30代のyoiエディターとデザイナー、ライターの3名が、それぞれ好きなラジオ番組&ポッドキャストについてトークをくり広げます。番組やパーソナリティのことを知らない人でも、とにかくまずはここから聞いてほしい!という「神回」をピックアップしました。

メンバープロフィール
エディター福井:1987年生まれ。ラジオリスナー歴は1年ほどで、日々、面白い番組を探し求めている。初対面の人に「おすすめのラジオ番組は?」と尋ねるのが習慣。
デザイナー須永:1987年生まれ。昔からお笑い好きで、芸人さんの番組からラジオファンに。移動中や寝る前などにぼーっと聞いていることが多い。
ライター生湯葉シホ:1992年生まれ。ラジオっ子で、人生でいちばん熱心に聞いたラジオは『エレ片のコント太郎』と『ジョー・力一の空昼ブランコ』。

ラジオ好きになったきっかけって?

生湯葉:そもそも、ラジオって何をきっかけに聞き始めました?

須永
:私はもともとお笑いファンなんですけど、ネタよりも芸人さんの平場でのトークのほうが好きというか。ただお喋りしてるだけで面白い芸人さんがいちばん面白いって思ってるから、そういう人のトークを聞きたくてラジオに手を伸ばしたのかも。

ハライチさんのラジオ『ハライチのターン!』から聞き始めて、ここ5年くらいは、気になった芸人さんがいたらラジオをやってるか調べて聞いてますね。


福井
:私はちょっとイレギュラーな入り方かもしれないんだけど、yoiで空気階段の水川かたまりさんに取材させていただいたのをきっかけに『空気階段の踊り場』を聞き始めたんです。

レギュラー放送になる前の第1回から古い順に聞いてて、まだ途中なんですけどめちゃくちゃハマっちゃって。いまちょうど、二人がキングオブコントで優勝したあとくらいなんですよ。


須永
じゃあ本当に二人の人生を一緒に追いかけてるんだ(笑)。

福井:そうそう。私はこれまで全然ラジオを聞いてこなかったタイプなんだけど、「踊り場」にどハマリしてからは、面白いラジオを日々探していろいろ聞いてみてる。


生湯葉
私は福井さんと逆で、学生時代からラジオっ子でした。いろんなミュージシャンがパーソナリティをしてる『SCHOOL OF LOCK!』とか、TBSラジオの深夜帯の『JUNK』の枠とかは特に熱心に聞いてたかも。

radikoのサービスが始まる以前の時代から聞いてるから、ポータブルラジオを持って部屋の中をウロウロして、電波が入る位置を探すみたいなこともしてました(笑)。


福井
すごい! いまはもうみんな、ほぼradikoとかポッドキャストで聞いてるから、その経験したことある人も少なそう。

生湯葉
電波の入らなさを経験してる最後の世代ですよね、たぶん。テレビも好きだったけど、ラジオのほうがパーソナリティとリスナーが1対1で向き合ってる感じがして、やっぱり愛着あるんですよね。 

推しラジオの神回その1:『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』第190回「ニセM-1グランプリ」

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須永:私はいちばん好きなラジオが『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』で、個人的な神回は第190回の「ニセM-1グランプリ」。2024年のM-1の裏話をしてる回なんだけど、吉本興業所属の芸人がちゃんとした本物の漫才師だとしたら、自分たちは“ニセ漫才師”だからニセ劇場で寄席の真似事をしてるだけだ、だからM-1で勝てないって話をしてるんですよ。

自分たちをニセ漫才師呼ばわりしてるのも面白いんだけど、決選投票で自分たちに入れたナイツの塙さんのことも“ニセ漫才協会のニセ理事長”って呼んでるのに笑っちゃって。

去年のM-1のアンジェラ・アキさんのネタも最高だったから、その裏話が聞けてうれしかったし、真空ジェシカさんのラジオって“かかってる”(=力みすぎて空回りしている)感じが薄いのもいいんだよね。

福井:私、二人が喋ってるときのトーンにすごく癒されるかも。ラジオ向きっていうか、口調が全然激しくないじゃない?

