ローラさんも経験した、親密なパートナーからの暴力。イヴ・サンローラン ボーテ『ABUSE IS NOT LOVE(暴力は愛じゃない)』イベントレポート_1

去る11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に、『イヴ・サンローラン・ボーテ』がグローバルで取り組む社会貢献活動「ABUSE IS NOT LOVE(暴力は愛じゃない)」の限定イベントが開催されました。親密なパートナーからの暴力(Intimate Partner Violence)にまつわる世界の現状やIPVを理解するためのセミナーが行われ、スペシャルゲストとしてYSL BEAUTY ジャパンのアンバサダーを務めるローラさんも登場! 静かな熱気に包まれたイベントの様子をお届けします。

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YSL BEAUTYが世界に広める「9つのサイン」

日本で「DV」と呼ばれる「親密なパートナーからの暴力(IPV)」は、世界中の女性のおよそ3人に1人が経験するといわれる社会課題のひとつであり、身体的、性的、経済的、精神的な暴力、およびパートナーによる行動のコントロールが含まれています。そして、その傾向はコロナ禍によって30〜60%も増えたといいます。『イヴ・サンローラン・ボーテ』では、2020年の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に「ABUSE IS NOT LOVE」を立ち上げ、パートナー団体のIPV防止プログラムを支援してきました。同時に、警戒すべき9つの「ABUSE=暴力」サインの認知を広め、防止につなげることをミッションとしています。

9つの「ABUSE」サイン
①萎縮させる
②無視する
③脅す
④操る
⑤干渉する
⑥侮辱する
⑦嫉妬する
⑧管理する
⑨孤立させる

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「『時代を変えることに私は貢献してきた』。これは創業者であるムッシュ イヴ・サンローランの言葉です。私たちはその言葉のもとに、恋愛関係における親しいパートナーからのさまざまな暴力(ABUSE)のサインの認知と啓発活動に取り組んでいます。日本では、美容部員を含む全社員が9つのサインについてトレーニングを行い、女性への暴力撲滅のシンボルであるパープルリボンバッジを店頭にて着用しました。来年は2万人への啓発を目標に、ビューティを通して多くの方の人生をよりよい方向に進めるべく認知を高めていきます」(イヴ・サンローラン・ボーテ事業部長 長谷友紀子さん)

「暴力の木」ではなく、「非暴力の木」を育てる

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また、『イヴ・サンローラン・ボーテ』は日本で「ABUSE IS NOT LOVE」がスタートした2021年に、NPO法人「女性ネットSaya-Saya」とのパートナーシップを締結。若年層に向けたデートDV啓発活動の「チェンジプログラム」をサポートし、2021年12月から現在までに、全国97カ所の中学校、高校、大学などで1万3250人への啓発活動を実施しています。

この日はパートナーである「女性ネットSaya-Saya」によるセミナーも実施。ケンカとDVの違い、警戒すべき9つのABUSEサインや暴力の種類とサイクル、そして身近な人が被害を受けていた場合のロールプレイ実演などが行われたあと、会場に向けて「これは、二人だけの問題でしょうか」という問いかけが。

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「『暴力の木』は、“男らしく・女らしく”といった偏見の土に根を張り、漫画やドラマ、アダルトサイトなどの誤った情報を肥料にし、“自分には関係ない”という傍観の雨と“暴力をふるわれるほうも悪い”などの間違った思い込みの太陽、ジェンダー不平等に根ざした制度によって育っていきます。それを『非暴力の木』に変えていくには、“自分らしく”多様性を認める共生の土に正しい情報の肥料を与え、目をそらさず声を上げる勇気の雨と“暴力は愛じゃない”という真実の太陽、そして、暴力を許さない空気が必要です。ぜひ、私たちと一緒に『非暴力の木』を育てる仲間になってほしい。あなたも、私も、大切な人です」(女性ネットSaya-Saya 千野洋見さん)

ローラさんも被害経験があるIPV。“知る”ことの大切さ

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イベント終盤には、YSL BEAUTY ジャパンのアンバサダーのローラさんが登場。「ABUSE IS NOT LOVE」について、「本当に素晴らしい取り組みだなと思いました。声を上げることによってたくさんの人が助かる気持ちになると思う。IPVは私自身も経験したことがあって昔調べたこともあるし、今でもちょっと涙が出そう」とコメント。日本のジェンダーギャップ指数が146カ国中116位と低いことについては、「今は順位が低いと思うけれど、これからたくさんの人が知るきっかけができたら順位はどんどん上がっていくはず」と前向きな視点で答える姿が印象的でした。

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9つのABUSEサインのうち、ローラさんが特に気になったのは「嫉妬する」と「干渉する」。「恋人も夫婦も他人同士だと思うから、『どこにいるの?』『何をしているの?』と言わなくても大丈夫な関係や、ほどよいバランスってすごく大切だと思う。嫉妬についても深いものだと思っていて、例えばほかの男性の素敵なところを話しているだけで親しい男性からの嫉妬が始まったりすると、怖いと思ってしまう…。

もし、IPVやABUSEのサインを10代の頃に知っていたら、自分がどう対応すればいいのかがわかってもっとラクになれていたんじゃないかなと思う。だから、早い段階から“知る”ってすごく大切なことだし、DVって簡単には人に相談しづらいからこそ、こういう情報が発信されるのは本当に美しいことだと思います。私もまだまだ学んでいる途中だけど、どんどん伝えていこうと思います」(ローラさん)

どんなことが起きても、自分を愛することはすごく大切

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そんなローラさんにとって理想のパートナーシップとは、お互いをリスペクトしていられる関係。

「大人になっても、どんなに歳をとっても、ずっと子どもの心を持って冗談を言い合えたり、ダメなところも見せられたりするような関係が理想です。私自身、昔はかっこつけちゃうこともあったけど、ありのままでいられるようになったら、同じ感覚の友だちが増えて、生きることがラクになって楽しくなってきました。『ABUSE IS NOT LOVE』をきっかけに、私も学んだことをもっといろいろな人に伝えていきたいし、少しでも近くの人に相談できたり悩みが解決されたりしたらうれしいなと思います。そして、どんなことが起きても、自分を愛することはすごく大切。たくさんの人が自分を愛するようになったら、もっとうれしい」と、会場に向けて力強いメッセージを送ってくれました。

どんな理由があろうとも、暴力を受けていい理由はどこにもない。そんな“当たり前”が奪われている現状を知り、理解することが、身近な人や自分を救う一歩になるのだと感じる時間となりました。

「女性に対する暴力撤廃の国際デー」とは?

女性や女児に対するあらゆる暴力の撤廃を目指して、国連により定められた国際デーのひとつ。また、毎年11月25日から12月10日の世界人権デーまでの期間は「性差別による暴力廃絶活動の16日間」として、世界各国で女性への暴力を根絶するための活動が行われます。

取材・文/国分美由紀 撮影/伊藤奈穂美