「かわいいメイクアップって何ですか?」
今をときめくメイクアップアーティストに問いかけて、そのアンサーをふたつのモデルルックにのせてお届けするビューティ連載。第6回目は「自分らしくおしゃれな顔になれる」と数々のタレントや俳優から指名の絶えない岡田知子さんが、子供の頃からモデルとして活躍される琉花さんの等身大の姿にフォーカスします。多様化する“かわいい”のかたちをヒントに、心地よくになじんで気持ちをふっと上げてくれる、自分だけの特別な“かわいい”を見つけて。
【岡田さんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:1】 自然体の眉と素肌をモダンに見せる、メタリックなプラムチーク
クルーネックニット¥39600/ティー・ティー 075-525-0402 中に着たTシャツ¥11550/ショールームリンクス(ハクジ)links-partners.com デニムパンツ/スタイリスト私物 ネックレス¥46100/トムウッド 青山店(トムウッド) 03-6447-5528
「今回のモデルの琉花さんは、まさに顔に魅力的な“履歴”のある人。フォトグラファーとしても活動していて世界中を飛び回っている、その味わいの残る素肌を活かしたくて。ファンデーションは塗らず、リップはヌーディに。シアーブラウンのマスカラで眉の毛流れを強調してナチュラルなメイクアップに仕上げました。
ただし、これだけだと素朴になりすぎるので、チークはメタリックな質感のものをチョイス。どこかにモダンな要素を取り入れることで、自分らしさと今の気分、両方を楽しんでいるような大人の余裕と遊び心を感じさせられます」(岡田さん・以下同)
【岡田さんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:2】 メンズライクな服装をアイシーパステルのまぶたとブリックレッドの唇で自由にはずしてみる
ジャケット¥138600・ブラウス¥79200・
「琉花さんのベーシックともいえるメンズライクなジャケットスタイル。でもメイクはあえてテンションを合わせず、アイシーな水色やピンクをまぶたに広げたり、リップをきれいに縁取ってみたり……。今の気分を自由にのせてみました。
マニッシュなルックに限らず、自分の定番スタイルをメイクでアップデートするのって、なんだかすごくかわいい。ブレない芯とフレキシブルさのギャップにグッとくるのかもしれません。
ただし服とメイクがあまりにちぐはぐだとおかしいので、まぶたに色をのせた分、マスカラとアイラインは潔く使わない選択を。チークも入れず、素肌感を大切に」
岡田さんの“かわいい”とは:その人の生き様が垣間見える“履歴”の残る顔やメイクアップ
──岡田さんにとっての“かわいい”ってなんでしょうか?
私はその人らしい“履歴”のある顔がかわいいと思いますね。もちろん「シミもひとつ残らず愛しましょう!」とか、そんな極端な話ではなくて(笑)。何年もサーフィンをしてきた人の焼けた肌や色々な国を旅した人の刻まれたシワなど、一般的にネガティブとされている要素でもすべてを覆い尽くすのではなく、好きなものの痕跡として生かしているのはすごく素敵だなと。
それは必ずしも肌に残るものだけではなくて。例えば「下まぶたのアイラインは欠かせません」とか「常にフルメイクでいるほうがしっくりくるんです」とか、そういうメイクのこだわりもまた、その人の“履歴”になりますよね。つまりは自分の好きなものをきちんとわかって大切にしているその感じが、世代を超えて人の心を惹きつけるかわいらしさになるんじゃないでしょうか。
──その人の好きなものやこだわり、ルーツが感じられるのであれば、シワやシミもときには魅力になりうるということですね。
そのとおり。そんなふうに私が考えるようになったのは、数年前に美容クリニックの先生にお声がけをいただいて、美容医療のカウンセリングに参加するようになってからなんです。「笑いジワは残してキツそうに見えるシワだけ薄くしましょう」とか、そんな話を耳にしているうちに、残したい履歴とそうでない履歴を見極めることはその人らしい魅力的な顔づくりに欠かせないと思うように。嫌だなと思う部分を変えたいという気持ちはもちろん尊重していいけれど、いきなり後戻りのできない方法をとるんじゃなくて「ここまではメイクでカバーできるな」とか「これはどうしても無理だから美容医療の力も借りてみよう」とか。そうやって柔軟に対応できる色々な選択肢を持っておくのも、今の時代のかわいいをつくるヒントになりそうですよね。
──残したい履歴とそうでない履歴がわからない……。そんな人はどうしたらいいでしょうか?
これは声を大にして言いたいのですが、第一にちゃんと睡眠をとって、丁寧にスキンケアをしてみてください! コンディションのよくないときって誰でもいいところが見えづらいですよね。まず日常的にできることで自分をベストな状態に持っていけば、今の自分の好きなところや求めているもの、削ぎ落としたい部分もおのずとわかってくる。それからTPOにとらわれないで自由にメイクする時間を設けてみると「意外とこの色いいな」とか、新たな発見があったりするのでおすすめです。服の試着と同じで、コスメも実際につけてみないと似合うかどうかはわからないので。そうやって冷静な目としなやかな心を保つことから、大切にしたい“履歴”=自分だけの“かわいい”はきっと見つかるはずです。
撮影/Nobuko Baba〈SIGNO〉 ヘア&メイクアップ/岡田知子〈TRON〉 スタイリスト/渡邊 薫 モデル/琉花 構成・取材・文/小川由紀子