女性の多くは「生理痛が重い」「生理前になるとイライラが抑えられない」「つわりがつらい」など、女性特有の心身の不調を抱えています。その反面、「家族やパートナー、会社がつらさを理解してくれない」「なぜ会社に必要な制度がないんだろう」と困る局面も少なくないのでは?
こうした実情を踏まえ、女性特有の健康課題に関する調査を「ネクイノ」が実施。自社のオンラインピル処方サービス「スマルナ」を利用するユーザー320名を対象に、「東京都議会会派 無所属東京みらい」と共同で行いました。パートナーや職場、そして行政に、今、女性たちが望むこととは? その調査データや回答者の意見に、思わずうなずいてしまう人も多いはず!
8割の女性が「ピル」に関心あり
「生理や妊娠・出産、更年期などについて関心のあるトピック」を尋ねた問いでは、「ピル」と回答した人が最多の80%。生理痛の緩和だけでなく、生理コントロールや避妊ができる低用量ピルには、世代を超えて多くの人が興味を持っていることがわかります。
次に関心度が高いのが「生理・生理用品(62.8%)」。吸水ショーツや月経カップなど、最近のフェムテックブームで“第3の生理用品”が話題になっていることも少なからず影響しているようです。また、グラフには反映されていないものの「性感染症(37.2%)」「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスアンドライツ(18.8%)」「更年期障害(18.4%)」といった回答もありました。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスアンドライツとは、英語のSexual and Reproductive Health and Rightsの頭文字を取って、「SRHR」とも呼ばれます。日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、すべての人の性と生き方にかかわる重要なキーワード。今回の調査でも2割弱の人が興味ありと答えていますが、LGBTQや不妊治療に関する話題が活発になるにつれ、これからますます耳にする機会が増えていくかもしれません。
7割以上の女性が「生理やPMS」について配偶者やパートナーに知ってほしいと思っている
「配偶者やパートナーなど、男性に知ってもらいたいと思う女性特有の健康課題」については、多くの女性が「生理やPMSなど」と回答。人によっては、ほぼ毎月のように腹痛や頭痛、冷え、便秘などの不調や、イライラや気持ちの沈みなどのメンタル面の問題を抱えているのが、生理期間やPMS期。一緒に生活する配偶者やパートナー、あるいは同性であっても症状が軽い人に、少しでもそのつらさを理解してほしいというのは切実な願いです。
一方で、将来を見据えるうえでははずせない「妊娠適齢期(7.5%)」や「不妊治療・不育症(5.9%)」「更年期障害(5.0%)」「子宮頸がんや子宮体がん(3.1%)」といった課題も回答には挙がっています。子どもを持つか持たないか、いつ産むかといったことは、女性だけが抱える問題ではありません。また、妊娠・不妊以外にも、婦人科系の病気や更年期不調など、女性には乗り越えていかなければならない課題が多くあることは、身近な人にも知っていてほしいですね。
フェムテック商品やサービスに最も期待することは「生理痛・PMSなどの解決方法」
近年急成長している「フェムテック」のアイテムやサービスについて、「最も期待することは」という問いに対しては、毎月悩んでいる女性の多い「生理痛・PMSなどの解決方法」を求める人が最多に。次いで多かったのはフェムテック・フェムケア製品が豊富な「デリケートゾーンのケア(19.4%)」「経血処理の方法(14.4%)」でした。
ほかにも、「女性特有の悩みに関する相談先(10.3%)」「更年期や体の変化に対する解決方法(9.1%)」「不妊治療に関する情報収集(2.8%)」という回答が。こうした結果からは、自分の体や健康の悩みを一人で抱え、頼れる相談先や情報を欲している人が多いことがうかがえます。
職場で力を入れて取り組んでほしいこと1位は「生理休暇の取得しやすさ」
働いている女性に「職場で力を入れて取り組んでほしいこと」を尋ねたところ、回答者の半数以上が「生理休暇の取得のしやすさ」を求めており、生理中不調のために仕事をするのがつらいと感じている方が多いことがわかりました。3割近くに上った「女性特有の健康課題についての男性を含む正しい理解の啓発」のほか、「不妊治療・不育症と仕事の両立への支援」と回答している方も多く、制度面だけでなく、男女を問わず職場にいるあらゆる世代に、女性の体についての“理解”を浸透させるというニーズの高まりを改めて感じます。
また一方では「職場内の生理用品の設置(27.8%)」という回答も多く、生理用品無償化のニーズも高いこともわかりました。
回答者の意見として、
・女性の多い職場で働いており、生理への理解は深いほうだとは思いますが、生理休暇などはまだまだ取りづらい印象です。
・生理中のめまいなどではなかなか休みが取れないため、もっと職場内での生理や妊娠中の女性への理解が浸透してほしいです。
・私の職場は男女共用のトイレのため、生理用品を捨てるのも気が引けます。
といった声が寄せられました。生理痛やPMSなどの女性の健康課題への理解が進むことで、生理休暇を取得しやすくなったり、婦人科検診の受診が促進されるなど、女性の働く環境が少しずつ改善されることに期待したいですね。
「ピルに関する啓発やアクセス改善」に自治体が注力すべき!
