子どもに「男の子だから、女の子だから」という価値観を押しつけたり、夫が妻に「女性が家事、育児をして当たり前」というバイアスを持っていると、子どもに受け継がれてしまう可能性も! さらには、夫婦のジェンダーバイアスやその押しつけは、子どもの自己肯定感を下げるとも。子どもを取り巻くジェンダー問題にも詳しい助産師のシオリーヌさんに、お話をうかがいました。

性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさんが解説

ジェンダーバイアスの押しつけは子どもの"選択肢"を狭めてしまう

シオリーヌさん

性教育YouTuber・助産師

シオリーヌさん

産婦人科病棟、精神科児童思春期病棟に勤務し若者の心理ケアに詳しい。’17年より性教育の情報発信を開始。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)。

『こどもジェンダー』

ジェンダーについての基礎知識をわかりやすく解説。読みやすい文体とイラストで、子どもと一緒に学べる一冊。『こどもジェンダー』¥1540/ワニブックス

性別で子どもの言動を制限すると、自己肯定感の低下も

性別で子どもの言動を制限すると、自己肯定感の低下も

性教育についての情報発信を続ける中で、自然とジェンダーの問題について意識し始めたというシオリーヌさん。

「性教育に取り組んでいると、予期しない妊娠を防ぐアフターピルが手に入りにくいことや、女性が大きな傷を負う中絶のことなど、さまざまな問題に直面します。
いつも思うのが、女性の権利って本当に尊重されていないなということ。私のYouTube動画のコメント欄には、パートナーと性教育への考え方が合わないといった相談がくることもあります。性教育とジェンダーは切り離せないなと痛感しています」(性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさん)

シオリーヌさんは、助産師として産婦人科だけでなく、看護師として精神科児童思春期病棟に勤めていたことも。数多くの親子関係を目の当たりにしてきた経験から、親のジェンダーバイアスが子どもに与える影響は大きいと話します。

親の声かけや行動で、子どもの“選択肢”が狭まってしまう

「親の声かけや行動で、子どもの“選択肢”が狭まってしまいます。『男の子だから勉強して、いい大学、いい会社に入らないと』と親に言われれば、子どもは自分の意思に関係なく、その道が正しいかのように思ってしまう。本当はゲームがしたいのに、やりたいことに打ち込めない可能性も。

ゲームを続けていたらほかの道もあったかもしれないけれど、好きなこと、本当に向いていることに出会う機会を奪われることになるんです。女の子も同じで、勉強が好きで進学したいのに『女の子なんだから嫁に行けばいい。学費をかけられない』と言われたら、将来選ぶ道がぐっと狭まる。親のジェンダーバイアスの押しつけによって、子ども自身が『ありのままの自分でいい』と思えなくなり、自己肯定感も下げてしまうと思います。



将来の話だけでなく、洋服の色や好きなキャラクターなど、子どもが選んだものにはできるだけ口出ししない。性別に由来して子どもの言動を制限するような声かけを続けると、周りの目を気にして、社会のスタンダードに自分を合わせようとしてしまいます」(性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさん)

庭内ジェンダーバイアスが子どもの“呪い”になる

また、夫婦間でジェンダーバイアスがあると、こんな問題も。

「家庭内でいわゆるジェンダーロールに当てはめた夫婦関係しか築けていないと、子どもにとっての“呪い”になり、将来苦しめる可能性も。これは私自身の経験なのですが、現在の結婚は2度目で、最初の結婚のときは『妻は料理を作らなくては、夫の身の回りの世話をしなくては』と無理をしていたんですね。これは、家庭の家事の大半を担っていた私の母親の影響が大きい。私もとらわれていたんだと気づきました」(性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさん)

家庭内ジェンダーバイアスが子どもの“呪い”に

「ただ、共働きで家事・育児をシェアできていればOKで、専業主婦家庭はいけないかというとそうではなく、夫婦でお互いが家庭内のジェンダー観、今担っている役割に納得していることが大切だと思います。

男性だから、女性だからではなく、個人の向き不向きを考慮した役割分担ができているといいのでは。そうでないと夫婦関係がぎくしゃくしたり、いつも母親が父親のグチをこぼしていたり。親の不満そうな様子は、やはり子どもに悪影響だと思います」(性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさん)

夫婦でお互いが、今担っている役割に納得していないと…

最近では、“夫婦のパートナーシップ”について両親学級で講演する依頼もあったそう。

「夫婦間のジェンダーバイアス解消のためには、どちらかが我慢したり飲み込んだりせず、尊重しながら意見を交換するアサーティブなコミュニケーションが○。『あなたはいつも……』と相手を責めるのでなく、『私はこう思う』とIメッセージで素直に気持ちを開示して、やってほしい家事・育児について話し合うのがおすすめです。また、子どもがジェンダーバイアスにとらわれた発言をした際には『男の子だって泣いてもいいんだよ』などと、否定はせず情報修正を。

さらに自分に対してではなく、友達など誰かほかの人のことを『あいつは男のくせにピンクが好きなんて』などと制限しだしたら注意を。友達本人が望むなら尊重しよう、他人が口を出すことではない、としっかり伝えましょう」(性教育YouTuber・助産師 シオリーヌさん)

夫婦間のジェンダーギャップと子育て【まとめ】

1. ジェンダーで、子どもの"好き"を奪わない
2. 夫婦間で役割分担に納得していることが大事
3. 子どもが性別で他人を制限する発言をしたら要注意

■LEEwebで関連記事を読む
社会学者 藤田結子さんが解説!なぜこうなる?日本の夫婦ジェンダーギャップの今

イラストレーション/朝倉千夏 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
※LEE 2021年9月号掲載/LEEweb  2021.09.25掲載

Trending Hashtag