セラピーってどんな場所で行うの? セラピストとの会話って? 気になるカップルセラピーの空気感を、セラピー未体験のカップルが「COBEYA」で体験してきました! 実際のセラピーの様子を始めから終わりまでリアルにレポートします。
カップルセラピーとは?
夫婦や異性・同性の恋人など、パートナー間における問題の改善や関係性の再構築などをサポートする場。子どものこと、家庭での役割分担、話し合いができない、金銭問題、不倫、セックスレス、カサンドラ症候群(身近にいる人が自閉スペクトラム症(ASD)のため、適切なコミュニケーションを築けないストレスから、心身に不調が出る症状)など、あらゆるテーマを相談ができる。
体験したカップルはこの二人
かなさん・亮さん(ともに仮名)
職場で出会い、4年前に結婚。特に大きな問題はないが、かなさんはカップルセラピ ー を受けている友人から「すごくよかった」と勧められ、興味津々。平日はゆっくり 過ごす時間がないため、休日は二人で過ごすようにしている。 一緒に韓国ドラマを見るのが休日の楽しみ。
COBEYAセラピスト
臨床心理士、公認心理師。スクールカウンセラーや病院、子ども向け訪問支援などの経験を経てCOBEYAへ。得意な領域は、発達障害(グレーゾーン含む)、依存症、異文化間コミュニケーション、異文化適応、LGBTQ+、アイデンティティ、精神疾患、親子関係、対人コミュニケーション、アンガーマネジメント、育児、キャリア、ストレスマネジメントなど。
「COBEYA」のセラピールームの様子。大きな窓にゆった りしたソファ。まるで友 達の家のリピングのようなゆったりとした空気。
カップルセラピースタート!:悩みはないと思っていたけれど、二人の関係性が変わったきっかけが徐々に浮き彫りに
「まずはお 二人が出会ってから今までの道のりをお伺いできますか?」というCOBEYA吉田亜里咲さんの言葉からセラピ ーがスタート。
吉田さん 事前アンケートには「ラブラブ感がなくて少し寂しい」と書かれていましたね。
かなさん 特に悩んでいることはないのですが、しいて言うならもっとラブラブだったら楽しそうだなと思って。実は私の両親がいまだに恋人同士みたいにラブラブで、自分が結婚してみて、そのすごさがわかりました。
吉田さん そこについて亮さんはどう思われているんですか?
亮さん 確かに、恋人というより家族感が強いかな。いわゆる恋愛的なときめきみたいな、一緒にいてドキドキするみたいなことはなくなってきているのかもしれないです。
かなさん 親友みたいな感じだよね。今の状態も悪くないけど、付き合ってたときによく聴いてた音楽とか流れてくると、あの頃はラブラブで楽しかったな〜ってちょっと思うんです。
吉田さん それは具体的に、今と何が違いますか? 何があって、何がないのでしょう?
亮さん 一緒に出かけるときにおしゃれしなくなったとか? あとはなんだろう…でも圧倒的にセックスの回数が減りましたね。3年ぐらいしてないです。
吉田さん それは何かタイミングがあって減っていったのでしょうか?
かなさん 付き合って3か月ぐらいしたタイミングで、彼が犬を飼い始めたことが大きいですね。それまでは別々に住んでいて、特に怒ることもなかったけど、彼が突然犬を飼い始めたんです。しかも犬と暮らした経験がないからお世話が超適当で。私は同棲したくなかったけど、「このままじゃワンちゃんが死んじゃう!」ってお世話に通ううちに、同棲みたいな形になりました。結婚もしていないのに、「今日は遅くなるから、ワンちゃんにごはんあげて」みたいな業務連絡が増えて、気づいたら家族になっていた感じ。
亮さん 犬のことで彼女が怒るようになって、二人の立場は逆転しましたね(笑)。でも、ラブラブ感が減った理由は、セックスレスになったことも大きいよね。それでより家族感が強まったというか。
かなさん 確かに、犬を飼い始めたことで関係は変わったかも。別々に暮らしていた頃は、よそ行きな感じで会えていたけど、いきなり家族みたいになっちゃったからね。それに、セックスがなくても二人の関係はまわっていたし。
カップルセラピー中盤:気づいていなかった“結婚に対する記憶の違い”も明らかに
亮さん 昔と変わったことでいうと、彼女との結婚を意識してから自分の金銭感覚を変えました。というのも、彼女と出会った当時は、後輩にごちそうしたり趣味につぎ込んだり、とにかく金遣いがあらかったので、「ちゃんと直してほしい」と言われて。
かなさん 私、そんなこと言ってないよ(笑)。全然違う。
亮さん あれ? 俺、記憶改ざんしてる?(笑)
かなさん 私はそんな彼でも好きだったけど、お金に対する感覚があまりにも違うから、結婚したいとは思わなかったんです。ただ、お金を趣味に全振りしちゃうところも彼の面白さでもあったから「そのお金の使い方で生きていけるぐらい経済力のある女性と結婚したほうがいいのでは?」って提案をしていたんです。そうしたら、なぜかお金の使い方とかを見直し始めて(笑)。
吉田さん 亮さんがそんなに自分を変化させられたエネルギーはどこからきたのでしょう?
