『COLLAPSED IN SUNBEAMS』Arlo Parks¥2400/Transgressive
作詞/Anais Marinho 作曲/Anais Marinho、Gianluca Buccellati
孤独を感じるあなたに、アーロ・パークスが肩を貸す
Arlo Parks - Hope (Official Video)
孤独感にさいなまれたとき、こんなふうに考えてしまうことはないだろうか。「この気持ちは誰にもわかってもらえない」「もう大人だから、誰にも弱音なんて吐けない」「どこにも居場所なんてない」。そんなときに思い出したいのが、『Hope』のこの一節。
《君は孤独だと思っているけれど 君はひとりじゃないよ 誰もが傷を持っている》
この曲の作者は、21歳のシンガーソング・ライターで詩人のArlo Parks(アーロ・パークス)。サウスロンドン出身で、ナイジェリア、チャド、フランスにルーツを持つ。期待の新人アーティストにスポットライトを当てる、英BBCの『Sound of 2020』や、Apple Musicの『Up Next』(2021)でプッシュアーティストに選ばれたり、GUCCIのショートムービーに主演したりするなど、今、イギリス国内はもちろん世界で注目度が高まっているアーティストだ。
Arlo Parks: Up Next Film Preview | Apple Music
“言葉への愛”や、自身のクリエイティビティを他者の背中を押すために使うことへの決意を語る。
デビューアルバム『Collapsed In Sunbeams』(2021)は、英国の権威ある音楽賞『The BRIT Awards2021』でブレイクスルー・アーティスト賞を受賞。2022年2月に開催予定の第64回グラミー賞では主要4部門中の2部門にノミネートされるなど、世界中で称賛を獲得している。本作はアーロが、「私の思春期とそれを形作った人々を取り巻く一連のヴィネット(ある一瞬を切り取った挿絵)で、個人的なポートレイトなの」と語るとおり、私的かつ普遍的な12の物語が、ポエティックな歌詞と親密さを感じるサウンドで描かれている。楽曲のテーマは、メンタルヘルスや自己受容、セクシュアリティなど。『Green Eyes』では、バイセクシャルであることを公言しているアーロがたどり着いた、性や自分との向き合い方をかい間見られる。
子ども時代は、短編小説の執筆やジャーナルの作成、詩に熱中。アレン・ギンズバーグやジム・モリソンらアメリカの詩人の作品を読んでいたという。また、ピュリツァー作家シルヴィア・プラスの自伝的小説『ベル・ジャー』や村上春樹の『ノルウェイの森』は、アーロの楽曲制作に影響を与えており、「その本での村上の書き方は、私が望む自分の曲の書き方なの。ざらざらしていて、敏感で、人間的なの」と明かしている。(Photo:Alexandra Waespi)
『Hope』は、孤独を感じることを恥じるアーロの友人について書かれている。ピュアで可憐な歌声を持つアーロが、友人、そしてリスナーを自分の肩に抱き寄せ、温かい毛布をかけるかのように歌い語る、《君は孤独だと思っているけれど 君はひとりじゃないよ 誰もが傷を持っている》。楽曲の中でくり返されるこの言葉を聞いていると、「孤独の痛みを感じているのは自分だけではない」という安堵感が広がり、凍っていた心がじわっと溶け出すのを実感する。そして、聴き終わるころには、孤独の底から抜け出していることに気づくはず。