毎日の食事は、ストレスを緩和する大事な「娯楽」

なかなか新型コロナウイルス感染症への不安が収まらず、ストレスがたまっている人も少なくないはず。さらにこのところ寒い日も多く、気分も落ち込みがちですよね。

先日、日本スープ協会主催でスープセミナーが開催。そのセミナーに出席された杏林大学名誉教授で精神科医でもある古賀良彦先生によると、「感染症への不安や環境の変化はストレスにつながりやすく、自分自身や家族の心のケアも大切です。日々のストレスを解消するには、3つのRが必要です」とのこと。古賀先生いわく、それは、「休息(Rest)、休養(Relaxation)、娯楽(Recreation)」。

ちょっと意外ですが、このうちの「娯楽」には毎日の食事も含まれているんだそう。食事を作る過程だったり、料理を五感で楽しんだり、家族やパートナー、友達とおしゃべりをしながら楽しく食事をしたりすることで、ストレスを忘れる時間にできるというのです。

体温の低い朝は、スープを飲んで体温をアップ!

ストレス対策として大事にしたい食事の中でも、とくに重視してほしいのが朝食。

「日本人の体温は、子どもも含め、60年前と比べて平均で約1℃も下がったことがわかっています※1。体温が低くなったおもな理由としては、電車や車を使っての移動など、生活が豊かになったことで筋肉を使う機会が少なくなり、熱を産生する筋肉の量が減ったためではないかという考えもあります。
※1出典:田中英登(2004 )「体育の科学 780 」

低下した体温を上げるのに、安全かつ確実な方法が“食事”。1日の中で体温が最も低いのが朝ですので、朝食で温かいものを食べて体温を積極的に上げることが望まれます」(古賀先生)

「朝にスープを飲むだけで、心と体のストレスがやわらぐ」ってホント?_1

ところが、現在は朝食を食べない人が若い世代に多いということが調査でわかっています。厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2015年)」によると、朝食を食べない比率は、男性が14.3%、女性が10.5%。また、男女ともに20代、30代で欠食率が高く、最も高い20代では男性で37.0%、女性で23.5%となっています。

「朝食は、下がっている体温を上昇させて元気を出すために大切なもの。食べていない人がこれほど多いとは、とても残念な結果です。そこで私が提案したいのは、忙しい朝でも手軽にとれる朝スープです」(古賀先生)

「朝にスープを飲むだけで、心と体のストレスがやわらぐ」ってホント?_2

10代後半~20代の健康な女性を対象にした実験で、65℃の温かいスープを飲んだあとは、足先の温度が最大で2℃以上も上昇するという結果が出ています。

足先だけでなく、体の深部体温も温かいスープを飲むことで上がるというデータもあります。飲んで10分もしないうちに体全体を温められるスープは朝食にとてもよいメニューだと思います」(古賀先生)

“冷え”で悩んでいる人にとっては有効な情報かもしれませんね!

「朝スープ」を飲むと、心や脳にもいい影響が

「朝にスープを飲むだけで、心と体のストレスがやわらぐ」ってホント?_3

「朝食に関して、さらに面白いデータがあります。国立教育政策研究所が全国の小学6年生を対象にして行なった調査によると、朝食をきちんと食べている子どもほど成績がいいことがわかったのです。国語と算数のテスト結果を比較したところ、毎日朝食を食べている子どもと欠食の子どもとでは、平均で約18点も点数に差が出ています」(古賀先生)

また、別の調査結果※2では、中高生男子を対象に朝の通学意欲を調査したところ、朝起きたときの体温が標準(36℃台)の生徒で「通学意欲なし」と答えたのが15.9%だったのに対し、低体温傾向(36℃未満)の生徒では「通学意欲なし」がその倍近くの約30%に上ることが判明したのだそう。

※2出典:Noi,S ., Ozawa,H . and Masaki,T .(2003)Characteristics of low body temperature in secondary school boys,International journal of Sport and Health Science, 1(1):182 187.

