いたりすると良いでしょう。
口内が乾燥していると、口紅も歯につきやすいので注意しましょう。歯磨きシートや綿棒を化粧ポーチに入れておき、気がついたらすぐ拭くようにするといいと思います。
ホワイトニングは歯のためにいいの?

増田:ホワイトニング用の歯磨き粉は、どの程度効果がありますか?
石井先生:もちろんセルフケアで、ホワイトニング用の歯磨き粉を使ったり、マウスピースなどを歯につけたりするのもいいと思います。普段から歯の黄ばみやくすみに気をつけて、正しい歯磨きをすることは、歯の表面の汚れを取り除くことにもつながります。
増田:クリニックで行うホワイトニングは、痛みはないのでしょうか? 歯が弱くなったりしないですか?
石井先生:昔は、「歯の表面を削るのでは?」とか、「ホワイトニングの薬剤は歯によくないのでは?」と言われていた時代がありました。そんなことはなく、クリニックで行うオフィスホワイトニングは、虫歯の予防になることもわかっています。
現在、クリニックで行う過酸化水素を使用したホワイトニングは、酸に対する抵抗力がついて、カルシウムの取り込み量が多くなることがわかっています。フッ素をしなくてもカルシウムの再石灰化を促す働きもあります。
ホワイトニングをした24時間以内は、歯のカルシウムが一度少なくなるものの、1週間後には歯のカルシウム密度が高まります。ホワイトニングを続けている人は、虫歯にもなりにくく、歯がしっかりしている人が多いです。
乾燥くちびるへの対処法

増田:花粉症や感染症を気にしてマスクをしていることが多くなり、そのせいか、口の中だけでなく、くちびるも乾燥しやすくなっている気がします。気をつけることはありますか?
石井先生:くちびるは、粘膜に近い皮膚です。粘膜に近いので外的刺激を受けやすい場所で、お肌よりバリア機能が弱い部位だと認識しましょう。ですから、保湿ケアが大事です。特に紫外線の強い季節は、UVケア入りのリップクリームを選ぶといいでしょう。
そして、大事なことは「NMKの法則」。リップクリームを塗ったら「なめない、むかない、こすらない」ことが合言葉です。なめると、くちびるは皮脂がないから、よけいに乾燥します。
乾燥が進んでいると思ったら、ワセリンをくちびるに塗るのもおすすめ。ガサガサのときには、固形のリップクリームは使わず、指や綿棒を使って優しく塗ります。
くちびるは縦ジワなので、横方向にスライドさせて塗らないようにします。口角部分は、切れやすいので丁寧に優しく。必要以上に触らないようにすれば、保湿成分が浸透して、口角炎も1日で回復することもよくあります。
口もとの美しさを保つ体操とは?
増田:美しいくちびるにするための、スペシャルケアを教えてください。
石井先生:口もとの若々しさを保つには、口輪筋の筋肉を鍛えましょう。私は「ぴよぴよぷー体操」をおすすめしています。
口輪筋は、くちびるを閉じたり、すぼめたりするときに使う筋肉ですが、意識して使わないと20代でも衰えてきます。
口輪筋が弱くなると、ほかの顔の筋肉ともつながっているので、口が動きにくくなり表情が乏しくなります。 口輪筋を鍛えることで、血流がアップし、潤ったくちびるを目指すことができます。
飲み込む力や唾液分泌の促進にも関係し、顔のもたつき改善やほうれい線対策にもなります。
ぴよぴよぷー体操

1・頬を吸って、くちびるを小鳥のくちばしのようにすぼめ、上下にピヨピヨ開け閉めする
2・深呼吸して、両頬を「ぷー」っと勢いよく膨らませる
石井先生:まず、頬を吸ってフェイスラインが見えるくらい絞り込み、くちびるを小鳥のくちばしのようにします。そして、くちびるを上下にピヨピヨと開け閉め。最初は難しくてできない人も、繰り返すうちにできるようになります。
最初は小鳥のくちばしを作って10秒キープすることから始めてもOKです。「ぷー」は、深呼吸して両頬をプーと勢いよく膨らませます。下顔面の引き締めと同時に、くちびるの血流もよくなります。
イラスト/大内郁美 企画・構成・取材・文/増田美加