須永:あ、確かにそうだよね。私はけっこう寝る前にラジオを聞くことも多いから、真空ジェシカさんのトーンはちょうどいいかも。あとは芸人さんのラジオだと、ダイアンのTOKYO STYLE』もすごくいいよ。

ラジオのダイアンさんってテレビのノリよりずっと静かで、「梅雨明けたなぁ」みたいなことを普通にずっと喋ってる(笑)。

推しラジオの神回その2:『ランジャタイによりますと』第17回「お前は地球の管理人か」

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生湯葉:ダイアンさんのラジオは、関西のおっちゃんたちがただボソボソ話してるって感じでいいですよね(笑)。私は芸人さんのラジオだと、心地よく聞ける感じとはちょっとジャンルが違うんですけど、『ランジャタイによりますと』が好きで。もともとは富山のローカル局のテレビ番組からスタートしてて、いまはラジオ版も配信してるんです。

ランジャタイの国崎さんとフリーアナウンサーの柴田泰佳さんがパーソナリティなんですけど、芸人さんとアナウンサーの方がコンビでやってるラジオって、アナウンサー側は聞き手に回ることが多いじゃないですか。でもこれ、柴田アナがエピソードトークをガンガンして、それに国崎さんが爆笑するみたいなことも多くて。

福井:アナウンサーの人のほうが喋るんだ(笑)。私も国崎さんのラジオを聞くことがあるんですけど、国崎さんの笑い方ってつられちゃうし、すごく豪快なんだけど、とても聞き心地がいいですよね。ラジオに最適な笑い声ってあるんだなと国崎さんから知りました。

生湯葉:そうなんですよ。個人的な神回は第17回の「お前は地球の管理人か」。柴田アナが常識のない元彼にポイ捨てを注意したら「お前は地球の管理人か!」ってキレられて、腹が立って車でその人を延々追いかけたっていう最高のエピソードトークが聞けます。

推しラジオの神回その3:『空気階段の踊り場』第23回「もぐら、ラジオから愛の告白」

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福井:芸人さんのラジオでいうと、私はやっぱり『空気階段の踊り場』の……。

須永:空気階段1本でいこうとしてるでしょ(笑)。

福井:(笑)。まわりの人に薦めてもらったなかでも真空ジェシカさんのラジオと、トム・ブラウンさんの『トム・ブラウンのニッポン放送圧縮計画』、あとは、アルコ&ピースさんの『D.C.GARAGE』は面白く聞いてるんだけど、『空気階段の踊り場』がやっぱりダントツで好きなんだよね。

須永:でも、確かに、空気階段さんのラジオって、企画とかコーナーはしっかりあるんだけど、お喋りがメインの目的って感じがするのがいいよね。

福井:本当にそう。二人の喋りのトーンとかバランスも絶妙だと思う。全部面白いから「これが神回!」っていうのも難しいんだけど、初めて聞く人でもおすすめなのは第23回の「もぐら、ラジオから愛の告白」かな。もぐらさんがのちの元妻にラジオ越しにプロポーズするのを見守る回なんだけど、誰が聞いてもドラマチックだし、ちょっと感動しちゃうと思う。

生湯葉:もぐらさんとかたまりさんの家族のエピソードもいいですよね。

福井:そうそう。もぐらさんがお母さんの話をする回もすごくいいし、第29回の「マザコン発覚」もすごかった。これはかたまりさんのお母さんとのエピソードなんだけど、まだ聞いたことない人は聞いてゾワッとしてほしいですね。

もともとはかたまりさんきっかけで聞き始めたけど、ラジオを通して、もぐらさんの芸達者ぶりを知ったらもぐらさんも大ファンになっちゃって。テレビでは見られないもぐらさんのモノマネとか、聞くたびに笑っちゃうし。

もぐらさんって“クズ”キャラだけど、クズでもこんなにいい人もいるんだって。二人のやり取りから、人間の多面性を学べているような気さえする(笑)。

推しラジオの神回その4:『佐伯ポインティの生き放題ラジオ!』第32回「レベルアップしたかったのに、逃げるように転職する自分が情けないです」

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生湯葉:芸人さんのラジオ以外にも好きなラジオってあります?

須永:私は『佐伯ポインティの生き放題ラジオ!』が大好きでよく聞いてます。ポインティさんってかわいいし、紹介する本とか映画が自分の好みと似てるなあと思って聞き始めたんだけど、すごくお喋り上手だし聞き心地がいいからびっくりして。

リスナーからのお悩み相談に答えるラジオなんだけど、神回だと思ったのは第32回「レベルアップしたかったのに、逃げるように転職する自分が情けないです」っていうお悩みに、仕事におけるトッププレイヤーって「激務厨」なだけだから気にしなくていいってポインティさんは答えるんだよね。

