汗の季節がやってきました。汗による肌トラブルへの対処法の基本をこの機会に学んでおきましょう。汗をかくことによって引き起こされる皮膚疾患です。特に多い、あせも、汗かぶれについて、美容皮膚科医に聞きました。
美容皮膚科タカミクリニック副院長
美容皮膚科医。埼玉医科大学卒業後、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科、三井記念病院皮膚科ほかを経てタカミクリニック勤務。2021年より現職。ニキビ、毛穴などの治療から、シミ、しわ、たるみなどのエイジングケア治療を行なう。日本皮膚科学会、日本抗加齢医学会、日本小児皮膚科学会、日本美容皮膚科学会所属。
あせもと汗かぶれはどう違うの?

増田美加(以下、増田):汗による肌トラブルのおもなものには、あせも、汗かぶれがありますが、あせもと汗かぶれは、違う対処法が必要なのでしょうか?
山屋雅美先生(以下、山屋先生): あせも(汗疹)は、大量に汗をかいて汗を出す管(汗管)が詰まることによって、周囲の皮膚組織に汗がモレ出て、発疹が出る皮膚の病気です。
背中や首など、汗をかきやすいところに赤いプツプツができて、かゆみを伴うこともあります。女性ホルモンが乱れる影響で起こりやすい時期もあります。 一方、汗のかぶれとは、かいた汗が長時間にわたって、肌に触れ続けることで、汗の成分や塩分が肌に残って起こる刺激性接触皮膚炎です。
年齢を問わず、汗に触れている広範囲にわたって、かゆみや赤みが起こります。髪が触れる額や洋服が触れる首やひじなどにもできます。
汗の季節になると出来る顔の白いプツプツは何? 治し方は?

増田:夏になって汗をかくと顔にできる白い小さなプツプツが気になりますが、これもあせもでしょうか?
山屋先生:ふたつの可能性があります。 ひとつは通称、白あせも。水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)かもしれませんね。皮膚の浅いところにある角層で、汗管が詰まってできたものです。
赤みはなく、透明か、白い小さな水ぶくれが現れるのが特徴。かゆみがないことがほとんどで、 あせもができていると自覚することは少ないと思います。汗の水分が皮膚に詰まっている状態で、おもに額にできやすいです。
水晶様汗疹は、乳幼児に見られることが多いあせもですが、高い熱を出したときなど、大人にできることもあります。
水晶様汗疹は、夏過ぎて汗の季節が終わると自然に治ります。予防には、汗をかかないようにするしかありません。汗の排泄が促されていないために起こるので、汗の穴を塞がれないように、角質ケアをするのはいいでしょう。
治療の必要はありませんが、どうしても気になるようなら、汗がたまっているところを針でつついて出す治療を行います。さらに気になるようなら、自由診療になりますが汗をかきにくくするボトックス注射を行なうこともできます。
もうひとつ、白いプツプツで目の周りにできやすいものは、稗粒腫(ひりゅうしゅ)の可能性もあります。稗粒腫は、毛穴の奥の毛包(もうほう)や未発達な皮脂腺に古い角質や皮脂などが溜まり、皮膚の中で固まることで発症します。これも気にならなければ、治療する必要はありません。
目の周りにできやすいのは、毛穴が少なく老廃物が蓄積されやすいことが原因。加齢とともにできやすくなります。どうしても気になるようなら、皮膚科で、針で穴を開けて取り出すことも可能です。
あせも、汗のかぶれの対処法・予防法は?

増田:あせもと汗かぶれの予防法や、症状を悪化させないための工夫はありますか?
山屋先生:汗による肌トラブルを予防するためには、肌を清潔に保つことが基本です。高温、多湿の環境で、肌が蒸れてしまわないようにすることが大切。気をつけたいおもなケア方法を紹介します。
汗をかく日の肌ケア方法
●汗をかいたまま放っておかず、タオルや汗拭きシートで、汗をこまめに拭き取ります。汗を肌に長時間付着したままにしないことが大切。
●日中でも洗顔できる環境なら、汗を落とすために洗顔しましょう。
●勤務先で洗顔できない環境であれば、汗をかいたらメイクの上からでもスプレータイプの化粧水をかけてティッシュオフ。その後、日焼け止めを塗り直します。
●汗をかきやすい額や首もとに触れる髪の毛をまとめておきます。
●肌に密着しやすい衣類は避け、通気性と吸湿性の良いものを選びます。汗をかいたら早めに着替えるようにします。
●エアコンや扇風機を上手に利用し、汗をかきすぎないようにします。
増田:皮膚科に行ったほうがいい場合はありますか? 皮膚科ではどんな治療をするのでしょうか?
山屋先生:セルフケアしても、かゆみやブツブツの症状がつらくて続くようでしたら、皮膚科を受診してください。炎症を生じてかゆみがある場合は、かゆみ止めの抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、炎症を抑えるステロイド成分が配合された外用薬を使用します。
いずれにしてもひどくなる前に、皮膚科を受診することをお勧めします。
イラスト/大内郁美 企画・構成・取材・文/増田美加