海外ドラマなどで見かける「カップルセラピー」。そもそもカップルセラピーって何? どんなカップルにおすすめ? そんなカップルセラピーにまつわる疑問を、臨床心理学に基づくカップルセラピーを手がける「COBEYA」の吉田亜里咲さんにお答えいただきました。

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お話を伺ったのは…
吉田亜里咲

COBEYAセラピスト

吉田亜里咲

臨床心理士、公認心理師。スクールカウンセラーや病院、子ども向け訪問支援などの経験を経てCOBEYAへ。得意な領域は、発達障害(グレーゾーン含む)、依存症、異文化間コミュニケーション、異文化適応、LGBTQ+、アイデンティティ、精神疾患、親子関係、対人コミュニケーション、アンガーマネジメント、育児、キャリア、ストレスマネジメントなど。

Q1.「カップルセラピー」とは?

A1.パートナー間のさまざまな問題と向き合うための場です

夫婦や異性・同性の恋人など、パートナー間における問題の改善や関係性の再構築などをサポートする場です。「カップルセラピー」では、あらゆる関係性の二人がセラピーを受けることができます。

相談=カウンセリングというイメージを持たれるかもしれませんが、「カウンセリング」は、例えばキャリアカウンセリングなど多くの職種で使われる言葉で、「セラピー」は心理療法などの限られた場で使われます。

Q2.どんなカップルが、どんなことを相談できるの?

A2.恋人でも夫婦でも、パートナーとの間に生まれる、あらゆるテーマに対応しています

子どものこと、家庭での役割分担、話し合いができない、金銭問題、不倫、セックスレス、カサンドラ症候群(身近にいる人が自閉スペクトラム症(ASD)のため、適切なコミュニケーションを築けないストレスから、心身に不調が出る症状)など、あらゆるご相談に対応しています。

恋人関係の場合は浮気やセックスレス、ご夫婦であればライフステージの変化やパートナーの家族との関係性、妊娠・出産後の夫婦関係といった日常の課題にまつわるお話が多いように感じます。パートナー間の悩みには複数の課題が混在しているので、お話を伺っていくと、パートナーのロジハラ(ロジカルハラスメント)やモラハラ(モラルハラスメント)が原因になっているケースもあります。

今は問題がないカップルでも、お互いにすべての気持ちを伝えられているとは限りません。「伝え方がわからない」「相手を傷つけたくない」「険悪な雰囲気になりたくない」といった理由で言えずにいることを、どう伝えたらいいか…というご相談を受けることもあります。

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Q3. 通う回数や頻度、時間と料金の目安が知りたい

A3.ケースバイケースなので、あくまで目安として考えて

⚫︎回数
セラピーの平均的なセッション回数は12回といわれますが、実際はお二人の状況によっても大きく変わります。どのような状態をセラピーのゴールとするのかをセラピストと相談したうえで、目安となる回数を決めていきます。

⚫︎頻度
1週間から2週間に1度受けられると、変化が定着しやすいので理想的です。大きな問題の解決ではなく、二人の関係性を良好に保つメンテナンスが目的であれば、月に1回のペースで十分。

⚫︎時間と料金
COBEYAの場合、初回は30分と60分があります。30分はカップルセラピーの雰囲気を感じてみたい方やお一人での相談などにおすすめです。60分あると課題の分析が深まり、目標設定ができます。金額も内容やプランによってさまざまですが、例えば月2回45分対面セラピーのプランの場合は¥38000になります。

継続する場合は45分と75分を選べます。セラピストにご自身の気持ちを話すことでモチベーションが上がる方であれば75分、自己理解が深まり取り組みを実践されている方は45分でもよいと思います。

Q4. パートナーがカップルセラピーを嫌がる場合はどうしたらいい?

A4.無理をせず、まずはお一人で相談にいらしてください

お二人が最初からセラピーに前向きでいられるケースは、とてもまれです。効果的な方法は一人一人違うので、パートナーを無理やり連れてくる前に、まずはお一人でご相談にいらしてください。カップルの関係性はどちらか一方が変化すると、もう一方も変化する相互作用があるので、それを生かしたアプローチも可能です。

Q5. 具体的な悩みがないときや、モヤモヤしている状態で行ってもいいの?

A5.もちろんです! メンテナンス感覚で活用してください

むしろ整理や言語化がされていない状態で来ていただければ、一緒に言語化していくサポートができます。思いを整理していくことで、「自分はこんなことを思っていたんだ」と気づくきっかけになるかもしれません。また、自分では言語化できていると思っていても、実はそれは表層的な部分であって、奥底にある気持ちは言語化できていない場合もあるので、専門家がお役に立てることはあると思います。

ご相談に来られる方はセラピーへの抵抗感が少なく、関係性や家族構成に変化の起きやすい30代の方が多く、特に20代前半の方のなかには「今は問題ないけれど、この関係を維持したいから」とご利用されるケースもあります。私たちが目指すところもまさにそこなんです。美容室や整体へ行くのと同じように、心のメンテナンスとして活用していただけたら嬉しいです。

カップルセラピー 夫婦 恋人 カウンセリング 臨床心理士 Q&A

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Q6.カップルセラピーはどんなふうに進めていくの?

