バッグの中にお気に入りのケアアイテムがあるだけで、なんだか安心できるという人は多いはず。ほっとひと息つきたいとき、リフレッシュしたいとき、さっと取り出して、自分のためにケアをする。そんな時間は心を優しく癒やしてくれます。

連載「SELF-CARE RELAY」では、今気になるあの人に、そんなセルフケアの愛用品をご紹介いただきます。前回のRUNG HYANGさんからバトンを受け取ったのは、ブランドディレクターの吉田怜香さん。ファッションにビューティ、自宅のインテリアなど、洗練されたセンスが注目される吉田さん。愛用のケアアイテムや、マイルールも気になるところです。ブレない美学がきらりと光る、バッグの中身を見せていただきました!

Vol.7 ブランドディレクター 吉田怜香さん

ブランドディレクター・吉田怜香さん

吉田怜香/Reika Yoshida●1987年兵庫県生まれ。オリジナルブランド「TODAYFUL」デザイナー、ライフスタイルショップ「Life’s」のディレクターを務める。ファッションやビューティだけでなく、洗練されたライフスタイルが多くの女性から支持されている。2021年4月にスタートした自身のオンラインコミュニティサロン「Ours.」も人気。

吉田怜香さん

「セルフケアアイテムのこだわりって、これといってないんですよ」と笑う、気取らない雰囲気が魅力的な吉田さん。ただし、どんなものであれ、その場しのぎで簡単に購入するようなことはないのだそう。身のまわりには、本当に気に入った、自分が心地よいと思えるものだけ。そんな吉田さんが紹介してくれたのは、シンプルながらも、彼女の美学がはっきりと感じられるアイテムばかり!


Reika's Self-Care Rules

1. お気に入りは一途に使い続ける
2. “母親なのに”と制限しない
3. 自分が心地よい美意識を大切にする

バッグの中身はこんな感じ

吉田怜香さんのバッグの中身

「大きいバッグは『JIL SANDER(ジル サンダー)』のソンブレロ。子どもが生まれるタイミングで購入しました。大きめで丈夫、PCも入るし、仕事用としても重宝しています。『The Row(ザ・ロウ)』のミニバッグは、コンパクトに見えてたくさん入るところがお気に入り。ノートや手帳も入ります。できるだけ身軽でいたい派なので、小さめのバッグの出番が多いですね。実際、財布とそのとき読んでいるマンガだけを手に持って、予定の場所に出向くようなこともよくあります」

頭の中のモヤモヤは、書き出してスッキリ整理したい

ノートと手帳

“なんでもノート”(手前)と手帳

「私、すごくアナログ派なんですよ。スマホにメモを取ることもあるけれど、やっぱり書くほうがうまく頭の中をまとめたり、整理したりできるんですよね。これは“なんでもノート”と手帳です。はじめは仕事のアイデア出しなどのためにノートを使い始めたのですが、いつからか、今気になっていること、例えばお金のことや家のことなど、なんでも書くようになりました。書き出すと、なんとなくモヤモヤしていたことがクリアになって、スッキリするんですよね」

吉田怜香さん

本を読みながら、頭にとどめておきたいことをメモすることも多いそう

「気に入ったノートがいつでも見つかるとは限らないので、旅先などでも素敵なノートとの出合いがあれば、何冊か買ってストックしておくんです。今すぐ必要だからと間に合わせで買うことはないですね。このノートはインテリアプロダクトブランドの『HAY(ヘイ)』で見つけたもの。コンパクトなサイズ感と、シックなビジュアルが好みです。シンプルだけどデザイン性が感じられるところが好き。なんでもそうですが、私はデザイナーの意図が感じられるものが好きなんだと思います」

ただいま髪を伸ばし中。ちょっぴり気分が上がる髪留めを

コームとクリップ

(左から)ヘアコーム、ヘアクリップ / ALEXANDRE DE PARIS for A&S

「長年ショートヘアだったのですが、今、髪を伸ばしていて、今までノータッチだったヘアアクセにも目がいくように。バレッタやヘアクリップなど、いろんなタイプの髪留めを試してみたのですが、最近のお気に入りは、『ARTS&SCIENCE(アーツ&サイエンス)』で購入したALEXANDRE DE PARIS(アレクサンドル ドゥ パリ)のヘア クリップです。別注カラーの白を選びました。大きさもほどよく使いやすいし、高級感もあって気分が上がります。

前髪を整えるヘアコームも欠かせません。これは、Amazonで500円くらいとお手頃で、今まで10本は買っていると思います。というのも、家の洗面所にも置きたいし、バッグの中にも入れたいし、いつでも手の届くところに置いておきたいんです。あとは、なくしたときの予備用。すぐ見あたらなくなるので(笑)。何よりのポイントは、コームの歯が半分ずつ異なるところ。束感を出したいときには太めのほうを、細かくしたければ細めのほうを使います。見た目もシンプルでいいし、お気に入りすぎてこれがないと本当に困ります」