その環境から離れるのは逃げじゃないし、激務の結果いいものができ上がったとしても、健康とか自分の幸せを犠牲にしてまで成果を挙げる意味って何?ってはっきり言ってて。

福井:ポインティさんって、メンタルヘルスとかジェンダーの問題について、すごく慎重に調べていろんな角度から答えてくれるよね。yoiのインタビュー記事もすごく面白かったし。

須永:本当にそう。私はわりと頑張るのが好きなタイプだからハッとしたし、自分を追い込みすぎちゃいそうなときにこの回を思い出したいなって。

このラジオ、寄せられるお悩みはけっこうヘビーなものも多いんだけど、ポインティさんの聞き方が明るいからリスナー側もいい意味で気負わずに聞けるんだよね。こういう余白のある考え方ができるようになったら、世の中をもっと興味深く楽しめそうだなって思う。

あと、ライトなお悩みに対する返し方もすごくいい。「会社で大きいおならをしてしまって以来、化粧をしてもかわいい服を着ていても、どうせ屁をこいたやつだと思われるのでなんのモチベーションも湧きません」っていうお悩みに「近くから見ると悲劇だけど、遠くから見ると喜劇ってやつだね」って返してて。

生湯葉:すごすぎる。チャップリンだ(笑)。ポインティさんって、人の話への相槌の打ち方とか深掘り方もすごく誠実でいいですよね。

須永:そうそう。自分が大好きな人なんだけど、だからこそ他人の話も真摯に聞けるんだなって思います。

推しラジオの神回その5:『ゆる民俗学ラジオ』第94回「現代化するモンゴルで、シャーマンが大増殖した」

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生湯葉:私がほかに好きでよく聞いてるのが『ゆる民俗学ラジオ』。民俗学好きの話し手・黒川さんと、チェロ奏者でもある聞き手・浦下さんのコンビでやってるラジオなんですけど、“ゆる民俗学”ってタイトルのとおり、民俗学にフワッと興味がある程度の人でも楽しめる構成になってて、すごく面白いです。

話し手の黒川さんがすばらしくて、いろいろな資料を読み込んだうえで理知的に話す人なんだけど、その反面すごく熱くもあるんですよ。

例えば、ある民族がたどった歴史について解説しているときに、ジェノサイドに遭ったり女性が不当に貶められたり、みたいなつらい史実について話すこともあるんですけど、そういうとき本当に悔しそうにしてるんですよね。思わず泣いてしまう回もあって

福井:熱意が伝わってくるな~。音声だけのコンテンツだからこそ、より感情移入できるっていうこともありますよね。

生湯葉:アカデミックなんだけどエンタメとしても面白いから、ぜひ聞いてほしいです。個人的な神回は、ちょっと長めのシリーズなんですけど、第94回から始まるモンゴルのシャーマンについての回。この回をきっかけに面白い書籍について知れたりもして、聞けてよかったなと思ってるシリーズです。

推しラジオの神回その6:『伊藤亜和のお手上げラジオ』第7回「【青森と私】車で青森に行った話。帰りの車内で半狂乱。」

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(c)キキ/お手上げリスナー

須永:私が最後にもうひとつ紹介したいのが、モデル・文筆家の伊藤亜和さんの『伊藤亜和のお手上げラジオ』。私はもともと亜和ちゃんのファンなんですけど、ファンから見ても最初の頃は明らかに喋り慣れてないから声が小さすぎるし、お便りも全然こないのが面白くて(笑)。

私の思う神回は第7回の「【青森と私】車で青森に行った話。帰りの車内で半狂乱。」です。亜和ちゃんが祖父・祖母と一緒に車で出かけるんだけど、首都高で渋滞にはまってしまった帰り道、祖母がトイレに行きたいって言い出すんですよ。

亜和ちゃんはどうにかトイレに連れていく方法を必死で考えるんだけど、祖父と祖母はそれを諦めて漏らす方向で話を固めていくっていう……。家族って、わかり合えない者同士が一緒にいる独特なおもしろさがあるよなあと実感した回ですね。

生湯葉:伊藤亜和さんのラジオ、私は知らなかったんですけど、この静かなトーンいいですね。深夜に聞きたい。

須永:寝る前に聞くのにいいんですよ。私、ファミレスで話してる人たちの話をぼんやり聞くみたいな感じでラジオを捉えてるから、こういうトーンが好きなんですよね。テレビとは違って、より自分のパーソナルな部分を話してくれてる感じがいいっていうか。

福井:それはわかるかも。今日いろいろおすすめを知れたので、早速帰り道から聞いてみます!

取材・文/生湯葉シホ 企画・編集/福井小夜子(yoi)