“体は食べるものでできている”とはよくいいますが、日々食べるものが心身へ及ぼす影響は少なくないと頭ではわかっていても、外食と自炊のバランスに悩み、管理されていない食生活を振り返って反省し、あきらめとストレスを少しずつため込む……なんてことはないでしょうか。
私はおおいにあります。料理と自分とのあいだに、風通しのいい関係を築くにはどうしたらいいのかと考えるなかで、料理家・今井真実さんのレシピ本に出合いました。最新刊『料理と毎日 12か月のキッチンメモ』をご紹介させてください!
今日のEditor's Pick!
『料理と毎日 12か月のキッチンメモ』今井真実 ¥1,925 /CCCメディアハウス
もともとレシピ本を読むのは好きで、“読む専”として収集していたのですが、コロナ禍を経て、「よし、レシピ通りに作ってみよう!!」と今更すぎる一念発起。なかでも真っ先に開いたのが、2022年に今井真実さんが出された『毎日のあたらしい料理』でした。
これは本当に素晴らしい一冊で、丁寧でシンプル、そして作る人を尻込みさせない、レシピの数々。天上の料理たちを眺めて想像するのもレシピ本の醍醐味ですが、こちらは実際に作ってみてわかる、いわば実践の面白さにあふれています。なかでも、焼き方が目からうろこの鶏胸肉のソテーはすごい。通算100回は作りました。
さらに、最新刊『料理と毎日 12か月のキッチンメモ』は、かねてから今井さんがnoteに書かれていた日記と毎日の献立がまとめられた一冊です。お仕事、ご家族の様子や季節のイベントなどの日々のでき事が綴られ、同時にその日の「キッチンメモ」として、簡単なレシピやアイデアが紹介されています。
本書では、「4月の料理」~「3月の料理」まで、1カ月単位で12カ月分の章がたてられ、ゆるやかな四季のグラデーションを感じる構成に。例えば、「4月の料理」では「お店みたいな手羽中のナンプラーからあげ」「カイワリのお刺身」「田植とファイト」「タコのラグーソースのパスタ」…と眺めているだけでおいしそうな見出しが並びます。
キッチンメモは膨大で、載っているレシピを作ることも、組み合わせの妙を味わうことも、日記として楽しく読むこともできて、とても自由。読む時々でアンテナに引っかかるポイントは違いますし、ぱらぱらとめくるうちに「そういえばとうもろこしがあったな」と思い出し、「とうもろこしと海老のすり身揚げ」を作ってみたり…今井さんの献立が我が家にやってきたような楽しさがあります。
私はこの本を読んだとき、肩の荷が下りるような、心地よさを感じました。献立が献立を呼び、今日も世界のどこかで料理をしている人がいる…という安心感でしょうか。人と料理のかかわり方は千差万別ですが、継続的に料理をするのであれば、一人じゃないよ~と思えることはとても大事ですよね。
「理想の料理」をいったんワキに置き、ストレスなく料理と向き合っていきたいと思う今日この頃です。
写真・文/こじま(すばる)