吉田怜香さん

30オーバーになって意識しだした、“保湿”と“清潔感”

バランシング コンデンスト クリーム /THREE、チーク スティック 13 Argan Tree、チーク スティック 02 Nocturne /ADDICTION

(左から)バランシング コンデンスト クリーム / THREE チーク スティック 13 Argan Tree・チーク スティック 02 Nocturne / ADDICTION

「美容面で唯一心がけていることは、保湿です。30代も半ばになってきたら、少しずつ気になることも増えてきて。いろんなものを使うわけではないけれど、シンプルに保湿をしっかりして、ベースを整えようということは考えるようになりました。

もう10年以上愛用しているスキンケアは『SK-II(エスケーツー)』。やっぱり安心感があります。日々の保湿ケアに加えて、この秋から使い始めたのが『THREE(スリー)』のバランシング コンデンスト クリームです。このサイズ感なら持ち歩きにも便利だし、出先で乾燥が気になったとき、小ジワが気になる目もとや口もとになじませると、しっとりします。さらに、私はこれを唇や手もとにも塗ってしまいます。1本で乾燥ケアができるから大助かり。荷物は増やさずに、スキンケアをブラッシュアップしていく方法を見つけていきたいですね」

ブラウンリップがお決まり。2色を気分で混ぜて

吉田怜香さん

「メイクもあれこれ試すことはなく、もうパターンが決まっています。リップはファッションや季節問わず、ブラウン系。ピンク系は買ったことがないかもしれません。

『ADDICTION(アディクション)』のチーク スティックは、リップとして愛用しています。ヌーディなベージュ系の02と、深いブラウンの13を、その日の気分で混ぜ合わせて使っています。今日は、ブラウンが8割くらいかな。ベージュのほうは、唇の色みをおさえてくれるので、カラーの乗りをよくするための下地として使うこともありますね。

メイクもファッションも、本当に、『落ち着くものだけでいい』んです。年を重ねるごとにどんどんシンプルになっていくような気がします。こうした仕事をしているので、意外に思われるかもしれませんが、私の秋冬の格好といえば、黒のタートルにパンツ、コートが定番。スティーブ・ジョブズのような日々です(笑)。

考えるのがわずらわしいということではなく、自分の心地よさを追求した結果がこれ。初めて出会う人にインプットされる私のイメージが、いちばん自分らしいスタイルであるほうが、心地よいとも思います。もちろん素敵なお店へディナーに行くときなんかに、おしゃれするのは大好きですが、日常生活はやっぱりこのスタイルが落ち着きます」

好きなものには一途。バッグにあると安心な駄菓子たち

駄菓子

お気に入りの駄菓子

「私、けっこう一途なタイプなんです。お菓子も好きなものを変わらず食べ続けています。こういう駄菓子も、物心ついた頃から食べ続けてきたから、バッグにあると安心するんです。逆にみんながお菓子を食べなくなるきっかけが知りたい(笑)」

家事や育児の合間にも、ささっとハンドケア

(左から)uka nail oil uka store gentei orange /uka、ネイルポリッシュ Akoya /J.Hannah 、 アンドラム エクスペディエント ハンドジェル

(左から)uka nail oil uka store gentei orange / uka ネイルポリッシュ Akoya / J.Hannah アンドラム エクスペディエント ハンドジェル(旧製品名:リンスフリー ハンドウォッシュ、イソップ アロマティック エクスペディエント ハンドジェル) / イソップ

「セルフネイル派で、今日塗っているのは『J.Hannah(ジェイハンナ)』のAkoyaというカラーです。薄い色なので、はげてしまっても目立たないし、部分的に重ねづけしても不自然にならないのがいいところ。やっぱり、家事しているとすぐにはげてしまうので、時間のあるときにささっと上から塗ってごまかしています(笑)。

保湿が大事と言いながら、手もとのケアは、いつも顔に化粧水や乳液を塗ったあと、そのあまりをなじませるくらいしかしていなかったので、ちゃんとしなきゃと思っているところです。それで『uka(ウカ)』のネイルオイルも使い始めました。このサイズ感と香りが好きですね。『Aesop (イソップ)』のハンドジェルも、ミニバッグでかさばらないので重宝しています」

吉田怜香さん

理想の“かっこいい女”に。その気になれるビーガンフレグランス

POGOSTEMON/FIELE FRAGRANCES

POGOSTEMON / FIELE FRAGRANCES

 「お気に入りの香水は、『FIELE FRAGRANCES(フィエール フレグランス)』のPOGOSTEMON(ポゴステモン)。自分の店でも取り扱っているものなのですが、天然の植物エッセンスを使用し、動物実験は行わないなど、エシカルな観点にも配慮したブランドの香水です。

