話題の性教育ドラマ『17.3 about a sex』を手掛けた
作家・演出家・俳優の山田由梨さんと「体・心・性」を考える
全3回のエッセイ連載。 第1回は「体」について。
近すぎて、ときに見えづらい自分の体、
日々の小さな格闘で見えてきたことを、
山田さんが綴ります。

一輪の花と木漏れ日の写真

アキレス腱の部分って、仰向けになると少し隙間ができる。
っていうとなんのことかわからないかもしれないのだけど……

つまり、仰向けになったとき、かかととふくらはぎの部分は床につくけど、
アキレス腱の部分はカーブしてて床につかないから、すこし隙間ができる。(伝わるかな)
わたしは、たまにその隙間が急に気になってしまい眠れなくなる。

なんでかわからないけど、日中はまったく気にならないのに、
(それこそ昼寝のときとかも)
夜寝るときだけ、そこに隙間があることが変な気がしてくる。
(右足は気にならなくて、決まって左足だけ)

だからわたしはそういうとき、ベッドからすこしだけ左足を出して、ベッドのみぞにアキレス腱がぴったりはまるように調整して寝る。
隙間を埋めてから寝る。
朝起きるとそのことはもう忘れてる。
夜になると、またその隙間が気になってくる。
また隙間を埋めて寝る。

自分の体との付き合い方は試行錯誤と対話だなと思っている今日この頃。
それも、そんなにスムーズじゃない対話。
体が何か主張してくるのに対して、こうしてみるとどうですか?と聞いてみて対応している。うまくいくときも、うまくいかないときもある。

書くものが次々にあるような仕事が忙しい時期、
「休む暇なんてない!」という思考にとらわれて、起きた瞬間から仕事を始めたり、夜寝るギリギリまで仕事をしたりしてしまうことがある。
ついついそうしてきたし、今もたまにしてしまう。
他のことをする暇があったら仕事をしなきゃならん!と思いこんでしまって余裕がなくなるのだ。
お腹がすいてくると、「食べるのめんどくさいからお腹すいてんじゃねえ!」とか思ってしまうし、体のことを完全に無視しているバイオレンス状態。

でも、それを続けていると、当然効率が悪くなる。
ぼーっとしてきたり、やる気もなくなって、体サイドにストライキを起こされてしまう。

だから、忙しいときほど「そんな暇ない!」と思わずに、ほどよく体を動かすことをしてみている。
あえて床を雑巾で磨いてみるとか、シンクを磨くとか、散歩をするとか。
あと、汗をかくためサウナにも行く。
一番余裕がないときに、こういう余裕っぽい行動をするのは、わたしとしてはかなり勇気がいるのだけど、最近は先回りしてこういうことができるようになってきた。

体を動かしてみると、体は少し機嫌がいい。そのおかげで頭も回る。

改めて書いてみると全然たいしたことじゃないのかもしれない。
世の中の人々はもっと立派に、うまくやっているのかもしれないな、とも思う。

でもわたしはこうするのがいい、とわかるまでに、結構時間がかかった。
書き物や創作に追われると、ついつい体のことを忘れてしまう。ないがしろにしてしまう。
もうすぐ30年一緒にいる自分の体だけど、最近付き合い方をぎこちなく試行錯誤しているような気がする。

あぁでも、そっか。若いときは、体のこと無視しても、いくら無理しても、ストライキを起こされなかったからやれていたのか。
あの頃は、いつまでも集中力がつづいたり、疲れ知らずだった。

ちゃんと体のいうことも聞かないといけない歳になってきている。
これからも変化していく、誰のとも違う自分だけの体。(変な主張もしてくる体)

今後もずっと一緒にいるし、なるべく仲良くやっていかなくちゃなと思うのです。

山田由梨 Yuri Yamada

山田由梨 Yuri Yamada

1992年生まれ。劇団「贅沢貧乏」主宰。作家、演出家、俳優。『フィクション・シティー』(2017)と『ミクスチュア』(2019)で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。AbemaTVのオリジナルドラマ『17.3 about a sex』では脚本を担当。俳優として、舞台・映画・CMに出演する傍ら、小説執筆・エッセイの寄稿など多方面に活動の幅を広げている。

撮影/花村克彦 嶌村吉祥丸(サイトトップ) 編集/小島睦美(小説すばる)

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