2024年8月より、多数ご応募いただいた中から読者代表として選ばれた「yoiクリエイターズ」による発信がスタート! 今回は日本と韓国を行き来する石坂友里さんならでは、本場の「キムチ作り」体験について紹介してもらいました。
【yoiクリエイターズとは?】
yoiの読者としての目線を生かし、語学やアート、文章表現などのクリエイティブスキルを発揮して、情報を発信していくクリエイターのこと。ビューティーやウェルネス、カルチャーや社会派の記事など、それぞれの得意分野でyoi読者におすすめのコンテンツを毎月配信します。メンバーは25年2月現在石坂友里さん、くどうあやさん、高橋琴美さん。

韓国を訪れたのは11月下旬。実は今回韓国に行った一番の目的は「キムジャン」だったんです! キムジャンは韓国の方にとって、冬の訪れを告げる大切な行事のひとつ。韓国文化にはある程度慣れているつもりでしたが、キムジャンは初体験。韓国の実際の家庭でどんな風に行われるのか、わくわくしながら体験してきたので、その様子をご紹介します。
そもそもキムジャンとは?
キムジャンとは、韓国で伝統的に行われてきたキムチ作りの行事のこと。1年分のキムチ仕込みを、ご近所さん同士が集まって助け合いながら行う文化です。ユネスコの無形文化遺産にも登録されているほど、韓国では大切な行事! キムジャンはただの食文化ではなく、地域コミュニティの絆を深める重要な役割を担ってきました。
最近ではご近所同士で行うことは少なくなり、家族単位で行うのが一般的に。特にお義母さんとお嫁さんが中心となってキムチを漬けることが多いそうです。白菜キムチだけでも一度に作るその量、なんと80kg! 一度に大量に作り、それを1年かけて少しずつ食べるのが韓国のキムチ文化なのです。
これまでも韓国の友人から話を聞いてキムジャンの大変さは想像していましたが、実際に参加するのは今回が初めて! 韓国の友人たちからは「ユリ、大変だね〜(笑)」なんて言われていましたが......もはやホームステイに来た留学生みたいな気持ちでキムジャンを楽しみたいと思いました!(笑)
キムジャン当日!
朝早くからお義母さんに呼ばれて台所へ向かうと、目の前には山のように積まれた白菜が! それを見て驚いている私に、「それでも今年は40kgだけよ!」と一言。以前はこの倍以上の量を一人で漬けていたとのことで、その話を聞くだけで韓国母のたくましさに感服してしまいました。
本来、キムチ作りは白菜を塩漬けにするところから始まります。しかし最近では、塩漬けされた状態のものが市場で簡単に手に入るため、作業の手間も少し軽減されているそうです。だいたい1箱10kg単位で販売しています。
さっそく始まったのは、キムチの味を決める命とも言える「ヤンニョム」作り。材料は大量の唐辛子やニンニク、そして梨ジュースや生姜、玉ねぎ、アミの塩辛、煮干エキス、カナリエキス、米粉です。これをすべて混ぜ合わせてヤンニョムの核になるソースを作っていきます。
日本では材料の計量をする際、スプーンなどすり切りで○杯など目安がはっきりしていますが、韓国の場合その計量はかなり大雑把で、1杯というのはだいたい山盛り1杯を指すそうです。(笑) そんな大雑把なところもなんだか人間味があって面白い! 韓国には「手の味」と書いて「ソンマッ」という言葉があって、真心のこもった手作りの味という意味で使われますが、キムチの味こそまさに韓国母のソンマッなのだそうです。

米粉に水を入れ、鍋に火をかけて溶かします。これは材料を合わせる糊の代わりをしてくれます。

梨ジュースや生姜、玉ねぎ、アミの塩辛、煮干エキス、カナリエキスなどの材料をミキサーに数回に分けて投入し混ぜ合わせます。

ミキサーにかけたものに、溶かした米粉を混ぜ、そこにニンニクを大量投入。韓国では料理にニンニクを多く使うため、多くの家ではこのようにすりおろしたニンニクをタッパーに入れて保存しています。

最後に数種類の唐辛子を混ぜれば、ヤンニョムの核、ソースのでき上がり!
次はヤンニョムに使う大根や小ねぎ、高菜と三つ葉を切って準備していきます。どの野菜も前日に市場で買ってきた、とても新鮮な野菜たちです。ヤンニョムに使わない大根の葉っぱなどは、ハンガーに吊るして干し、別のお料理に使います。


クリスマスソングを流し、色々な話をしながら作業するその時間はとても新鮮で楽しい時間でした。普段の忙しい日々の中ではなかなか得られない、家族みんなで協力してひとつのことに取り組む時間。キムジャンは身近な人たちとの絆を深め、文化を受け継ぐ大切な場面であることを改めて感じた瞬間です。そしてそれが秋の気持ちいい季節というのも何だかとても心地いい◎。

大きな金盥に、切った野菜を入れていきます。

ソースと野菜を手で混ぜます!

