never young beachのアルバム『ありがとう』を聴いて、今度の休日は大切な存在に会いに行こう
私にはずっと消えないひとつの後悔がある。それは忙しさや距離を理由に、一人で暮らす祖母に1年半以上も会いに帰らなかったことだ。電話越しに「長いこと顔を見てないね」と言われても、「仕事が落ち着いたら帰るね」と返すだけ。そんなことを続けていたある日、祖母は帰らぬ人となった。never young beachの『帰ろう』は、目先の忙しさに翻弄されて、大切な存在を見失いかけているときに聴きたい一曲だ。繰り返される〈あなたのそばに 帰ろう〉が、いちばん大事にすべき存在を思い出させてくれる。
2014年春に結成されたバンド、never young beach(通称、ネバヤン)。Vo.&Gt.安部勇磨が生み出す、日常の悲喜こもごもを描いた、ノスタルジックながら新しい音楽で、国内外から支持されている。そんなバンドが、約4年ぶりとなるアルバム『ありがとう』を発売。笑顔の大切さを歌った『哀しいことばかり』や、ありのままに生きることを後押しする『こころのままに』など、ストレートな言葉でつづられた優しさにあふれる楽曲がそろい、ささくれ立った心をゆっくりと整えてくれる。
never young beach - 帰ろう Kaerou (Official Audio)
アルバムのラスト飾る『帰ろう』は、軽快なサウンドにのった安部のやわらかな歌声が、忙しない日常に区切りをつけて、あなたにとって大事なもののもとへ“帰ろう”と投げかける。
SNS時代になり、オンラインコミュニケーションが当たり前になった現代。もちろん、いつでも連絡を取り合えることは素晴らしいことだ。でも、そればかりになってはいないだろうか。“会って、話すこと”は、オンライン上ではわからない、ちょっとした視線や表情の変化、しぐさ、ジェスチャーや声のトーンなどを通して、相手の繊細な感情の動きを受け取り、本音を知ることができる。そうした対面ならではのノンバーバル(非言語)コミュニケーションは、大切な存在との関係を深め、長く記憶に残る思い出作りにもつながる。
〈あなたのそばに 帰ろう〉
今、あなたの頭に浮かぶのは、誰の顔だろうか。次の休日は、その人のもとへと帰ろう。きっと心温まるひとときが待っているから。
never young beachの『ありがとう』をチェック
文/海渡理恵 編集/国分美由紀