今日、11月8日(月)は「いい歯の日」。現在、軽度のものも含めると日本人の成人の8割が歯周病になっているといわれています。世界最大の感染症ともいわれ、生命にかかわる大きな病気ではないものの、正しく予防ケアをしないと歯を失い、生活の質に大きな影を落としかねません。


そんな中、コロナ禍における歯や歯ぐきの健康状態、歯周病に対する意識の変化について、20代から60代までの男女500人を対象にした「歯周病の意識調査」を科研製薬が実施しました。

11月8日(月)は「いい歯の日」! 最近、お口ケアしていますか?

歯磨きのイメージ写真

■実施時期:2021年9月24日(金)~9月27日(月) 
■調査手法:インターネット調査
■調査対象:本人、または同居の家族が医療・製薬業種、または専門家ではない全国20~60代の男女500人
※集計データの構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。


コロナ禍で受診控えをしている3人に1人が、口の状態が悪化!?

歯を失うだけでなく全身の健康をおびやかす「歯周病」、放置していませんか?_2

コロナ禍において、歯科医院の受診を「ためらう・少しためらう」と答えた人が全体の53%に。さらにコロナ禍以降、口の状態(歯や歯ぐきの健康状態)が悪化したかに対して「そう思う・少しそう思う」と回答した人は、全体の5人に1人(20.8%)。歯科医院の受診を「ためらう・少しためらう」と回答した人の3人に1人(32.4%)が口内の状態が悪化したと回答していて、コロナ禍の受診控えの影響がうかがえる結果に。

“歯周病”が気になる人は8割…なのに歯科医に定期的に行く人は半数以下!

歯を失うだけでなく全身の健康をおびやかす「歯周病」、放置していませんか?_3

受診控えの傾向にある一方で、歯周病が気になるかという問いには「そう思う・まあそう思う」と回答した人は8割以上(84.2%)。しかし、半年に1回以上、歯科医院を受診している人は4割未満(35.6%)と少なく、半数以上(51.8%)が定期的に受診をしていないことが明らかになりました。

歯周病の始まりは、歯磨きが不十分な部分に付着する歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌。この歯垢が増えると酸素を嫌う嫌気性菌が増え、歯肉から体内に侵入しようとして歯肉の炎症が起こります。出血や腫れなど歯肉炎の症状を放置していると、歯垢が歯周ポケットの中に入り込み、さらに歯周組織を破壊していきます。

この調査結果を監修した、大阪大学大学院 歯学研究科 歯周病分子病態学 教授の村上伸也先生は、「歯周病は、軽度~中等度の場合に、顕著な自覚症状がないまま病気が進行します。歯ぐき(歯肉)の腫れや痛み、歯の揺れ(動揺)を感じる頃には、重度の歯周炎になっていることも少なくありません。気になる症状があれば必ず、もしなくても定期的(少なくとも1年に1回程度)に、歯科医師にご相談することをおすすめします」といいます。

村上 伸也 先生

大阪大学大学院 歯学研究科 歯周病分子病態学 教授

村上 伸也 先生

専門は歯周組織の恒常性維持機構、歯周病の病態解明、歯周組織再生療法の開発。日本歯周病学会専門医・指導医。現在も教授として研究・教育に従事し、歯科医として臨床現場に立つ。著書に『歯周病なんか怖くない』(大阪大学出版会)など。

歯周病は「歯ぐきと歯を支える骨」の病気…と知っている人は1割程度

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歯周病はどこが侵される病気かという質問には、「歯ぐきと歯を支える骨」と正しく回答できた人はわずか1割(13.6%)でした。歯周病がどのような病気なのか、正しく理解できている人はかなり少ないことがわかります。また、歯周病に罹るリスクに関して、注意が必要だと思う年齢についての質問では、全体の4割以上の人が40代以上と回答。しかし、歯周病のリスクは10代後半から発生するといわれており、歯周病ケアは遅くとも20代から必要だと考えられています。

