yoiクリエイターのくどうあやさんによる、イベントレポート記事を公開! 今回訪れたのは、日本で暮らす難民と移民の方々の状況を知り、応援するためのチャリティイベント「難民・移民フェス」。
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楽しんで、知る!「難民・移民フェス」をレポート
©️難民・移民フェス実行委員会
7月20日に、練馬区にある平成つつじ公園で開催されていた「難民・移民フェス」に参加してきたので、イベント当日の様子をレポートします!
このイベントは、物販やワークショップを通して、難民・移民の人たちの背景を知り、チャリティ形式で支援することを目的に開催されています。都内では各地で外国の文化を知る人々による交流イベントが多く開催されていますが、移民・難民と明記して開催しているイベントは珍しいと思い参加してみました。
©️難民・移民フェス実行委員会
練馬駅を出るとすぐに聞こえてくる陽気な音楽に、背中に流れる汗の存在など忘れて心が躍りました。到着してまず驚いたのが、想像以上に多くの人々が集まっていること。平成つつじ公園は駅前にある小さな公園なのですが、この規模のイベントならもっと大きな会場でやってもいいのではないかと思うほどの大盛況。ちょうど開始時間に到着したので、すでに大盛り上がりしている参加者の方々がいることに驚きました。
2024年のテーマは「まるいもの」。みんなまるーくつながろう
今年で5回目となる「難民・移民フェス」ですが、今年は「まるいもの」というテーマが用意されています。丸く配置された各ブースのテントでは、お菓子や手芸品などの「まるいもの」が集められています。イベントの最後にはステージを囲み、みんなで丸くなって踊るのです。
私は一緒に訪れた友人とイベントブース裏の芝生に敷物を敷き、購入した食べ物や商品をシェアしながら参加しました。
ここからは私が気になったブースをいくつか紹介していきます。
あじいる
最初に訪れたブースは「あじいる」です。ここで購入したのが、『あじいる』というZINEです。元ホームレスの方々の生活史を記録している冊子で、一人一人の人生が一冊の冊子に詰め込まれています。
ホームレスの生活が「難民・移民フェス」と関係あるの?と疑問に思った方もいるかもしれませんが、実は難民・移民の人々にとって貧困は切っても切り離せない問題です。
生活に困窮してホームレスになる人は、決して日本で生まれ育った人だけではありません。あじいるでは、一方的な支援をするのではなく、貧困に陥ってしまった人々自身が再び自立して生活していくための基盤となるネットワークを作っています。
私が訪れた際には、ちょうどVol.5に掲載されているおじいさん(あだ名は石やん)が販売ブースで接客をしていらっしゃり、本の中身を丁寧に説明してくださいました。話の流れで表紙にサインまでしてもらうことができました。掲載されたご本人が笑顔で接客している様子を見ると、思わず買ってしまいたくなります。ブースでは無料のフリーペーパーも配布していました。
アフリカ雑貨
敷地内にはアフリカやミャンマーなどアジア諸国の美しい雑貨が並んでいて、どこも大盛況でした。ここで私が購入したのが木で作られたリングです。テントに立って接客をしている方々がすごく元気で、着せ替え人形のように私の腕にアクセサリーをつけてどれがいいかと尋ねてきました。そこで迷いに迷って購入したのがこのリングです。木のアクセサリーだけではなく、美しい石を使ったブレスレットやネックレスもあり、十分なお金を持っていなかった自分を恨んでしまうほどに目移りしてしまいました。
今後、機会があって木のリングを購入するかもしれない方へのアドバイスですが、手汗をかくと非常にはずれにくくなるので少し大きめのサイズを選ぶのがベターです。
各国のグルメも!
