枯れているけれど、まだ少し咲いている道端のバラ
世の中は違ったものでできている。それを認められたら、見え方が変わる
現在、ニューヨークに拠点を置き、日本と行き来しながら、この4月に新メイクアップブランド「UNMIX(アンミックス)」をリリースしたメイクアップアーティストの吉川康雄さん。”化けて粧(よそお)う”化粧ではなく、” ありのままの自分を愛する”ために、これまでの美容の在り方とは一線を画した吉川さんの言葉に勇気づけられる人が少なくありません。そんな彼の目に映る”キレイ”な世界とは?
風景写真を撮るために、野に入ったポートレート
「世界はキレイでできている——本当にそうだと思うけれど、そういう風には見えない。それどころか全然キレイじゃない、と思っている人が多いですよね。だけど、世の中は本当に、キレイでできているんです」
と、不思議な言葉を語る吉川さん。そもそも”キレイ”って何? 顔かたちが整っていること? アートのこと? 心が? キレイなものを所持していること? キレイじゃないとダメなの?
「僕はクリエイテイターで、自分のアイディアを表現しています。それこそクリエイティブな仕事をしている人は世界にごまんといて、それらの仕事を並べてみると、見事にみんな違う。そう考えると、すべての人が違って、人の数だけ異なるクリエイティブがあるんですよね。それが世の中に認められていようが、自分にとって価値がないと思っていようが、世間にピックアップされようが関係はない。人が表現するって、そういうことだと思うんです」
誰かが作った”キレイ”にとらわれず、ピュアな目で見て”素敵”を感じて
「”キレイ”もそれと同じ。今あるキレイの概念は、誰かが作ったルールなだけです。もっと自分のピュアな目で見てみたら、何が素敵と思えるのか? ”これは正しい、正しくない”と白黒つけようとすると、そこに”正義”と”悪”が出てきて”素敵じゃない”が出てくるけれど、クリエイティブと同じで、みんなが違って当たり前という視線で見たら、キレイに正解がないことがわかると思うんです。キレイじゃないと思うのは、無意識のうちに与えられた価値観に縛られていて、その作られたルールから外れていると感じるから。
これまでは、企業もメディアも『丸の内OLはこう』『渋谷の女子高生はこう』と、世の中の人間をカテゴライズしがちだった。そうすることでビジネスが成立していたからです。当然、受け手もその発信をもとに育っているから、どこかのカテゴリーに属し、その枠から外れると、“キレイ”ではないと感じてしまうこともあった。でも、本当は何が素敵と思うかはその人の価値観でいいんです」
庭に咲いていたピオニーを飾っていたら自然に枯れてしまった。捨てどきがわからない
“世の中は違ったものでできている”。これを自分でも認めることができ、社会とも共有できたら、きっと“世界はキレイでできている”と思えるはず。
吉川さんが紡ぎ出す”キレイ”はまだまだ続きます。
撮影/Mikako Koyama 取材・文/藤井優美(dis-moi) 企画・編集/木下理恵(MAQUIA)