宇多田ヒカル  アルバム『BADモード』ジャケット写真

BADモード宇多田ヒカル 通常盤¥3300/ソニー・ミュージックレーベルズ
作詞・作曲/宇多田ヒカル

自分の愛し方を見失ったときに聴きたい一曲

自分自身に「今、何のために生きているのか?」と問いかけたとき、脳裏に浮かぶのは何だろうか。仕事? 親? 友達? パートナー?  人生の中心に、自分の姿はあるだろうか。自分以外の何かに支配されて、心が疲れているなら、宇多田ヒカルの『PINK BLOOD』を。〈自分の価値もわからないような コドモのままじゃいられないわ〉に、ハッと目が覚めるから。

1998年にシングル『Automatic/time will tell』でデビューし、15歳で一躍トップアーティストの仲間入りを果たした宇多田ヒカル。ファーストアルバム『First Love』は、未だに破られることのないCDセールス日本記録を樹立したことは周知のとおり。キャリアを更新するたびに進化を遂げてきた宇多田が、39歳を迎えた誕生日の1月19日に、8枚目となるオリジナルアルバム『BADモード』を先行配信。先進的なサウンドと曲の構成で新境地を開拓し、世間をざわつかせている。

アルバム『BADモード』は、錆びつくことを知らない宇多田の感性の鋭さに圧倒させられる一枚。A. G. Cook.、Skrillex & Poo Bear、Floting Point、小袋成彬ら、現代の音楽界を牽引する人気プロデューサーらをコラボレーターに迎えた楽曲が多数収められており、なかでもA.G. Cookと制作した、アニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のテーマソング『One Last Kiss』とTBS金曜ドラマ『最愛』の主題歌『君に夢中』は、昨年大きな話題を呼んだ。

Liner Voice+ 宇多田ヒカル「BADモード」

本作の4曲目で、アニメ『不滅のあなたへ』の主題歌に起用されたのが、『PINK BLOOD』。曲名について宇多田は、Spotifyのプレイリスト「Liner Voice+」(楽曲の制作秘話や、作品に込めた想いを収録曲と共に聴けるサービス)で、「ピンクシャンパン」と「ブラッドオレンジ」の造語だと明かしている。
この曲は、“自己愛”や“自尊心”を持つことの大切さに気づかせてくれる。冒頭の〈誰にも見せなくても キレイなものはキレイ〉に始まり、〈自分のためにならないような 努力はやめた方がいいわ〉〈傷つけられても 自分のせいにしちゃう癖 カッコ悪いからヤメ〉と、絶え間なく続く力強いリリックの数々。十代でキャリアをスタートさせ、ポップスターとして世間の注目を一身に受け活動を続けてきた宇多田だからこそ紡げるそのひとつひとつの言葉が、私たちの心に重く響いてくる。曲の中盤で登場する、〈自分の価値もわからないような コドモのままじゃいられないわ〉。仕事や他人のせいにして、自分を大切にすることを後回しにしてしまっているときにこの言葉を聴くと、自分に焦点を戻せるはず。

宇多田ヒカル『PINK BLOOD』

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文/海渡理恵 編集/国分美由紀