吸水ショーツなどを販売するフェムテックブランド『Be-A Japan』が、保健体育の教師を目指す帝京科学大学の学生に向けた「学校教育における生理とスポーツを考える」授業を行いました。

これまでも、初潮を迎える前の小学生を対象にした授業や男子校での授業など、より広い対象者に積極的に生理について伝える取り組みを行なってきた『Bé-A』。今回の特別授業の目的は「将来、自身が教師の立場になったとき、生徒の生理とどのように向き合うのか」ということを学生たちに考えてもらうこと。グループディスカッションも行われた授業の様子をレポートします!

「生理だから授業を休みたい」と言われたら? 体育教師を志す学生に『Bé-A〈ベア〉』が生理の特別授業_1

『Bé-A Japan』代表取締役CEOの髙橋くみさん(右)と、同CPOの中村千春さん(左)

教師を目指す大学生に向けた「生理」特別授業

今回の授業は、帝京科学大学 教育人間科学部 学校教育学科に在籍する、大学2年生の男女約40人を対象としたもの。『Bé-A Japan』代表取締役CEOの髙橋くみさんと、同CPOの中村千春さんが登壇し、基本的な生理の仕組みからその症状の個人差まで、自身の体験談も交えながら伝えていきます。

ベアジャパンの髙橋さん

授業を通して繰り返されたのは、生理周期や経血量、生理痛の症状など、生理とは一人ひとりまったく違うということと、その違いを把握することの重要性。何十年も生理とつき合っていても、自身の経血量を正しく把握している人は多くありません。ところが、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気の可能性がある「過多月経」は、生理がある人の4人に1人は当てはまると言われているのだそう。今回の授業では、下記のうちひとつでも当てはまる人は「過多月経」に当たるという、3つのチェックポイントも教えてもらいました。

✔︎ 「普通の日用」のナプキンが1時間もたない
✔︎ 一回の周期に「多い日用」のナプキンを3日以上使う
✔︎ レバー状の経血の塊が出ることがある

また、学生など若いうちからスポーツに取り組んでいる人に多いのが、生理が止まっているのに放置してしまうこと。生理が止まるということは、“生理が止まるほどのなにか悪い影響”が体に起きているサイン。将来的に不妊の可能性が高くなるとも言われています。「生理がこないほうが楽でいいや」とそのままにしている生徒に対して、周囲の大人が危険性を理解して注意を促すことが必要。その役割を、親だけではなく担任の先生や部活の顧問の先生も担ってくれたら…生徒にとってかなり心強い存在になるはずです。

生理用ナプキンに初めて触れる男子学生も

生理用ナプキンに触れる男子学生たち

生理用ナプキンに擬似経血を吸収させている

実際に、生理用紙ナプキンやタンポン、吸水ショーツに触れてみる場面もありました。男子学生は人生で初めて触れる人がほとんど、女子学生でもタンポンや吸水ショーツは触ったことがない、という声が聞かれました。

紙ナプキンを広げ、肌に触れる面の素材を確かめたり、ショーツとの接着力の強弱を比べたり。疑似経血を吸収させてみると、
「想像以上に一瞬で吸い込んだ! しかも吸収したあともさらさら」
「でも、経血が多かったり長時間そのままだと多少不快感もありそう」
と、男子学生からは新鮮な反応が多く飛び交っていました。

タンポンに擬似経血を吸収させている

また、初めてタンポンや吸水ショーツを触ったという女子学生は
「タンポンのプラスチック部分は外すんだよね? (疑似経血に浸けてみると)どんどん膨らんでいく! こんなに大きくなるんだ」
「いたって普通の布に見えるのに、そんなに吸水力があるなんて驚き」
「吸水ショーツとナプキンの併用が心強そう」

などと、当事者だからこその実践的な声が聞かれました。

「生理なので授業を休みたい」と頻繁に言う生徒、どう対応する?

グループディスカッションの発表の様子

最後は8グループに分かれてのグループディスカッション。
・体育の授業中に突然生理になってしまった生徒への対応(本人が気づいているパターン、気づいていないパターン)
・「生理なので授業を休みたい」と頻繁に申し出る生徒への対応
・生理でプールを休んでいる女子生徒に対し、男子生徒が「生理だろ〜」と冷やかす場合の対応
という3つのテーマについて話し合い、まとめた意見を代表者が前へ出て発表しました。

「生徒たちにあらかじめ“トイレに行きたい人は声をかけて”と伝えるなど、言い出しやすい雰囲気づくりをする」
「友人や家族など、生理について相談できる相手がいるか確認する。場合によっては病院へ行くよう促す」
「生理は冷やかすことではない、ということをきちんと教える」

など、保健体育の教師を目指す彼らの“理解したい”という気持ちが伝わってくる、真摯な意見ばかり。授業を通して具体的に、新しい保健体育の授業のあり方や体育教師の存在が模索されていく様子に、取材しているこちらも将来に期待がふくらんだ貴重な機会となりました。

学生たちに「自分だったらどう伝えるか」考えてほしい

今回の授業の発端は、『Bé-A』の取り組みをテレビ番組で観た帝京科学大学 教育人間科学部 学校教育学科の岩沼聡一朗准教授が、『Bé-A』に直接問い合わせをしたことから実現したものでした。

「保健体育の教員を目指す学生たちに『自分だったら生理についてどんなふうに伝えるか』について考えてほしい。それが今回の特別授業を行った動機でした。日本は、女性アスリートへの支援や女性指導者の育成などは進んできていますが、より対象者人口の多い“体育の授業”というところまでカバーすべき時代になっていると感じています。そんなとき、『Bé-A』さんの取り組みに非常に心打たれ、オファーいたしました。学校の先生が生理について理解しておくことはもちろん必要ですが、先生が全部やらなければいけないわけではない。それぞれが頼れる“周囲の人”が増えることが大事なんだ、と今日の学生たちの発表から私も学びました」(岩沼准教授)

つい2〜3年前までは「テレビ番組で生理のことを取り扱うのはちょっと……
」と、『Bé-A』の活動をメディアで紹介してもらえないこともあったそう。現在ではネットニュースのトップに上がるなど、確実に生理に対する見方が変わっています。この日、授業を受けた学生が教師になる頃、生理にまつわる教育がどのように進歩しているのか、今から楽しみですね。

取材・文/堀越美香子