バッドモードに突入したら、泡風呂に入って深呼吸しよう
右からへスター・チャンバース、リアン・ティーズデイル
Photo by Hollie Fernando
プレッシャーやストレスを感じて、この世の終わりかのような気持ちになったとき、あなたならどうする? 2022年最注目のバンド、Wet Legは、私たちにこうアドバイスする。〈気分を上げるには泡風呂に浸ってリラックスするだけでいい〉と。
イギリスのワイト島出身で、学生時代からの友人であるリアン・ティーズデイルとへスター・チャンバースからなるインディーバンド・Wet Leg。毎年、その年の活躍が期待される新人を発表する英国・BBCの「Sound Of 2022」で2位にランクイン。さらに日刊紙「The Guardian」では、「The 20 Best Songs of 2021」を獲得するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を集めているアーティストだ。
そんなWet Legが、セルフタイトルのデビューアルバム『Wet Leg』をドロップした。本作には、バンドを有名にしたデビューシングル「Chaise Longue」をはじめ、ウィットに富んだ楽曲が多数収録されており、リアンが、「作りたかったのは楽しい曲。悲しい気持ちに浸ってばかりじゃなく、楽しく聴いたり演奏したりできる曲を書きたかったの」と語るとおり、友人とバカげたトークをしているときのような愉快なムードが漂っている。
Wet Leg - Too Late Now (Official Video)
そんなアルバムのラストを飾る「Too Late Now」は、子どものときに思い描いていた“大人になった自分の姿”と“今の自分”とのギャップに落ち込んだときに聴くと、ユニークで内省的な歌詞にカタルシスを得られる。この楽曲について、リアンはこんなコメントを残している。
「テーマは夢遊病のまま大人になること。私は自分が大人になったときにこういう毎日を送っているとは想像もしていなかった。たぶんこの曲は、日々のプレッシャーや労苦を反映しているのかもしれない。私はときおりひどく考えすぎて、あらゆることに打ちのめされてしまうことがあるから。生きていると最悪な気分になることだってある、ってことを受け入れる曲なんだと思う。そんな気持ちにとことん付き合っちゃダメってことかもしれない。 自分のためにちゃんと時間をとって、深呼吸して、お風呂に浸かること。そうすれば少しはマシな気分になれるから」
歌詞の中に、〈出会い系アプリで自分の容姿にケチをつけられる筋合いはない 痩せ過ぎだとか太り過ぎとかムダ毛を剃れとか余計なお世話 ラジオもMTVもBBCも私には無用〉というフレーズが出てくる。ルッキズムに苦しんだり、テレビやラジオからとめどなくあふれる情報に溺れそうになったり…。大人になることは、いいことばかりじゃない。バッドモードに陥るようなでき事を経験して打ちひしがれることもある。でもそんなときは、Wet Legの二人が言う、〈気分を上げるには泡風呂に浸ってリラックスするだけでいい〉を思い出して、たっぷりご自愛してあげよう。バスタイムを終えた頃には、きっと泡のように気持ちが軽くなっているから。
Wet Leg: Too Late Now The Late Late Show with James Corden
Wet Legの楽観的でシニカルな音楽を味わおう!
文/海渡理恵 編集/国分美由紀