そして、女性特有の健康課題について、「東京都や区市町村などがより力を入れるべきことは?」という問いに、約半数の方が「緊急用ピルを薬局などでも買えるようになると助かります」「ピル服用の人体・健康への影響などについて、メリット・デメリットの情報をわかりやすく一元的に確認できるサイトがあればいいです。誰もが簡単に知ることができるような環境を望みます」など、ピルに関する啓発やアクセス改善を求めています。
一方、「婦人科領域の検診・検査をオプションではなく定期検診に盛り込む(45.6%)」も回答の上位に。オプションだと費用がかさむ懸念から、検査を見送る人も多いよう。自治体の補助があり、定期的に検診を受けられれば、病気の早期発見や不妊治療の早期開始につながるのではないでしょうか。
ほかにも、「早期からの社会全体に対する性教育」や、「婦人科系かかりつけ医につながる取り組み」などを求める回答が多く寄せられました。医療システムへの要望もあり、例えば
・オンライン診察であれば、時間も短縮できますし、プライバシーも守られるので、これからよりレディースクリニックや心療内科のオンライン相談、診察を進めてほしいです。
・ピルも妊婦検診も高すぎると思っており、経済的理由から受診できない女性も多くいると思うので、そこの支援をもう少し手厚くしてほしいです。
といった意見が。
約7割の女性が、東京都の女性特有の健康課題への取り組みを知らない
現在、東京都では、思いがけない妊娠などについて電話やメールで相談できる「妊娠相談ほっとライン」や「不妊治療の経済支援」を行なっています。しかし、こうした行政の取り組みを知らない女性が約7割もいたことが判明!
ほかの取り組みに関しても、
「不妊治療・不育症に関する休暇・相談体制を整備した場合の企業への助成金(5.6%)」
「女性の健康についてわかりやすく紹介している #女子けんこう部(2.8%)」
「不育症への経済的支援(2.5%)」
「医療機関への受診や区市町村への相談が難しい方を対象にした 産科受診同行支援(1.3%)」
と、いずれもあまり認知度は高くないという結果に。
このような東京都や行政の取り組みについては、アンケート回答者から
・東京都の取り組みを初めて知った。一般向けにもPRが必要だと思う。
・東京都でもたくさんの支援があることを知ることができましたので、これが全国にももっと広まってほしいと思いました。
などの意見が寄せられました。
生理、PMS、不妊、妊娠、更年期障害、婦人科系疾患といった心身の健康に関する不調や悩みは、女性なら誰にでも、一生涯にわたって起きうる課題です。一方で、妊娠出産や不妊など、パートナーとシェアしていくべき問題も、身体的・経済的負担は女性の側により大きくのしかかってきます。
東京都の議会会派との共同で行われた今回の調査結果を踏まえて、東京都はもちろん、全国の行政機関が具体的な政策に展開していくことに期待したいもの。また、既存の行政サービスについては、私たちも積極的に知り、有効活用する必要がありそうです。制度が変わり、多くの人の意識が変わることで、女性がもっと働きやすく、過ごしやすい社会環境がきっとつくれるはずです。
■女性の健康課題に関する調査概要
調査期間:2021年12月9日〜2021年12月16日
調査対象:2021年6月〜11月にピルの配送先を東京都としたスマルナユーザー 320名
調査方法:インターネット調査(スマルナメールマガジンにて回答者を募集)
引用元:「ネクイノが東京都議会会派と女性特有の健康課題に関する調査を実施」
(株式会社ネクイノ プレスリリース 2022年1月27日)
構成・文/宮平なつき Photo by Tero Vesalainen / iStock / Getty Images Plus