亮さん 僕は一度、別の人と婚約破棄していて。その人には抱かなかった感情なんですけど、「彼女(かなさん)のためだったら自分を変える」って思えたんですよね。婚約破棄を経て初めて「結婚したい」と思えた人だからかな。
吉田さん そこまでご自身を変化させるって、なかなかできることではないと思いますよ。自分を客観的に見るって難しいことですから。
亮さん もともと、他の人の意見でいいなとか正しいなと思ったことは取り入れようと思うタイプなので、無理して変わった感じもないですね。
かなさん そこはすごくいいところだよね。あと、彼は何か問題が起きると、パワポで今後の対策を提案してくるんですよ。この間も、彼が酔って帰ってきて「人生楽しい!」とか、深夜なのに大騒ぎするので怒ったら、「酔っ払って騒いだら1万円払う」っていうルールを彼が提案してくれて、採用しました(笑)。私はもともと怒りとかの感情が長続きしないので、1万円もらったら許してます。そこで許さないと逆に私がやばい人になっちゃうし。
吉田さん それはいいですね。ネガティブにとらえがちな相手の行動を自分にとってメリットにすることで、フレームが変わりますから。亮さんがパワポで提案するのも、相手の不満や気持ちに向き合っているというメッセージにもなるのかなと思います。
かなさん 1万円もらったら許すけど、お酒の飲み過ぎは体にもよくないし、認知症のリスクが上がる可能性があるっていう記事も見たことがあるので、心配はしています。私たちはそれぞれの祖母が認知症を発症しているから、本当はもうちょっと彼にも気をつけてほしいんですけど…。
現状についての客観的意見と、これからのアドバイスをもらいカップルセラピー終了
吉田さん そろそろお時間になりますが、セラピーの中でお二人のお話を伺っていると、かなさんはすごくいい物事のとらえ方ができる方だと感じました。物事のいい面を見るというのは、なかなかできることではないので。
亮さん 確かにそうですね。
吉田さん 相手に伝えるときも「あなたがこうだから」ではなく「自分がこうやって過ごしていきたいから」という伝え方をされていますよね。それはセラピーの中で実践していく「アサーショントレーニング」とも似ています。どちらかが「これは嫌だ」というサインを出したときに、しっかりと向き合うところがお二人のコミュニケーションを円滑にしているポイントなのかなと感じました。
亮さん 吉田さんはいろいろなカップルの話を聞いていらっしゃると思うんですけど、僕らの関係の築き方って何点ぐらいですか?
吉田さん 点数で評価するのは難しいですが、距離感やお話の仕方と、かなりいいポイントが多いご夫婦なんだろうなと思います。今後のアドバイスとしてお伝えするなら、セックスレスや飲酒などの問題に対してお二人とも納得感があるのかどうかをしっかり向き合ってみるのもひとつの手かもしれません。
それはきっと、しっかりコミュニケーションが取れているお二人ならできると思います。価値観が似ていたとしても、違うところもきっとあるし、そこをどういうふうに相手に知っておいてもらうかということが大事かなと思いますね。
かなさん モヤモヤした気持ちが大きくなる前に、ということですよね。
吉田さん そうですね。「酔っ払って騒いだら1万円払う」というルールについても、現状はうまくいっていますが、根本的な解決策ではないので、今後、本質を改善する方法をお二人で話し合う必要があると思います。「課題の本質を理解してもらえていないんじゃないか」という思いが大きくなる前に回収しておくというか。どちらか一方からの提案ではなく、二人それぞれに提案をしたうえで折衷案を見つけて、「ちゃんと取り組んでいるね」「徐々に改善しているね」と共通認識が持てる状態は重要かもしれません。
亮さん なるほど。それは大事かも…がんばろ。
カップルセラピーを終えて…
亮さん
夫婦ってだんだん、相手がいることが“当たり前”というか“日常”になるじゃないですか。だからこそ、こうして第三者を交えて普段なあなあにしていることに改めて向き合うと、自分ごとに引き寄せやすいというか。30分という短い時間の中でもいくつかの気付きがありました。
いつも妻から言われていることを、改めて「これはいけないんだな」とか「迷惑をかけてるんだな」って、すごく自分ごと化してとらえるきっかけになりました。相談相手がどちらかの家族や友人だとフラットに話せないけれど、相手は専門家だから変なフィルターがないし、公平という意味でも安心感がありましたね。
かなさん
実際に受けてみて、「セラピーを受けたい」と思う人たちの気持ちがわかりました。「なんでこんなに伝わらないんだろう?」っていうことが、第三者を交えて話すことで、こんなに伝わりやすくなるというか、彼にとっても腹落ちしやすくなるんだなって。
今まで彼と話していて「全然伝わってないな」と思うことがあっても、私も面倒くさがりだし怒りを持続させるのが苦手だから、「まあ別にいいや」で済ませていたんですよね。でも、専門家の人の視点が入ることで、自分が感じたことは間違いじゃなかったんだって思えたし、客観的な説得材料にもなるのかなって感じました。
COBEYA
臨床心理学に基づくカップルセラピーの専門サービスを提供。臨床心理士、公認心理師が在籍し、対面や出張(ともに東京・大阪)、オンラインで利用でき、英語でのセラピーにも対応。初回は30分(¥7500)と60分(¥14000)から選ぶことができる。
https://cobeya.jp/couple/
撮影/三浦晴 構成・取材・文/国分美由紀 企画/福井小夜子(yoi)