歯周病は歯ぐき(歯肉)だけが侵されている歯肉炎から始まり、その後、歯槽骨(歯を支えている骨)も破壊されてしまう歯周炎へと病気が進行していきます。痛みのような明確な自覚症状を伴う場合には、かなり進行した歯周炎になっていることが一般的です。中高年の病気と考えずに、早い時期から歯周病の予防・早期治療を意識していただくことが、大切な歯を守るために極めて重要です」(村上先生)

妊娠やストレスも、歯周病を悪化させる間接的な原因に

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歯周病の直接的な原因は、歯垢(プラーク)と歯垢の中の細菌が出す毒素ですが、普段の生活習慣など意外なところに歯周病を悪化させる間接的な因子(リスク因子)が潜んでいることを知っていますか? 「ストレス」「喫煙」「妊娠」「虫歯」「歯並び・かみ合わせ」「加齢」「遺伝」が代表的なリスク因子。調査の回答では、働き世代が特に気をつけたい“ストレス”に歯周病の間接的なリスクがあることを知っている人は5割弱(46.4%)。そして、妊娠と遺伝が間接的な因子であると知っている人は、わずか1割程度でした。リスク因子を認識していないということは、それだけ歯周病に対して無防備といえるかも…?

歯周病の原因は口の中の細菌(デンタルプラーク)ですが、その細菌が溜まりやすい口の環境、細菌に対する抵抗力を弱めてしまうような身体の状態は、歯周病のリスク因子になります。虫歯が直接、歯周病のリスクになることはありませんが、歯と歯ぐきの境界部にできた虫歯や、適合の悪い詰め物があったり歯並びが悪いと、細菌(プラーク停滞因子)がたまりやすく、それも歯周病のリスクになります」と村上先生。さらに、性ホルモンのバランスが変化する妊娠期には歯周病リスクが高まるほか、ストレス、喫煙、糖尿病も、身体や歯周組織の抵抗力を弱めるのでやはり歯周病のリスクになるといえます。

30代以上の4人に1人が、歯周病の治療の遅れで後悔も…

調査では、
「歯ぐきが下がってから受診した。もっと早くから検診を受けていれば進行を止められたかも」(滋賀県・50代女性)
「歯ぐきが痩せてきたのに通院せず、放置していたらさらに悪化した」(山形県・30代女性)
「早くに歯科に行けば歯を失わなくて済んだ」(東京都・30代女性)
など、歯周病の悪化や治療の遅れで後悔した経験がある人が、30代以上の4人に1人もの割合でいることも判明。実際の自覚症状として「歯ぐきが下がりはじめてから」初めて歯科医院を受診するという人が多く、30代の若い層でも歯周病の予兆を見逃し、後悔している人が多い実態が浮き彫りに。

QOLを高く維持するには、歯周病の予防・早期治療が大切!

歯周病によって、一度失われた歯ぐきや骨は元通りにはなりません。中等度の歯ぐきや歯槽骨の破壊に対しては、歯周外科手術の際に成長因子を含むお薬を投与することで、歯周組織を再生することも可能になりました(※症状によっては適応にならない場合もあります)。保険適用の治療ですので、歯科医師にご相談ください」と村上先生。

現在、歯周病は口の中の健康をおびやかすだけでなく、全身にさまざまな悪影響を及ぼすことが指摘されています。歯肉の炎症によって生じる毒性の物質が血管から全身に入ることで、糖尿病や肥満、動脈硬化に関与するほか、アルツハイマー性の認知症を悪化させるともいわれているのです。「歯周病が命に関わることは通常ありませんが、“口が支えるQOL(Quality of Life=生活の質)”を生涯高く維持するためには、歯周病の予防・早期治療は極めて重要です」(村上先生)。

まずは毎日の正しい歯磨きから。そして、10代のうちから、かかりつけの歯科医師のもとで定期的に歯垢除去をする習慣を持つこと。「いい歯の日」をきっかけに、早めの歯周病ケアを始めませんか?

構成・文/宮平なつき Photo by LumenST/iStock/gettyimages