A6.トライ&エラーをしながら課題解決に向けた取り組みを実践します

初回のセラピーでは、お二人の間にある課題(コミュニケーションの傾向などから生じている問題点)を分析し、わかりやすくお伝えしながらセラピーの目標を設定します。そのうえで、具体的な提案をお伝えし、取り組んだ際の変化の有無を見ながら、よりフィットする内容に調整していきます。

もしうまくいかなかった場合は、その原因を分析することも重要な要素なので「セラピーはトライ&エラーです」とお伝えしています。また、セラピーの場では、怒りや不満でコーティングされた感情の核にある「自分はパートナーにどうしてほしかったのか」という思いを解きほぐしていくことを意識しています。

〈セラピーのプロセス〉
①から⑤まで直線的に進むものではなく、前後のプロセスを行き来する場合もあります。
①自己認識
現在の状況・環境の把握と、問題発生の原因を正しく特定していく段階。
②自己対決
これまでの習慣や価値観に変化を与え、言動を変える段階。否認・怒り・抑うつなどの症状が出て、苦しいと感じる人が一番多い時期。また、人によってこの時期が長くなる場合も。
③自己受容
良い点も悪い点も含めた、あるがままの状態を理解し認めたうえで、すべてを受け入れる段階。
④自己選択・自己決定
自分で、あるいはパートナーと協力して、主体的に課題解決のために必要となる今後の目標を設定。目標達成までの見通しを立て、段取りを組んでいく。
⑤コミットメント・実行
目標を達成するために行動する。結果と照らし合わせて振り返りを行うことを繰り返す。

Q7.カップルセラピーの「ゴール」ってどんな状態?

A7.お互いの努力や変化を見つめられる状況がひとつの目安に

お二人が抱える課題の深刻さや関係性によって違いますが、事実を冷静に観察し、日常的に相手の努力を見ることができる状態になることは、ひとつの目安になると思います。

例えば初回はお二人が目も合わせなかったり、「相手が悪い」とお互いに言い合ったりしている状態だった方たちが、向き合って座ったり、相手の顔を覗き込んだりと、相手の話を聞いて受け入れる姿勢になる。あるいは、「相手も変わってきたと思うんです」「こんなふうに頑張ってくれていると思う」といった言葉が出る。そうした変化が、日常として定着していくと、ご本人の表情や話し方も変わってきます。

そのタイミングで、お二人に変化の実感を聞いて現状分析した上で、セラピーを1〜2カ月に1度のフォローアップに切り替えるか、いったん終わりにするかの判断をしていただきます。もちろん、まだ不安という方には継続してセラピーを提供していきます。

Q8.セラピストはどう選べばいい?

A8.まずはWebサイトで資格や専門分野をチェックしてみましょう

一概に言うのは難しいのですが、例えばどういう資格を持っているか、今まで活動してきたフィールドや専門分野がご自身の悩みに合っているかといったことはWebサイトなどで確認できる要素のひとつです。COBEYAの場合は、当社の審査を通過した臨床心理士・公認心理師のみが在籍し、個人情報の取り扱いをはじめとした職業倫理を遵守しながら、セラピーをご提供しています。


セラピストが自分に合うかどうかは、実際に話をしてみないとわからないもの。COBEYAでは、コーディネーターがご相談者さまの雰囲気やお悩みに合いそうなセラピストを紹介するサービスもあります。「この人とは合わない…」と思いながらお金と時間をかけて本音で話すのは難しいですし、信頼関係がない状態で提案やアドバイスをされても受け入れづらいですから。

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Q9. カップルセラピーはオンラインより対面のほうがいい?

A9.基本的に効果は同じですが、対面だからこその安心感はあります

対面もオンラインも基本的に効果は同じだと考えていますが、対面だからこその安心感や空気感はあると思います。セラピーにおいて、空間や時間といった「枠」は心理的不安を減らすうえでとても重要だといわれています。

例えば、自宅だと「いつパートナーが帰ってくるかわからない」「もしかしたら聞かれてしまうかもしれない」という不安を感じやすいですよね。そして、セラピーが終わった後はエモーショナルな状態になることもあるので、対面だとセラピーの場所から物理的に離れて、帰り道を歩く中でクールダウンしやすいという側面はあるかもしれません。ただ、ライフスタイルによってはオンラインのほうが利用しやすい方もいらっしゃるので、ご自身の生活に合わせやすい方法を選んでいただけたらと思います。

構成・取材・文/国分美由紀 企画/福井小夜子(yoi)