先ほど作っておいたソースに野菜を混ぜれば、ヤンニョムの完成です!!!
そして、唐辛子のソースと野菜を混ぜ合わせたらようやくヤンニョムが完成! ここからはいよいよ白菜にヤンニョムを塗る作業が始まります。
「その前にちょっとこれ食べてみて!」とお義母さんが生牡蠣と一枚の白菜を手にやってきました。「塩漬け白菜に、でき立てのヤンニョムと生牡蠣を巻いて食べるのがキムジャンの日の伝統なの!」と言いながら、私の口にそれをそっと運んでくれました。

実は、キムジャンの日にはこの“でき立てキムチ”を味わう特別な習慣があるそうで、家族みんなで生牡蠣やポッサム(茹で豚肉)を白菜に巻いて楽しむのだとか。
お義母さんいわく、「この瞬間を楽しむためにキムジャンを頑張ると言ってもいいくらいよ!」とのこと。確かに、この一口を味わったら、あの手間暇かかる作業も頑張りたくなる気持ちがわかります。そういえば友人も、「アレがたまらない」って言ってたっけ!
でき立てのキムチはまだ白菜がシャキシャキしていて、普段食べている熟成したキムチとは異なります。韓国の方は、このでき立てキムチ(浅漬け)派と熟成キムチ派のふたつに分かれるそうです(笑)。

最後は白菜1枚1枚にヤンニョムを塗っていきます!



白菜キムチの完成〜!
キムジャンのあとのお楽しみ

作業が一段落する頃、フラ~っとお義父さんが帰宅(笑)。「お疲れ様! じゃあごはんにしましょう!」と、お義母さんが準備してくれたのは、先ほどの生牡蠣と、義母特製のポッサム。待ちに待ったこの瞬間に、疲れが一気に吹き飛びました。(ポッサムは、大量の水に、サンギョプサル、ニンニク、生姜、シナモン、コーヒー、ローリエ、味噌、長ネギ、玉ねぎを入れて茹でたものです。)
キムチは漬けたあと、発酵が進むにつれて酸味が増していきます。特に夏頃になるとほどよく発酵が進み、キムチチゲにぴったりの味わいに変化するのだとか。そして、キムチから出る水分はボトルに保存しておき、チゲのスープとして活用するそうです。
今回が初めてのキムジャン体験でしたが、友人たちが心配してくれたほどの大変さは感じずむしろとても楽しい経験でした。それはまだ留学生気分だったからかもしれませんが......(笑) 次回はぜひ80kgに挑戦してみたいです!(笑)
私は、韓国の人たちを“日常の中に楽しみを見つけるプロ”だと思っています(笑)。 韓国のバラエティ番組を見ていても、みんな仲が良さそうに見えたり、楽しそうにはしゃぐ姿に魅力を感じますが、それはどんなことにも楽しみを見つける心を持っているからこそ、その姿がとても魅力的に映るのではないかと思います。 それが、この“キムジャンのあとのお楽しみ”にも感じられました。
「アレがたまらないんだよね!」って言えるものを国民の共通認識で持っている感じも、とても素敵。この文化が長い間大切にされてきた理由、キムチが人と人を繋ぐ食文化の象徴であることを体験できて、韓国の方がまわりの人たちを大切にしたり、人情深い理由も、なんとなくこの文化につながっているように感じました!
おうちでも簡単に私流のキムチ作り
ここで、以前私が作成したキムチ作りの動画もご紹介します! この動画は、お義母さんが東京に来日した際に教えてもらった方法を基に作成したものです。キムチは日本で手に入る材料だけでも、本場に負けないおいしさに仕上げることができました。
さらに、オーガニック野菜を使えば体にも優しいキムチが完成します。 発酵食品であるキムチは、腸内環境を整えたり免疫力を高めたりと、健康面でもうれしい効果がたくさん。韓国人女性の美しさの秘訣に、キムチは欠かせない存在です! 動画はこちらからチェック!
構成・文/石坂友里