©️難民・移民フェス実行委員会
私たちの食事風景をイベントの運営の方に撮影していただいていたので、食べてみたものを紹介します。
クルドのスイーツ、ロール・バクラヴァ。バクラヴァは何層にも重ねたパイ生地の間にピスタチオなどのナッツを挟んで焼き上げています。上から甘いバターシロップをかけているため激甘スイーツとしても知られています。中近東や中央アジアでも人気のある、伝統的なスイーツなので、エスニック好きで食べたことがある方もいるのではないでしょうか。
手のひらサイズのまるいピザのようなものはベーモン(Bein Mont)というミャンマーの屋台フードです。米粉の生地にエンドウ豆とネギをのせています。「ミャンマー風パンケーキ」と言われるだけあって、軽い生地で何枚でも食べることができる独特の食感があります。現地ではココナッツを入れた甘いバージョンもあるらしく、いつかミャンマーに行って試してみたいと思えるおいしさでした。
個人的にいちばん気に入ったのは、残念ながら撮影できなかったのですが、ミャンマーの餅団子(MONT LONE YAY PAW)です。
ミャンマーの伝統的なおやつで、もち米の団子の中にパームシュガーが詰められています。上にはすりおろしたココナッツが乗っています。もちもちとしたお団子と、ココナッツのシャキシャキした食感が絶妙に組み合わさっています。下手くそな例えですが、醤油ではない南国風味のみたらし団子といった感じで、毎日食べたくなるデザートです。控えめな甘さで日本人の口にかなり合うのではないかと思います。
ダンス・ダンス・ダンス!
イベントの後半は舞台を中心にみんなで集まってダンスを踊ります。公園の中心に設置された舞台には陽気な司会のお兄さんが立ち、観客の人々を盛り上げてくれます。お兄さんの掛け声に合わせて、舞台のまわりに集まった人々もお酒を片手に自由なダンスを踊りました。日本の夏祭りのように決まったダンスをするのではなく、皆が思い思いの踊りをしているところが多文化が集まるフェスの魅力です。
アフリカのダンスの時間にはDJのかける音楽に合わせて、ステージの周りで踊っていた人たちがランダムにステージに上がって踊る場面もありました。
音楽が好きな移民の方々の中にはDJにもっと踊れる曲をしているから流してほしいと、音楽のリクエストをする人々の姿も見られ、難民、移民の人々の文化をより生で体感できる機会となりました。
伝統弦楽器であるサズを演奏するクルド人の民俗舞踊では、みんなで手をつないで輪になって踊ります。私も舞台上に上がり一緒に踊らせてもらいましたが、初対面の人同士でも笑顔で息を合わせて踊る体験はすごく楽しかったです。
©️難民・移民フェス実行委員会
フィナーレは中止に…でも、それで気づいたイベントの意義
そうしてステージが盛り上がってきたときに、まさかの出来事。雷が鳴り響き、木の多い公園からは避難するようにと公園内にアナウンスが流れたのです。これからカチンのダンスが始まろうとしていたタイミングだったのですが、荷物を持って慌てて駅ロータリーの屋根の下に集まりました。続いてゲリラ豪雨に見舞われ、そのままイベントは中止に。
最大の目玉であったはずの、みんなで踊るフィナーレは途中で中止となってしまいました。けれども、ブースを離れてロータリーに集まった人々の姿を見て、このイベントの意義に気付かされたような気がします。
日本には多くの異文化コミュニティがあり、多様な背景を持った人々が共に暮らしています。ブースに立って自身の文化を語る出展者の方々もそれぞれが異なるバックグラウンドを持っていますが、ロータリーの下に集まると、私にはどこのブースの人かほとんど見分けがつかなくなってしまいました。
しかし、私はこれが実際に日常で起きていることなのだと感じました。ニュースで知る難民・移民という言葉は、異なる文化の人々を大きくカテゴライズしているため、その中に含まれている人々それぞれが抱える現状が異なっていることを忘れてしまいがちです。カテゴライズで括って語ることで生まれるのは認知ではなく、思い込みなのかもしれないと気づかされました。
「難民・移民フェス」はチャリティを目的としたイベントではあるものの、それ以上に、私にとっては社会から透明化されてしまう個人の存在を知る機会になりました。
初めて触れる文化や、ここでしか出会えない人々との交流もあり、イベント参加者の一人であった自分までも徐々に巻き込まれていく感覚がとても新鮮でした。
撮影・イラスト・取材・文・構成/くどうあや