今週のエンパワメントワード「鏡よ鏡、待って、言わないで 自分が可愛いってわかっているから」ー『Juice』より_1

Cuz I Love You/コズ・アイ・ラヴ・ユー』Lizzo  ¥2178/ワーナーミュージックジャパン

Written by Melissa "Lizzo" Jefferson,Eric Frederic, Theron Thomas
Produced by Ricky Reed
対訳:Yumi Parks

Lizzoのポジティブエナジーで心を解放する

鏡を見るとき、あなたはどんなことを思いますか? 私自身、「スタイルがよければなぁ」「腫れぼったい目が大っ嫌い!」「またニキビができちゃった……」と、自分のコンプレックスばかりに目がいって、鏡の前に立つほどに、自分のことが嫌いになるという時期を過ごしたことも。

もし、あなたもルックスや体型などのコンプレックスがじゃまをして、自分に自信が持てずにいるなら、プラスサイズディーヴァ・Lizzo(リゾ)の音楽を味方にして。鏡に映る、ありのままの自分を受け入れる手助けをしてくれるから。

ゴスペルで培ったソウルフルな歌声、ウイットに富んだ歌詞とダイナミックなパフォーマンスで絶大な支持を得るLizzo。フルート奏者の顔も持つ彼女が、世界中から熱視線を集め始めたのは2019年。一糸まとわずこちらを見つめる姿が目を引く、メジャーデビューアルバム『Cuz I Love You』がリリースされた年だ。人種やジェンダーをはじめ、あらゆる個性を認めようと変化しつつある社会を鼓舞するメッセージが詰まった本作は、第62回グラミー賞で3部門受賞という快挙を達成した。

Lizzoは、2012年頃から欧米圏で始まったボディポジティブムーブメントのアイコンとしても知られる。「ボディポジティブ」とは、画一的な美の価値基準に縛られず、自分のありのままの姿を愛すること。彼女自身も、社会が作り上げた“スリムなボディこそが美しい”という価値観にとらわれて自分を愛せずに悩んだ経験があったからこそ、同じように悩む人たちの自尊心を高める音楽を作り続けている。

さらに最近は、自分の体をポジティブにはとらえられなくても、そういった感情もまるごと受け入れてみようという「ボディニュートラル」の考えも広がっており、その動きも彼女の活動を後押ししている。

Lizzo『Juice』【日本語字幕付き】

そんな彼女のアティチュードがよく表れているのが、『Cuz I Love You』に収録された、80年代風のアップテンポなレトロファンクナンバー『Juice』(日本語で“魅力”という意味)だ。この曲は、“心の持ち方”を教えてくれている。

曲中で最も印象的なのが、グリム童話『白雪姫』をパロディした冒頭のリリック〈鏡よ鏡、待って、言わないで 自分が可愛いってわかっているから〉。“自分が美しいかは、自分で決める”と自信たっぷりに歌う。社会や他者からの「こうあるべき」に惑わされるのではなく、美しさは自分が決められるものだと気づかされる。固定観念から解き放たれて、ありのまま自分を受け入れたら、鏡の前での過ごし方が変わるはず。

世界的な音楽フェス「Glastonbury Festival」(2019年)で『Juice』を、トレードマークであるレオタードスタイルでパフォーマンス。得意のフルート演奏やトゥワーク(お尻を振るダンス)も披露する場面も。彼女が持つポジティブヴァイブスをこれでもかと感じられる。

Lizzoの楽曲をチェック!

海渡理恵

ライター

海渡理恵

女性誌を中心に活躍。音楽・アジアのエンタメに詳しく、K-POPを中心に、国内外のアーティストインタビューの経験が豊富。また、ライフスタイルやフードなど、カルチャー関連の記事も数多く執筆している。最近は、UKのアーティストと韓国のシンガーソングライターに夢中。

文/海渡理恵 編集/国分美由紀