例年よりも夏の暑さが増しているように感じられるほど、厳しい猛暑が続いています。少し外に出ただけで汗だくになるこのシーズンは、あせもや汗あれなど、夏特有の肌トラブルにもご用心。コロナ禍での3年目となるこの夏は、マスク着用による「マスク汗あれ」の心配もあります。よしき皮膚科クリニック銀座院長の吉木伸子先生が、汗あれやマスク汗あれを防ぐ方法について教えてくれました。

汗をかく女性画像

吉木伸子先生

吉木皮膚科クリニック銀座院長

吉木伸子先生

レーザー、ケミカルピーリングなどの美容皮膚科学と漢方を取り入れた皮膚科治療を行うかたわら、TV、書籍、雑誌などを通じて正しいスキンケア方法を発信。皮膚科医ならではの科学的な見地に基づいたアドバイスには多くのファンがいる。

かゆみのある「汗あれ」は大人に多い!

汗による肌のトラブルといえば「あせも」。汗を出す管が詰まった状態になって肌にブツブツが出る症状で、子どもに多く、かゆみはほとんどありません。それに対して、大人に多く、かゆみを伴うのが汗あれです。

汗あれは汗の成分が肌に刺激を与えることで起こります。乾燥や間違ったスキンケアによって皮膚のバリア機能が落ちているところに汗をかくと、自分の汗が刺激になって、かゆみ、痛み、赤みを生じます。襟元や下着があたる場所など衣類がこすれる場所、汗をかきやすい場所(首、髪の生え際、ひじの内側、膝の内側、お腹のベルト回り、背中、太ももの後ろなど)は、皮膚のバリア機能が落ちやすく、汗あれになりやすいんだそう。 前日との気温差や一日の中での気温差が激しい日も、急にかいた汗が刺激になりやすいので注意が必要です。

あせもと汗あれの違い

夏のマスクはムレやすく、汗あれの原因に…

マスクの中は湿気が多いので肌が保湿されていると思いがちですが、そうではありません。マスクの湿度で皮膚の角質層がふやけた状態でマスクをはずすと、角質層の水分が蒸発して皮膚が乾燥し、皮膚のバリア機能の低下につながります。そこにマスクの繊維や汗の成分が刺激になり、マスク肌あれが起こるのだそう。マスクの着脱ですれる部分、マスクに覆われた部分に汗あれが起こりやすいので、ケアが必要だと吉木先生は言います。

汗あれ予防は「汗をかいたときの対処」が肝心!

対策1:汗をかいたら柔らかい布で拭く。汗の放置はトラブルのもと

汗をかいたまま放置しておくと、水分が蒸発して塩分やアンモニアといった成分が凝縮され、皮膚に刺激を与えます。汗をかいたら、こまめに拭き取りましょう。その際は、ガーゼやコットンなど吸水性がよく柔らかい素材のハンカチで、軽く押さえるようにして汗を吸い込みましょう。硬いタオルなどでゴシゴシこすると、皮膚のバリア機能が失われ、汗あれの原因に。

対策2:体や顔は泡で優しく洗い、皮膚を清潔に保つ

汗をかいてお風呂やシャワーに入るときは、洗い方に気をつけてみてください。汗をたくさんかいたからといって、ナイロンタオルでゴシゴシ洗うのはNG。その刺激で皮膚のバリア機能を低下させてしまいます。顔も体も洗浄剤をよく泡立て、手でなでるように泡で優しく洗うことが大切。顔は洗顔料を使い、二度洗いがおすすめ。最初は少なめの洗顔料で顔全体を洗い、二度目はテカリが気になるところだけ洗います。ただし、洗い過ぎには気をつけましょう。頭皮や顔、体の中心部は皮脂腺が多いのでボディソープなどを使うのがおすすめですが、汗は水溶性でお湯だけでも落ちるため、体全体を毎日洗浄剤で洗う必要はありません。

対策3:夏でも必ず保湿! 怠ると皮膚のバリア機能低下に

汗あれ対策で最も大事なのは保湿。入浴や洗顔後に必ず保湿することが、汗あれの予防につながります。保湿には、ベタつかず、サラッとした使い心地のジェルタイプやローションタイプがおすすめです。汗あれ対策向けのアイテムは、しっかり保湿して皮膚のバリア機能をサポート、ベタつかないジェルでさらっと潤い、摩擦による刺激から肌を守ります。

汗&マスクで肌がチクチク…実は大人に多い「汗あれ」対策3カ条_3

汗は肌の美容液にもトラブルのもとにもなり得る

「汗は臭う、恥ずかしいなどマイナスのイメージがありますが、実は汗の成分には、乳酸や尿素など天然保湿因子がわずかですが含まれ、天然の美容液ともいわれています。しかし、じわっとかく程度の汗ならいいのですが、汗をダラダラかいたのにあとのケアをきちんとしないと、肌トラブルのもとになりますから注意が必要です。特に気温差が激しい今年は、汗との正しいつき合い方が重要ですね」と吉木先生。

汗あれは、きちんと対策をすれば予防や改善ができるもの。汗をかいたらこまめに拭き、泡で優しく洗い、保湿ケアで肌のバリア機能を高めて、まだまだ続きそうな暑い日を乗り越えましょう。

構成・文/長岡絢子 Photos by batuhan toker, Pheelings Media, K-Angle / iStock / Getty Images Plus 情報提供/ユースキン製薬