朝の低体温が通学意欲の低下にまで影響を及ぼしているとすると、大人の私たちも、朝食を食べずにいると仕事などの効率が悪くなることがありそうです。

「朝にスープを飲むだけで、心と体のストレスがやわらぐ」ってホント?_4

さらに、古賀先生が実際に脳波を調べた実験でも、効果を示す結果が。これは30〜40代の健康な女性6名を対象に、「水」と「温かいスープ」の摂取による脳波への影響について、詳しく測定し画像で示したもの。

「おもにα波の量を調べたところ、温かいスープの摂取直後から、後頭部を中心にα波が広範囲に出現しました。これは、脳が円滑に働いている状態を示します。α波は心理的なリラクゼーションの程度を反映するとされていますので、スープをとることで緊張感やイライラが緩和され、頭がスッキリした状態になったことがわかりました。

以上の調査や実験結果から、朝から温かいスープを摂取すれば、体の働きを活性化するとともに、脳の機能も整えて、午前中から仕事や学業、家事などを前向きに行えるようになる、といえると思います」(古賀先生)

古賀先生には、スープに入れると心身によい作用があるという食材も教えていただきました。スープを作る際に、ぜひ参考にしてみてください!

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ストレスが緩和される簡単スープはこちら♪

スープセミナーでは、古賀先生のお話のあと、スープ作家の有賀薫さんによる、ストレス対策に効果的な簡単アレンジスープの調理デモンストレーションも行われました。市販されているカップスープやスープの素に、ストレスを緩和させる食材をプラスするだけ! 3つの簡単スープレシピをご紹介します。
※ストレスに有効な食材は赤字で表示しています。

●ごまとナッツ入りのかぼちゃポタージュ

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味の素「クノール® スープDELI® 完熟栗かぼちゃの濃厚ポタージュ パン入り」使用。体の細胞が傷むのを防ぐ抗酸化作用があり、ストレスにも効果的とされる黒ゴマナッツをかぼちゃのスープに加えることで、香ばしい香りが広がり、おいしさがアップ!

【材料(1人分)】 
・「クノール® スープDELI ®  完熟栗かぼちゃの濃厚ポタージュ パン入り」
黒ゴマ小さじ2
・好みのナッツ少々

【作り方】
1 スープをパックの表示どおりに作る(熱湯を入れてすぐに15秒かき混ぜたあと、1分待つ)。
2 黒ごまをすりつぶし(もしくは刻み)、ナッツを砕く。
3 2をスープにトッピングする。

●鮭とブロッコリーのビスク風スープ

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ハウス食品「StewP(シチュープ) ビスク風おかずスープの素」を使用。エビのうま味が凝縮したビスク風スープに、抗ストレス作用のあると、 抗酸化作用のあるビタミンCが豊富なブロッコリーをプラスするだけで洋風スープに!

【材料(2人分)】
・「StewP(シチュープ)ビスク風おかずスープの素」… 1袋
生鮭…2切(200g)
ブロッコリー…1/2個(150g)
・牛乳…100ml

【作り方】
1 生鮭とブロッコリーを食べやすい大きさに切る。
2 湯を350ml沸かす。鍋にブロッコリーと鮭を入れ6〜7分ゆでる。
3 StewPと牛乳を加え、5分ほどさらに煮込む。 好みで粉チーズなどをふって完成。

●にんじんと鶏肉、みかんのスープ

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ネスレ日本「マギー コンソメ 無添加」を使用。抗酸化作用のあるにんじんの甘みとみかんの甘酸っぱさが特徴の、冬にぴったりなレシピ!

【材料(2人分)】
・「マギー コンソメ 無添加」…スティック1本
にんじん小1本(150g)
・鶏むね肉…50g ※好みで増やしてもOK
みかん…小1個
・オリーブオイル…小さじ2
・塩、こしょう…少々

【作り方】
1 にんじんはピーラーで皮をむき、そのままピーラーで薄切りに。 みかんは皮をむいて房に分ける。鶏肉は薄くそぎ切りにする。
2 オリーブオイルでにんじんを炒める。 焦げつきやすいので水を少し加えてOK。
3 水500mlにマギーコンソメ無添加とにんじんを加え、柔らかくなるまで煮る。
4 鶏肉を1枚ずつ加えてサッと煮る(煮すぎないように注意)。 塩とこしょうで味を調え、みかんを加えて火を止める。


明日からすぐにでも朝スープを実践したいですね! まだまだ寒い日が続きます。朝スープの習慣をつけてしっかり体温を上げ、活動的な毎日を。

取材・文/宮平なつき スープ調理・レシピ考案/有賀薫