世界の生理事情をのぞいてみると、より広い視野で自分の体と向き合えるのでは……? そう考えたyoiは、世界5都市に暮らす女性たちに、“半径10mの生理事情”をリサーチ。今回は、タンザニアで生理用品の製造・販売を行う「LUNA sanitary products」を経営する、菊池モアナさんが登場。
※今回の記事は菊池さんへの取材をまとめたもので、タンザニアのすべての生理事情を代表するものではありません。
Borderless Tanzania Limited CEO
1995年生まれ、神奈川県出身。2021年に「Borderless Tanzania Limited」を設立。若年妊娠で退学したタンザニアのシングルマザーが働ける生理用品の製造・販売を行う事業「LUNA sanitary products」を立ち上げる。タンザニアMIXの男の子を育てる一児の母でもある。
タンザニアで深刻な「生理の貧困」。紙ナプキンが買えず、学校をあきらめてしまう生徒も
Q.菊池さんが目の当たりにした、タンザニアの「生理」を取り巻く現状を教えてください。
タンザニアは人口の約45%の人が貧困ラインと呼ばれる1日280円以下で生活しており、約200円する生理用ナプキン(1個8枚入り)を毎月購入できない女性たちが多く存在しています。こうした女性たちは、端切れをナプキンとして使用しているのですが、カビや雑菌が繁殖し、感染症の原因になっています。
学生の中には、使用後の布ナプキンを入れるためのビニールがなくてノートの切れ端で包んで持ち運ぶ子も。匂いや経血漏れの不安から、生理期間中は学校に行かないという学生も少なくなく、その結果、授業についていけなくなり退学してしまう事例もあります。
衣類の切れ端やアフリカの伝統的なカンガ布などで作られた布ナプキンを見せてくれた、公立学校に通う女子学生。「宗教的(キリスト教徒とイスラム教徒がそれぞれ国民の約40%ずつを占め、残りの約20%は地域の土着信仰)な理由などから、生理がタブー視されている地域もあります。ある貧困層の村では、布ナプキンが男性の目に触れてはいけないため、洗濯後に外に干すことができず、マットレスの下に隠すように干している子もいます」(菊池さん)
Q.タンザニアでは、どんな生理用品が売られていますか?
貧困層は布ナプキンですが、中所得者層以上は紙ナプキンを使用していて、日用品などを売る「キオスク」と呼ばれる商店で購入することができます。最近は、『HQ』をはじめとした、中国でOEMを行なっているブランドのアイテムが売り場を占めていますね。ほかにも、海外資本でタンザニアでパッケージングのみを行っている『Softcare』も人気です。タンポンは、都市部にあるスーパーにしか売っておらず、10本1500円ほどするので、高所得者かタンザニアに暮らす外国人しか使用していないイメージです。
月経カップや吸水ショーツは、支援で配られたことがありますが、貧困層には使い勝手が悪い。というのも月経カップは使用後に煮沸消毒が必要。貧困家庭では、消毒に必要な鍋や薪、さらには清潔な水の準備が難しいためです。
Q.普段、どのように生理と向き合っていますか?
日本で暮らしてたときは、月経カップ、吸水ショーツなど、生理用品はひと通り持っており使用していたのですが、タンザニアは断水することも多いため、衛生面の観点から紙ナプキンを使っています。生理痛がひどいタイプではないので、鎮痛剤は飲みませんが、そのときの気分に合わせて、日本から持参したアメリカの「ヨギティー」のハーブティーを飲んでいます。
タンザニアでは、1錠25円程度で生理痛を和らげる鎮痛剤を購入することができますが、貧困地域に暮らす女性は買うことができず、ただひたすら我慢して痛みが引くのを待つ人も多いです。
また、タンザニア人の中でも特に田舎に暮らす人は、ケミカルなものは体によくないという考えを持っており、医薬品ではなく自然薬を選択する人が大半。自然薬はパウダー状の場合が多く、水に溶かして飲みます。私も一度、女性の生殖器官にいいとされる自然薬を飲んだことがありますが、インドのチャイに味が似ていました。
まだまだあります! 生理にまつわるエトセトラ
中学生になると始まるタンザニアの性教育
タンザニアの一部地域では、初潮が来ていない子に生理について教えることがよくないとされています。そのため、性教育は中学生になってから始まります。しかもその授業内容は、生理学的観点からの説明に限られていて、生理が来たときの対処法については説明がないんです。そのため、私が事業の一環で行っている公立学校に通う学生への性教育では、生理用品の使い方の解説から始めるようにしています。
「LUNA sanitary products」のサポーターになって、タンザニアの女性たちにナプキンを届けよう
10代の女の子の3人に1人が、レイプやグルーミングなどにより望まぬ妊娠をし、年間6,000人以上が退学をしているタンザニア。菊池さんは、そうした女の子たちの働ける場所を作るために、生理用品の製造・販売を行う事業「LUNA sanitary products(ルナ サニタリー プロダクツ)」をローンチ。ナプキンは、1パック8枚入りで、約120円。キオスクや薬局で販売しており、1パック売れるごとに、タンザニアの小中学生にナプキンを寄付している。「LUNA sanitary products」では、サポーターを随時募集中。詳細は、下記のホームページをチェック!
インドから購入した機械で、一枚一枚手作りしている菊池さんの会社のナプキン「UHURU sanitary pads」。
構成・取材・文/海渡理恵