フェムケア意識の普及に伴い、昨今、より関心が高まっている「腟トレ」。腟まわりの筋肉を鍛えることで、健康や美容に、さまざまなメリットがあるといわれています。しかし、言葉だけは知っていても実際には試したことがない方も多いのではないでしょうか。そこで、理学療法士の田舎中真由美先生に、腟トレで期待できる効果やおすすめの頻度などの基礎情報から、今日から取り入れられるストレッチ&トレーニングまで伺いました。

田舎中 真由美

理学療法士

田舎中 真由美

臨床経験20年以上、15,000人以上も救ってきた理学療法士。専門は、腰や骨盤まわりの痛み、産後の骨盤まわりのゆるみや痛み、尿漏れの改善。産婦人科医院でも運動指導をしている。著書『胸ひらきで調子のいい自分がずっと続く』(主婦の友社)が好評発売中。

意外と知らない腟トレの基礎知識

「腟トレ」するとどんないいことがある? 骨盤底がゆるむ原因や簡単トレーニング法を、理学療法士が解説!_1

基礎知識① そもそも「腟トレ」とは? その効果は?

田舎中先生:「腟トレ」と聞くと、腟そのものを鍛えるトレーニングをイメージする人も多いと思いますが、腟自体は鍛えられる臓器ではありません。いわゆる腟トレとは、腟まわりの骨盤底にある、子宮や膀胱を支える筋肉=骨盤底筋のトレーニングのことを指します。この筋肉を鍛えることで、

・尿失禁を予防・改善する
・腰痛・骨盤周りの痛みを改善する

・姿勢をよくする
・性交痛のトラブル解消
・骨盤臓器脱を予防する


などの効果が期待できます。

腟トレによって、筋肉の収縮や弛緩が自分で調整できるようになり、腟まわりの血行がよくなります。また、硬くなってしまった股関節まわりの筋肉をほぐすことで、性交痛が解消するといった効果を実感できるケースもあります。


基礎知識② “腟が緩む”原因は?

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田舎中先生:「尿漏れが気になる」「内臓の下垂感がある」「腟が開いている感じがする」、こんな悩みがある方は、骨盤底筋が緩んでいる可能性も。おもな原因としては、以下の3つが考えられます。

1. 運動不足
運動不足により、骨盤底筋の筋力が低下し血流が悪くなると、筋肉の収縮や弛緩がうまくできなくなり、腟の緩みにつながります。リモートワークなどで長時間同じ姿勢で座っている人や猫背の方も、同様のリスクがあります。

2. 妊娠や出産
出産を経験すると、骨盤まわりの筋肉が一時的に伸びた状態になります。個人差はありますが、産後に尿漏れや腟の緩み、内臓の下垂感を感じる方が多いのは、このためです。出産後に行うだけでなく、出産前にも骨盤底筋トレーニングをすることで、この緩みが穏やかになるといわれています。

3. 便秘
便秘の方で、いきんで排便することが習慣になっている方は、骨盤底筋にダメージがかかり、緩んでしまっているケースがあります。特に、排便時に体を後ろに反らせて腹圧をかける習慣がある方は、そのリスクが高まる可能性があるため、できるだけ上体を前に倒して圧をかけるようにしてください。


基礎知識③ 腟トレを始める年齢やタイミング

田舎中先生:尿漏れなど、実際に症状が気になり出してから腟トレに興味を持つ方が多いですが、トレーニングを始めるのは、女性であれば早ければ早いほどいいんです。最近では、テレワークなどの普及により、骨盤底筋の緩みに悩む若い方も増えていますし、なかには小学生や中学生でも、不良姿勢により骨盤底筋が上手く機能できないため、腹圧コントロールがうまくいかず「体育の授業で走ると尿漏れをしてしまい、困っている」という方も。

年齢に関係なく、骨盤底まわりの筋肉をうまく使えていない場合は、トレーニングで筋肉をコントロールする練習をすることで症状が改善していきます。まだ悩んでいない方でも、姿勢の改善や、緩みの予防につながりますよ。


トレーニングの効果を高める! 骨盤底筋ストレッチ

田舎中先生:グッズなどを使ったトレーニングの効果を高めるには、事前にストレッチをしておくのがおすすめです。筋肉が硬くなっていると、そもそもトレーニングをしようとしても「動いている感覚がわからない」ということも。部分的に硬くなっている骨盤底筋を柔らかくすることで、トレーニングの効果を感じやすくなります。急にグッズを使って腟トレをすると痛みが出てしまう場合もあるので、コリをほぐして血流をよくしてから始めてみましょう。続けていくと腰痛・骨盤まわりの疼痛や会陰の痛み、性交疼痛が解消される可能性があります。

1. キャットドッグ

ヨガでも姿勢改善としてよく取り入れられているポーズ。

【方法】
①四つん這いになり、手を肩幅と同じくらい開く
②猫のように背中を丸くする
③犬のように背中を大きく反らす

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これを10回ほど繰り返します。骨盤底筋の伸び縮みを意識するのがポイント!


2. ハッピーベイビー

赤ちゃんが仰向けになっているような体勢で、骨盤底筋をほぐすストレッチ。

【方法】
①仰向けになり、両手で足首を持ち、腟口のあたりを上に上げる
②膝を開いて、かかとを天井に向け、腹式呼吸を10回ほど繰り返す

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お腹の動きをしっかり意識しましょう。

グッズなしで今すぐできる! 骨盤底筋トレーニング

田舎中先生:次に、ストレッチのあとに取り入れると効果的な、簡単にできるトレーニングを紹介します。グッズなどがなくても気軽に始めることができるので、尿漏れや臓器の下垂感がある方は取り入れてみてください。

恥骨に向かって腟を引っ張り上げる

【方法】
①恥骨に手を当て、そこに向かって腟を引っ張り上げるように動かす。素早く10回×3セット行う
②5〜10秒、力を入れたまま保つ。これを10回✕3セット行う。

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①、②のトレーニングを、各々30回以上を目安に行います。骨盤底筋がしっかり使えているか確認したいときは、椅子に座って尾骨を触ってみて。腟を引き上げた際、尾骨が前方にピクッと動けば、しっかり動かせている証拠。

田舎中先生:ストレッチのあとにこのトレーニングを6~8週間続けることで、尿漏れに効果を感じはじめる人が多いです。ぜひ習慣づけて、一生続けていただきたいですね。


腟トレの基礎知識がわかったところで、続く後編では、“yoi腟トレお試し隊”が実際に腟トレグッズをお試し! 体験した使用感や感想を率直に語り合います。記事公開は2月1日(水)。ぜひこちらもチェックしてみて!

取材・文/毒島サチコ イラスト/YOUI 企画・編集/種谷美波(yoi)