国内外のフェムテックプロダクトを一堂に集め、触れたり学んだりできる『Femtech Fes! 』。コロナ禍のオンライン開催を経て、この2月には2022年10月以来はじめてリアルで開催されることになりました。これまでの変遷と、2024年の見どころは?『fermata』COOの近藤さんに伺います。
fermata COO
神戸大学卒。ピクシブ株式会社で新規事業立ち上げ、企画営業、サービスディレクションを担当後、2015年から株式会社ディー・エヌ・エーへ。動画配信サービス「SHOWROOM」チームにDeNAグループからのスピンオフを経て約4年半在籍。マネージャーとしてビジネスおよびプロダクト開発を担当した。2019年12月、fermataに参画、COOをつとめる。
2024年の『Femtech Fes!』は量より質を重視
Femtech Fes!の盛り上がり
近藤さん「2019年の創業当時、『海外にはフェムテックの面白いプロダクトがこんなにある』ということをみんなに知らせたい!』という無邪気な衝動がすべてで。せっかくなら、動画ではなく実際にものを集めて触ってもらおうと、第1回目からリアルでイベントを開催しました。100枚近く用意したチケットは即完売。
来場した皆さんは、夢中で物を触ったり、悩みを打ち明けたりディスカッションしたりで想像以上に盛り上がりました。コロナ前だったのでドリンクやフードも用意したのですが、手をつけずに夢中で話している人が多かったのが印象的で。みんなこういうものを求めているんだ!と実感しました」
——4回目の開催となる今回は、大幅に方向転換し、これまでとは違う切り口で準備を進めているそうですね。
近藤さん「前回までは、フェムテックが多彩だということを社会に知らせたい思いが強かったんです。展示品の数も、第一回は数十個だったのが、回を重ねるごとに100個、200個と増えていき、『こんなにたくさんあるから、みんな関心を持ってね』という気持ちでした。でも、市場が盛り上がり、プロダクトが増える中で、厳選した信頼できるものや情報だけを知りたいというニーズの高まりを感じるようになりました。
2024年2月9日〜11日に開催される『Femtech Fes!』のキュレーション展示では、約1000種の候補から、100個ほどに厳選。数をアピールするよりも、選りすぐりの精鋭だけを集めてわかりやすい切り口で紹介する予定です。医療や法律の専門家にも展示内容の監修を依頼しているほか、協賛企業の出展内容にも、薬機法などをはじめとした独自の審査を導入。最後まで突き詰めて考え、準備しています」
2024年のトレンドは、捨てられてきた経血やおりものを活用するフェムテック
——さまざまなプロダクトやサービスが集まる中で、特に注目しているトレンドはありますか?
近藤さん「月経カップで採取した経血をラボに送って婦人科系の病気を診断したり、おりものから妊娠しやすさを判定したり、これまで捨てられてきた経血やおりものを活用するテックに注目が集まっていて、日本の大企業もこの流れに続こうとしています。『fermata』も、東大との臨床研究や厚労省とのやり取りを重ねて、おりものの状態から月経周期を予測するデバイス『Kegg』の日本ローンチに向けて動いています」
——一方で、注目度とは関係なく、ひとつひとつのフェムテックの背景に切実なニーズがあることも知ってほしいという思いがあるとか?
近藤さん「例えば、私は生理痛があれば即鎮痛剤を飲むタイプなので、内心『生理痛を緩和するデバイスって本当にいるのかな?』って思っていたんです。でも、身近に薬をなるべく飲みたくないという人もいて、そういう人にとっては心から欲しいものだったりする。署名までして『欲しい!』と熱望したものが、薬飲めば済むでしょって一蹴されたら傷つきますよね。
ほかにも、無意識に異性間の性交を前提に決め付けると、セクシャルマイノリティのニーズを軽視することになったりも。さまざまなプロダクトに触れることで、自分にとってはいらないものが、誰かにとっては熱望するものだという違いを想像してもらうきっかけになったらうれしいです」
「自分では社会を変えられない」という無力感を「自己効力感」に変える
——『Femtech Fes!』の会を重ねると「イベントでワクワクしたり盛り上がっても、現実に戻ると何も変えられなくて落ち込む」「気持ちと裏腹に、自分では何もできずモヤモヤする」などの感想が寄せられるようになったそうですね。
近藤さん「自分の声では社会を変えられないという無力感を抱えている人が多いなと感じます。だからこそ、フェスで盛り上がって終わりじゃなく、現実とのギャップを埋めるような窓口になれたらなと考えています。
『fermata』では、事業に伴走している企業と消費者の方との座談会やインタビューを頻繁に行っています。条件にあえば、どなたでも応募していただくことができるのですが、実際に参加した方は、みんな晴れ晴れとした顔をして帰っていくんです。自分の声を伝えることで、企業を通して社会を変えられるという希望が持てるそう。自分の声には確かに意味があるという自己効力感を味わってほしい。一人で頑張れない時は、仲間や企業の力も借りて、みんなで変えればいい。今後もそういう場を提供していくので、『fermata』のSNSをチェックしてみてください」
『Femtech Fes!』イベント詳細
■『Femtech Fes!』概要
開催期間:2024年2月9日(金)〜11日(日)
開催場所:六本木アカデミーヒルズ
入場料:無料
公式Webサイト
※チケット申込受付開始の通知を受け取りたい方は、Femtech Fes! by fermata(Peatix)をフォローしてお待ちください。
取材・文/長田杏奈 構成/種谷美波(yoi)