韓国のドラマ、映画、そしてBTSの音楽を聴き始めたことがきっかけで韓国・ソウルに半年間語学留学をしたモデルの前田エマさんに、ソウルで暮らすことで気がついた韓国の「今」についてお伺いしました。今回は、韓国の食文化に触れて感じたこと、前田さんおすすめのカフェ3つを紹介します。

前田エマ
前田エマ

東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。韓国カルチャーガイド『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)を上梓。

韓国では「ごはん食べた?」が挨拶がわり

前田エマ 韓国

アルムダウン茶博物館 『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

——韓国はレストランやカフェも活気にあふれているイメージです。韓国の食文化に触れて気づいたことはありますか。


前田さん:日本との違いは、一人で食事をする習慣があまりないことですね。「밥 먹었어?(パン モゴッソ?)」=「ごはん食べた?」という言葉が挨拶に使われるように、食事は人とのコミュニケーションのひとつ。家庭でも会社でも、韓国では基本的にみんなで一緒に食事をします。


あと、食事をシェアする文化は日本以上に色濃いですよね。ドラマなどで描かれているように、自分のおかずを他人にあげたり、他人に多く取り分けてあげたりっていうのは、本当です。

友達の実家に遊びにいったときも、さまざまな種類のキムチを「持って帰りなさい!」といただいたのですが、韓国ではキムチはあげたり、もらったりするもののようです。その子の家では1年に一度、大量にキムチを漬ける日があって、誘われました。そういえば、家の近所のおばさんにもキムチを何度かいただいたことがありました。

食事を通じたご近所づきあいや親戚、友人づきあいが濃厚だと感じる一方で、一人で食べられるレストランもすごく増えているそう。そこには日本のドラマ『孤独のグルメ』の流行も影響していると耳にしたことがあります。韓国には大勢で食事をする慣習はあるけれど、「たまには一人で食べたい」と感じている人も多いのかもしれません。

人と人の距離が近いからこそのシェア文化

前田エマ 韓国 1994SEOUL

1994 SEOUL 『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

——韓国といえば、最近はカフェの数が多いことでも知られています。コンビニの2倍以上のカフェがあるのだとか。なぜこんなにカフェへの需要があるのでしょう。


前田さん:韓国の方々は食事をするのと、コーヒーを飲むことがセットになっているように感じました。食後にアイスアメリカーノを、大袈裟に言えば必ずと言っていいほど飲みます。アメリカーノは、コーヒーを水で薄めたもので、暑い日はもちろん、雪が降っている寒い日も、アメリカーノを片手に歩いているんです。会社ではみんなで一緒にランチをした後、上司がコーヒーを奢る習慣があったり、コーヒー文化が根づいているんでしょうね。


カフェは老舗がたくさんあるというより、新しい店がオープンするサイクルがとにかく早い。半年ほどで閉店して、またその後に新しいカフェができる、というパターンが多いように感じます。インテリアが洗練されている人気のお店は、みなさんスマホで写真をたくさん撮っています。


これは韓国ならではの光景かもしれませんが、とにかくすごい枚数の写真を撮ります(笑)。いちいち何でも写真を撮るんです。なぜこんなに写真を撮るのか考えてみたことがあって。撮った写真をSNSにアップして、インスタグラマーのようになりたいのかな?と思っていたんですが、もちろんそういう人もいますけれど、先ほどお話した食事のシェア文化と同じように「シェア」したい、という気持ちが根底にあるのかなと感じました。


日本人と比べて、人と人との距離感がすごく近いんです。朝から夜まで友人や恋人同士でも日本人とは比べものにならないくらいずっと連絡をとっています。「今何している?』「何食べてる?」みたいに。私は他人のインスタグラムをあまり見ないのでわからないのですが、もしかしたらストーリーなども頻繁にアップして「シェア」しているのかもしれません。


そういう文化があるからか、韓国の友人たちは話題の店に詳しく、最新情報をキャッチするのがとても早いんです。さまざまなお店に足を運びましたが、その中でもとくに心を奪われた、居心地がよいお気に入りのカフェを紹介します。

前田さんおすすめのカフェ①1994 SEOUL

1994 SEOUL 韓国

『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

韓国の伝統菓子とお茶をコースでいただけるお店。韓国では今、伝統菓子をモダンに再構築したお菓子が流行っていて、こちらのお菓子も洗練されていて美しい。お菓子は季節によって替わり、お茶もそれに合わせて提供される。

1994 SEOUL  前田エマ ソウル

『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

前田さん:大学でデザインを学んだ店主のミョンジェさんは、『餅に対するイメージを変えたい』という思いを持っているそう。彼から生み出されるお菓子と、アンティークや現代作家の作った器との組み合わせも素敵です。季節を変えて、何度でも通いたいお店。

1994 SEOUL
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前田さんおすすめのカフェ②アルムダウン茶博物館

アルムダウン茶博物館 前田エマ

『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

韓国の伝統茶を楽しめる、お茶がメインのカフェ。韓国の伝統的な家屋である「韓屋」を改築した広々とした店内で、韓国茶や高麗人参をブレンドした健康茶、はちみつで漬け込んだゆず茶など、昔から愛される味に触れられる。紅茶を使ったかき氷がイチオシ。

アルムダウン茶博物館 韓国 ソウル

『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)より 撮影:長田果純

前田さん:自然光が入り込む店内はとても居心地がいい空間。店の一角はギャラリースペースになっていて、店主のお母様が持つ骨董品のコレクションの一部を見ることができます。これからどんなふうに進化していくのかが楽しみなお店です。

アルムダウン茶博物館
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前田さんおすすめのカフェ③MAA.

MAA. カフェ 韓国

行列ができる人気カフェ「オムレス」の姉妹店。季節ごとに変わるアイスクリームがとにかく絶品。ドリンクはお茶だけでなく、アップルシナモンなど、バリエーションが豊富。

前田さん:
独学でスイーツづくりを学んだという店主のご夫婦が生み出すお菓子は、既存の枠にハマらないおおらかさを感じます。友人がソウルに遊びにきた際には必ず足を運び、帰国前にはこの店の味、雰囲気をきちんと記憶しておきたくて3日連続で通いました。

MAA.
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前田エマ『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)

『アニョハセヨ韓国』(三栄書房)発売中

取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子