ちょっとお香みたいな、ユニセックスな雰囲気が好きですね。クセのある香りを選びがちかもしれません。好きな香水をまとうというしぐさって、“いい女”になったような気分になれますよね。そういう、自分で自分を盛り上げるような行動が大事だと思っています。恥ずかしがらずになりたい自分を演じる、その行動の積み重ねが、センスや美意識にもつながっていくような気がします」

吉田怜香さん

「旅先のホテルの部屋で、いつも使っているお香を焚いたり、現地の市場で花を買って、ワインの空き瓶に飾ってみたり、そんなふうに空間作りを楽しむことも大好きです。いつでも自分が心地いい空間に身を置くことが、いちばんのセルフケアなのかもしれません」

“母親なのに”“私なんかが”と思わないで。そっと背中を押してあげたい

「『母親だから』という理由で、自分の心地よさや、おしゃれを追求することに抵抗を感じてしまう方って、本当に多いと思います。それは社会の見えない圧のせいもあるのかなと思うのですが、『母親なのに』とか『私なんかが』なんて、思わないでほしい。昨年立ち上げたオンラインサロン『Ours.』の活動をするなかで、そうした気持ちがより強くなりました」

吉田怜香さん

「『Ours.』では、私の持っている知識や経験が少しでも役立てばと、ファッションやメイク、インテリアのコツやメソッドをお伝えしています。参加者には育児中の方も多くいらっしゃるのですが、『Ours.』をきっかけに、『マタニティでも好きな服を着ていいんだ』『子どもがいても楽な服ばかり着る必要ないんだ』『自分だっておしゃれなヘアサロンに行ってもいいんだ』と気づいたと聞くと、やっぱりすごくうれしいです。皆、どこかで背中を押してほしい気持ちがあるのかもしれません。

『Ours.』では、私の育児日記も公開しています。産後うつや、子育てが苦しくなってしまうことの大きな原因の一つに、孤独があると思っていて。これを読むことが、参加者のいい息抜きになってくれたらいいな、という思いもあります」






「2歳4カ月の娘とは、友人みたいな関係。日々、面白いし、『興味深いなぁ』という気持ちで見ています。子どもができてからのほうが、仕事と生活のオン・オフは、はっきりしました。意識的にというよりは、日中は仕事をして、家にいるときは彼女と遊ぶ。そのほうが自分にとってストレスがないんですよね。好きな仕事でも、ずーっと追われていたらやっぱり嫌になるし、ずっと子どもとだけ過ごしていても、しんどくなってしまう。だから、どっちもが、相互のオン・オフになっているんです」

吉田怜香さん

行きづまったり、煮つまったりしたら、マンガ×マッサージでリフレッシュ!

「まるごと腐女子のつづ井さん」の書影

『まるごと腐女子のつづ井さん』 つづ井/(文藝春秋)

「それでも忙しさが続いて、煮詰まったり疲れたりするときももちろんあります。そんなときは、マンガや本ですね。その世界に没頭することで現実逃避できるし、リフレッシュにもなります。移動時間に読むことが多いですが、マッサージサロンにマンガを持っていくことも。足や頭を揉まれながらずーっと読んでいるので、『リラックスする気あるのか...?』と思われているかも(笑)。でも、私にとってはそれが最高のリラックスなんです。

『まるごと腐女子のつづ井さん』は、何度読み返しても面白い。つづ井さんみたいに日常をクリエイティブに生きたいし、ずっと青春しているところに共感するし、憧れてもいます。私も友達とずっと面白いことをしていたい。そういう楽しみを何歳になっても、忘れたくないと思っています」

大切なのは、自分や相手にとって心地よい美意識。楽しむ気持ちがセンスを磨いてくれる

吉田怜香さん

「仕事柄、ありがたいことに、『どうしたらセンスよくなれますか?』と聞いていただく機会も多いのですが、私は、センスって、自分や相手にとって心地よいと思える美意識だと思うんです。ファッションやメイクだけじゃなくて、料理の盛り付けをちょっと工夫するとか、人への接し方や言葉遣い、何げない会話など、あらゆる部分にそれが現れるような気がします。

だけど難しく考えすぎず、最初は素敵だと思う人を真似するだけでもいいと思うし、恥ずかしがらず、積極的に楽しむ気持ちが大切なんじゃないかな。私自身、なんでも楽しんでいるだけで...。でもきっと、そういう気持ちが自分のセンスをどんどん磨いていってくれるような気がするんです」

撮影/山崎悠次 取材・文/秦レンナ 編集/高戸映里奈(yoi)