皆さんは、吸水ブラというブラジャーの存在を知っていますか? 妊娠や出産、そして母乳育児を経験した人なら「授乳ブラなら知っている」「使ったことがある」という人が多いかもしれません。一方で、吸水ブラは近年注目されてきてはいるものの、まだ一般的な認知度が高くはないのが現状です。そもそも授乳の経験がないと、授乳ブラや吸水ブラの必要性について知らないことも。そこで本記事では、各種ブラジャーの中でも吸水ブラはどういった機能を持つものか、なぜ必要なのか、どんな種類があるのかなどを、開発者さんの解説や経産婦さんのリアルな声とともにご紹介します。
「吸水ブラ」はなぜ必要? 授乳ブラや普通のブラジャーとの違いは?
●授乳ブラとは?
授乳の際に手間取らないよう、ブラジャーをはずさなくてもバストを出しやすい工夫が施されたブラジャーのこと。片方のカップをずらすだけで授乳できるクロスオープンタイプや、谷間部分にボタンがなどあるフロントオープンタイプ、ストラップに付いているフックでカップが開閉できるストラップオープンタイプなど多種多様なデザインがそろっています。さらに、授乳期はバストのサイズも変動しやすいため、ノンワイヤーで締めつけが少なく、ゆったりとしたものが多いのも特徴。普通のブラジャーと同じく背中のホックでとめるものもあれば、上からかぶるブラレットタイプなど選択肢がとても多いアイテムです。
●母乳パッドとは?
母乳が多く出る人の悩みとして、授乳直後に母乳が出つづけてしまったり、授乳以外のときも母乳が出て服にも染み出てしまうことが。そのような悩みに対して作られたのが、ブラジャーのカップ内側部分に装着する母乳パッド。生理用の紙ナプキンに似た素材で、裏面に粘着テープが付いた使い捨てのものが主流。洗って繰り返し使える布タイプや、オーガニックコットンを使用した肌あたりのいい素材のものも登場しています。
●吸水ブラとは? 授乳ブラの機能性+母乳パッドの吸水力でさらに進化したブラジャー
吸水ブラとは、ずばり授乳ブラに吸水機能をプラスしたもの。カップの内側部分が吸水素材になっていて、母乳が漏れるのを防いでくれます。母乳パッドのように付け替える手間や買い換える費用が不要になるのでコストパフォーマンスがよく、普通のブラジャー同様に洗濯機で洗えるのでお手入れも簡単。育児の負担を減らすフェムテックアイテムとして注目を集めています。吸水面の素材には、出産後に敏感になりやすい肌に優しい素材が採用されるなどの工夫も。
日本では流通しはじめたばかりの吸水ブラはまだ認知度が低く、必要とする人に十分に情報が届いていないのも事実。しかし、近年のフェムテック市場や吸水ショーツの盛り上がりによって吸水ブラの注目が少しずつ高まり、取り扱うブランドも少しずつ増えているそう。そこで、吸水ショーツとともに吸水ブラレットを発売し、そのおしゃれな世界観や機能性の高さが大人気のブランド『Rinē』を展開する株式会社Neithの代表取締役・信近エリさんにお話を伺いました。
「吸水ブラのいちばんの利点は、授乳期の女性の不安や負担を減らせることだと思います。もともと『Rinē』は吸水ショーツの開発から着手したのですが、さまざまな女性の体の悩みをリサーチしていくうちに、授乳期の下着悩みが明らかになりました。胸が張るのでブラジャーの締めつけが不快だったり、肌が敏感になるのでカップ部分とバストのこすれで肌あれしてしまったり。なかでも、母乳が服に染み出てしまう悩みには決定的な選択肢がないと感じている声が多く寄せられました。
ただでさえ産まれたばかりのお子さんを育てる大変な時期だからこそ、少しでも快適に過ごせたほうがいいですよね。下着1枚で悩みを解決できて繰り返し使える吸水ブラなら、母乳パッドを交換する手間も持ち歩く荷物も減らせて、さらには使い捨ての母乳パッドのごみも減らせる。実際に使う人にだけでなく、環境にとってもいいことばかりなんです」(信近エリさん)
『株式会社Neith(ネイト)』代表取締役CEO
シンガーソングライターとしてアーティスト活動をしながら、飲食店のディレクションや運営などビジネスの実績を積む。多忙を極める自身の体や心と向き合うなかで、「こんな製品があったらいいのに」という発想と徹底したマーケティングリサーチのもと、2020年に『Neith(ネイト)を立ち上げ、2021年にフェムテックブランド『Rinē(リネ)』をローンチ。ユーザーの声を真摯に受けとめ、商品の企画や開発に反映させている。
母乳パッドもあるけれど...「吸水ブラ」を求めるリアルな声
母乳漏れの対策アイテムとしてすでに認知度が高い母乳パッドがある一方で、吸水ブラが求められる理由とは? 経産婦さんが授乳期に抱いていたリアルな不安や不満を聞いてみました。
●「母乳パッドを愛用していましたが、ごわつきが気になったり、ブラの中が蒸れてかゆくなったりしてストレスでした」(Sさん・35歳)
●「衛生面が心配で授乳のたびに母乳パッドを変えていたら、1日に16枚も消費! 交換も面倒だし、ごみも増える…」(Nさん・32歳)
●「パッドが母乳を吸収すると、その重みでずれる。結果、ブラだけでなく服にまで漏れて、びしょびしょになったことも」(Oさん・38歳)
母乳パッドを愛用する一方で、蒸れや擦れなどによる不快感や失敗談も。吸水ブラについて聞いてみると、存在自体を知らない人も多く、「もっと早く吸水ブラに出合いたかった」「授乳期に使ってみたかった」という声もありました。「今悩んでいる友達にプレゼントしたい」など、ギフトの選択肢のひとつとしても需要が高まりそうです。
「吸水ブラ」のおすすめブランド4選をピックアップ!
では、実際に吸水ブラにはどんなデザインや機能の選択肢があるのでしょう? yoi編集部おすすめの4ブランドをピックアップし、それぞれのブランドのこだわりポイントやデザインの違いをご紹介します。
Rinē(リネ)
Belly Bandit(ベリー バンディット)
Pigeon(ピジョン)
Rosemadame(ローズマダム)
体の悩みは千差万別。母乳パッドや吸水ブラが必要ない人もいるし、授乳期という限られた期間の悩みではあるけれど、多くの人が抱えている母乳漏れのストレスを解決する吸水ブラの存在が広く認知されることが、「私」そして「あなた」の体に向き合う新たな一歩になるはずです。
製品撮影/新谷真衣 illustration by Igor Levin/istock/Getty Image plus 取材・文/堀越美香子 企画・編集/高戸映里奈(yoi)