「みんな正直、どうしてる?」「世間的な平均値って?」など、普段、話題に上らず把握しにくい自分自身の体・心・性のこと。この連載では、10代から70代まで1万人を超える女性への大規模アンケート※1から、今を生きる私たちのリアルな声に迫ります。第3回目は、生理トラブルへの根本的対処につながる婦人科・産婦人科の利用、そしてピルなどの低用量ホルモン療法について、実態を調査します!
※1 『Seventeen』『non-no』『MORE』『BAILA』『MAQUIA』『SPUR』『LEE』『Marisol』『eclat』『MyAge/OurAge』の10媒体において、2021年2月にインターネットによるアンケートを実施。
温めたりゆっくり休んだり。生理のトラブルには“体をいたわる”のが主流
95%もの女性が何らかの生理トラブルを抱え、その感じ方や種類はさまざまであることが、「yoi VOICE ー生理のトラブル編ー」にて判明。では生理期間中、そのトラブルに対してどのような対策を打っているのでしょうか?
「体を温める」「ゆっくり休む」「市販の薬を飲む」など、回答の上位はすべて、つらさを感じたときに比較的すぐに取り入れやすい心がけでした。そのほか、漢方やサプリ、ハーブティーを飲んだり、好きな食べ物やアロマの香りで自分を癒やすなど、自分の心と体をいたわることのできる習慣を取り入れているようです。「散歩など軽く体を動かして気分転換をする」という人も。「とにかく無理をしない」という声も多く、何かと生活に支障が出やすい生理期間を、なるべく気分良く過ごそうという工夫がみられます。
一方で、「我慢する」という回答が3割強と多いのは気になるところ。定期的にやってくる痛みやつらさを我慢するのは、ストレスであるだけでなく、痛みの頻度や程度によっては病気が隠れている可能性もあるので注意が必要です。
しかし「病院に行く」や「低用量ピルを飲む」などの回答は少なめ。自身の生理にまつわる症状が深刻なのかどうか判断しづらいということもあって、これらの専門家が関わる対処法にはハードルが高く感じてしまうのかもしれません。実際、婦人科や産婦人科にはどれくらいの人が通っているのでしょうか?
婦人科・産婦人科への通院は、世代の後半に差し掛かる時期にグッと増える!
「かかりつけの婦人科・産婦人科がある」「かかりつけはいないが、定期的にかかっている」「症状が出たときにかかっている」の合計人数が、20代後半および30代後半で顕著に増加。「かかりつけの婦人科・産婦人科がある」「かかりつけはいないが、定期的にかかっている」の合計人数は特に30代後半で伸びています。
20代後半になると妊娠や出産をふくめたライフステージの変化が多くなり、さらに30代後半では40代を見据えて自身の体について考える機会が増えることも一因かもしれません。それでも全年代を通してみると3割強もの人が、20代前半に至っては半数以上の人が婦人科・産婦人科に「かかったことがない」と回答。ハードルを感じやすい、その理由は何なのでしょうか?
婦人科・産婦人科に対する特有の不安感。定期検診がブレイクスルーに?
婦人科・産婦人科にかかったことがない人に、その理由や婦人科・産婦人科へのイメージを聞いてみると、3人中1人の割合で「自分にはまだ必要がない」や「特に問題がないので、行こうと思ったことがない」と回答。その一方で、「とくに異常ではなかった場合に申し訳なくて、相談だけでは行きづらい」や「どの程度なら病院に行くべきか、基準がわからない」「生理トラブルごときでかかっていいのかわからない」「我慢できないほどの症状でもないので行きあぐねている」など、行きたい気持ちはあれど迷っている人も多数。
また、「予約が取りにくくて行く気がうせる」「混んでいて時間の余裕が必要」などの通いにくいイメージもハードルに。「生理痛があっても仕事を休むほどではないと思うと、なかなか病院に行く時間が取れない」という消極的な気持ちそのものが、機会損失につながっていそうです。
さらに、婦人科に関して未経験であったり診察内容を知らないがゆえに「いい病院の見極め方がわからない」というのも、かかりつけ医を選ぶうえでネックとなっているようです。「何をされるのかわからず、行くのが怖い」「デリケートなところを人に見られるのが恥ずかしい」などの心理的なハードルや、「入るところを人に見られたくない」など周りの目が気になるという声、「デリケートな問題だからこそ、嫌な思いをしたくない」といった意見も根強く、病院のほかの科とは異なる拒絶感があることがうかがえます。
逆に、婦人科・産婦人科にかかったことがある人に調査してみると、通院理由は生理トラブルと定期検診がそれぞれ2割強。ついで婦人科系疾患の診療、妊娠・出産、ピルの処方、更年期障害対策といった理由が続きました。また、定期検診がきっかけで、かかりつけ医が見つかる場合も。婦人科系疾患の早期発見にもつながるので、20歳以上で対象となる子宮頸がん検診などは積極的に利用したいところです。
そんな婦人科・産婦人科で手に入れることのできる低用量ピル。生理トラブルの対処としては6.6%の人のみが使用していることが判明しましたが、そのほか、どのような目的で使われているのでしょうか?
低用量ピルの利用目的は、半数以上が生理にまつわる理由だった!
低用量ピルを現在使っている、または使用したことがある人は、全体の25%。4人に1人が使用経験あり。その使用目的はさまざまあるものの、生理にまつわる目的が半数を超えました。月経困難症の治療や生理日コントロールのほか、PMS治療や生理周期の安定化を図るためといった目的も。「生理初日は特に体がしんどく、仕事を休みたくなるくらいに。レディースクリニックに行ったら『そんな状態まで我慢しなくていい。鎮痛剤や低用量ピルなどで改善できるので、我慢せずつらくなる前に頼って』と言われた」など、生理トラブルの改善に役立った経験談が寄せられました。避妊や肌荒れ改善のほか、婦人科系疾患や更年期障害の治療のためなど、目的に合わせてホルモン治療にも使用されているようです。
その一方で、低用量ピルの利用に消極的な声も。「副作用が怖い」「飲むのを忘れそう」「血栓リスクが怖い」「ほかの薬との飲み合わせが気になる」「飲み続けるには費用が高い」など。そういった不安要素も、実際に医師に相談することで理解したり解消することができるかもしれません。
低用量ピルをはじめ、現状の生理のトラブルに対してよりよい選択肢があるのかどうか。それを見極めるためにも、まずは検診などの機会を利用して、婦人科・産婦人科の門をたたいてみてください。専門機関に頼ることで自分の体の実情を正確に知ることができれば、漠然とした不安感や恐怖心から解放され、新しい選択肢との出合いにつながるはずです。
次回は、生理と仕事について。1万人の女性たちはどのようなトラブルを抱え、向き合っているのか、その実態を調査します。
イラスト/pum 取材・文/浪花真理子 編集/高戸映里奈(yoi)