『今から、これから。好きを感じる美容と生活』福本敦子 ¥1870/幻冬舎
暮らしの延長にある「美容」の心地よさ
苦手なこと、いや、なんだかよくわからないままにやり過ごしてきてしまったと言うのが的確だろうか。美容のことである。
当然、きれいでいたいとは思う。41歳ともなれば、これまでにお肌の曲がり角を何度曲がったかしれない。あらゆるダイエットに挑戦していた自分が、中年になって痩せぎすの悩みを抱えるとは想像もしていなかった。コスメや美容器具、インナーケアやサロン通いに散財したこともあったが、同じものを使っても、友人が話すように、SNSで見るように、「幸せ♡」な気持ちが自分の内側から湧いてこない。「ほんとに効くの?」と疑心暗鬼で気ばかりせくから、ケアタイムがどんどん苦痛になっていく。だから結局、続かない。
シーズンごとにあまた更新される美容情報の、いったい何を選んだらいいのか。いったい何が、私をきれいにしてくれるのか。「よい」の基準が致命的にわからないのだ。
『今から、これから。好きを感じる美容と生活』は、まず生活があって美容なのだ、ということを、著者の経験をもとに綴る。
朝昼夜、春夏秋冬、星の流れ、月のめぐりに身を任せるように暮らすことがいかに心地よいかを伝え、そのうえで、暮らしをサポートするオーガニックコスメが紹介されるという構成だ。
2020年から大きく変わった状況のなかで、著者の福本さんが身につけざるを得なかった「バランス」や「流れに身を任せる」姿勢。活力となる香りや温度。
ひどい肌荒れにより仕事をキャンセルせざるを得なくなったことで気づいた、立ち止まることの必要性。自然治癒力の偉大さ。
排卵や生理のサイクルを波乗りのように乗りこなすことで、体と仲良くなれること…。とりわけ、〈何かを選ぶことよりも、選ばないことをはっきりさせる〉という考え方は、費やすほどよくなる、重ねるほどよくなると思い込んでいた私の美容基準を覆すものだった。美しさをつかみ取りに行く貪欲さのないことに驚きながら、こんなふうに、生活に溶け込むような美容ケアならしてみたいと自然に思えた。
流行に流されない、インスタントな美を求めない…など、自分なりに“選ばないこと”のいくつかをはっきりさせたうえで、「よい」の基準を「心地よい」にした私が、まず生活に取り入れた #敦子スメ がある。
「ちゃんと感じて生きる生活」という章でで紹介されていた、ボディマッサージブラシだ。
一日が始まる朝は、浄化の時間。足裏から始めて、ふくらはぎ、太もも、背中、腕、首回り…と全身ゆっくりドライブラッシングしているうちに、血がめぐって頭がクリアになっていく。クリームもオイルも塗っていないのに、肌自体にハリが出て、キメも細かくなったよう。
さてこのブラシ。まずここからと選んだ理由は、寝覚めの悪さがもたらす朝の仕事の効率の悪さを改善したかったから。生活の軸がとことん仕事にあることに呆れつつも、40を超えて目覚めた美容探求に、年がいもなく胸踊らせている。
1980年生まれ。中央大学大学院にて太宰治を研究。10代から雑誌の読者モデルとして活躍、2005年よりタレント活動開始。文筆業のほか、ブックディレクション、イベントプランナーとして数々のプロジェクトを手がける。2021年8月より「COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)」をスタート。
文/木村綾子 編集/国分美由紀