時代の空気感と自身が育んできた感性を織り混ぜ、メイクアップアーティストの皆さんが表現する“かわいい”。才能あふれるアーティストの皆さんが考える“かわいい”の現在地を2つのルックによって掘り下げる連載企画。第11回目は、モード誌のエディトリアルからセレブリティのメイクまで幅広く活躍を続けるKie Kiyoharaさん。
【Kie Kiyoharaさんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:1】静寂な暗闇に広がる星くずのような世界

シャツ¥42900/ジョン 合同会社九狐 ドレス¥71500/ケイスケヨシダ ソスウ

「こちらのルックは、未知なる不思議さが漂うものになればいいなと思って考えたものです。真っ暗で無限に広がる宇宙の中にキラキラと輝くスターダストのような……そんなイメージが私はずっと好きなんだと思います。最初は白背景で撮影予定でしたが、彼女の髪色と雰囲気を見て、黒の背景に変更した方が印象的なヴィジュアルになるんじゃないかなと思いました。
キーになっているのは、アイホール全体とリップのエッジに使っているM・A・Cのシルバーグリッター。これはもし廃盤になったらどうしよう……とういうくらい愛用しているアイテム。リキッドなんですが、乾くとピタッと定着して狙ったところに輝きをのせられるので、撮影の際にもよく登場します。
今は“ブルベ”とか“イエベ”のような言葉を使って、それぞれが似合う、似合わないを判断する方法もあると思いますが、私は大好きなシルバーや青みのラメをあえて“イエベ”肌に使うのが好きです。決められたルールをあえて逸脱することで、その人が持つ印象や魅力がさらに際立つこともある。私の中にある“いい意味の違和感”を表現する一つの手段なのかもしれません」
【Kie Kiyoharaさんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:2】大胆でストイックな中に、その人自身の個性を滲ませる

スカート(上)¥79200・スカート(下)¥79200/ともにケイスケヨシダ ソスウ

「私が“かわいい”と心惹かれるものって、どこかにストイックさや不思議さ、ほのかな違和感を残すものが多いんです。100%甘い“かわいいい”じゃないと言うか。それは昔から変わらない気がします。
このルックで表現したかったのは、そういったストイックさをもったヴィジュアル。当初から黒いアイライナーを使ってグラフィック的に見せるメイクにしたいという気持ちがあったのですが、今日改めてモデルのYUJINさんを見て、目と眉や眉間といった目周りの余白を考えると、目のフォルムに対して少し距離のあるラインにしたほうが、強さが出すぎず目指している女性像に近づくかなと思いました。
肌も当初はハイカバーにしようと考えていたんですが、みずみずしい彼女の肌を生かしたいなと思って。スキンケアの段階でしっかり保湿して、セミマットのリキッドファンデーションを毛足の長いブラシでなじませ、ごく薄く、でもノイズのない肌に仕上げています」(Kie Kiyoharaさん、以下同)
Kieさんの“かわいい”メイクとは:ストイックさや違和感を本人の良さとチューニングする
——Kieさんが心惹かれるのはちょっとした捻りが効いた“かわいい”なんですね。
「そうなんだと思います。ストイックさやちょっとした違和感、そういった“引っかかりを感じるもの”をかわいいなと感じます。これはずっと昔から。人物像としても、チャーミングさの中にピリッとした強さがあるキャラクターの方を素敵だなと感じます」
——Kieさんのメイクには、そういった違和感を感じさせつつも、独りよがりじゃない心地よさがあるという印象を受けます。
「そう言ってもらえると嬉しいですが、なぜそうなのかは自分ではわかりません。ただメイクする上で、それがモデルさんにしろ、俳優さんにしろ、すべての人に備わっている“いいところ”は無視できないじゃないですか。だから自分が表現したいものと、その人自身の良さを擦り合わせたチューニングは自然と行っている気がします」
——そういったKieさん自身の“かわいい”の原風景とはなんだと思いますか?
「どうなんでしょうか。子供の頃からお祭りに行く友人たちの髪をつくるのが好きだった記憶があって。この仕事に対する漠然とした意識はかなり小さな時からあった気がします。私は自然の豊かな和歌山で育ったのですが、隣に住んでいた祖母がファッション好きで。今思うとその影響もあったのかもしれません。祖母はとっても派手なので、私の好きな“かわいい”とはまた違うベクトルですが(笑)」
——そういう環境の中で今の“かわいい”にどうやって辿り着いたのでしょうか。
「もともと私自身は好きなものがあんまり広くないんです。コスメティックスに関しても好き嫌いが割と極端で。全体に共通しているのは青み系が好きということ。ゴールドよりはシルバー、ブラウンだったらトープとか。だから“かわいい”の焦点が定まりやすいのかもしれません。
でも、最近は自分の“好き”の範囲外にある色を使うのが楽しいですね。今回も2つ目のルックでディオールのミルキーピンクのような甘い色のチークを使っているのですが、以前だったらこの色は手に取らなかった気がします」
——これからメイクアップアーティストとして挑戦したいことはありますか?
「今お話したような手に取らなった色、むしろ嫌いと思っていた色にもどんどん挑戦していきたいです。そうしたらもっと表現の幅が広がる気がしていて。そうやって一歩一歩、新たな可能性を見つけていきたいです」
アンナチョイ クライアントサービス(アンナ チョイ) info@maisonannachoi.com
リステア / ルシェルブルー総合カスタマーサービス 03-3404-5370
撮影/池満広大(モデル)、田村 伊吹(製品) メイクアップ/Kie Kiyohara ヘア/KOTARO スタイリスト/MIDORI モデル/YUJIN 構成・取材・文/前野 さちこ