体が疲れているとき、自分の体臭が普段とはちょっと違うような気が…。それはもしかしたら、最近巷で話題の「疲労臭」かもしれません。その気になる正体や原因、今日からでもできる予防策を、医師でニオイ評論家の桐村里紗先生に伺いました!
ところで「疲労臭」っていったいどんなニオイ?
なんだか最近疲れがたまっているなぁというあなた、いつもの自分とは違う体臭を感じることはありませんか? 汗とは違う、ちょっとツンとするニオイ。それこそがまさに「疲労臭」です。桐村先生によると、「疲労臭とは、体に疲労が蓄積したときに発生するニオイで、通常は体内で発生したアンモニア臭を指します。菌が汗を分解するときににおう“汗臭”や、皮脂成分が酸化することで発生する“加齢臭”などとは異なり、原因が体の中にあることが特徴で、年齢には関係なくあるものです」とのこと。
また、このアンモニア臭に加えて、精神的なストレスが原因で発生する「STチオジメタン」という成分によるネギのようなニオイが混ざり合うと、より体臭がキツくなってしまうこともあるそうです。体の疲れに加えて精神的な疲労も…という人は要注意かも!?
ニオイで健康状態がわかる!? 疲労臭が発生する原因とメカニズム
体が疲れているときに発生するという「疲労臭」。いったいどんなメカニズムでアンモニア臭がするのでしょうか?
「『疲労臭』の原因となるアンモニアは、タンパク質が腸で分解されるときに作られます。健康な人であれば、これが肝臓で分解されて無毒化・無臭化されますが、疲労やストレスにより肝機能が低下すると、このアンモニアが分解できないまま血液から汗の中に排出され、皮膚ガスとして全身から発生するのです」
アルコールをたくさん飲む人や薬剤を摂取している人なども肝機能が弱まっている恐れがあり、「疲労臭」と同じニオイが発生しやすいといいます。
桐村先生いわく「ニオイは健康のバロメーター」。「体臭は、体内や腸内環境の異常によって悪化している場合があります。手っ取り早くどうにかしようと、制汗剤などで表面だけのケアに走りがちですが、それでは根本的な解決にはなりません。ニオイを発生させている原因はなんなのか、まずは体の内側に目を向けてみることが大切です」
こんな人がにおいやすい! あなたの「疲労臭」危険度をチェック
「いつもと違う体臭を感じたら、ニオイを引き起こす習慣がないか考えてみてほしい」と桐村先生。そこで、「疲労臭」を引き起こしやすい行動や習慣をリストアップ! 日頃の生活を振り返りながら、以下の項目をチェックしてみて。
✔︎1.お酒をよく飲む
✔︎2.肉が大好きでよく食べる
✔︎3.日常的に体がだるい
✔︎4.ストレスが多い
✔︎5.夜更かしが多い
ひとつでも当てはまればリスクあり、ふたつ以上当てはまる方は要注意です。次の対処法と予防策を参考に、自分に合ったニオイケアを見つけましょう!
笑う・深呼吸する・入浴する。疲労臭を予防する生活術とは
疲れをためないことがいちばん…とわかってはいるものの、毎日何かと忙しい私たちにとってはなかなか難しいこと。それでも、日常のちょっとした心がけで「疲労臭」は抑えることができると桐村先生。今日からでも取り組めそうな、疲労臭の予防策を教えていただきました!
●自分に合ったやり方で上手にストレスリリース
まず、大切なのはやはりストレスケア。「心身にストレスがかかると、肝臓の働きは急激に落ちてしまいます。どのくらい早く落ちるのかというと、ストレスを受けたその日中にアンモニア臭が発生するほどです」(桐村先生)。また、ストレスは体を酸化させることにもつながり、皮脂のニオイも強くしてしまうのだそう。
そこで、桐村先生がおすすめするストレスリリース法は、「笑う」「深呼吸」「入浴」。クスッと笑える動画を見たり、仕事の合間に大きく深呼吸したりするだけでもOKです。また、「『入浴』は40度未満の少しぬるめの温度のほうがリラックスには効果的」と桐村先生。「エプソムソルトなどのマグネシウムをお湯に入れると、血管も筋肉も緩めてくれ、より心身がほぐれやすくなりますよ」
さらに、アロマを取り入れる方法も。「ストレスケアにおすすめの香りは、リラックス効果の高いラベンダー、メリッサなど。ただし、嫌いなニオイを無理に嗅ぐのはNG。自分が好きな香りや心地よいと感じる香りを選ぶのがいいでしょう」
●規則正しい生活で自律神経を整える
自律神経の働きは内臓を動かす基本。睡眠や食事など、規則正しく健康的な生活を心がけ、自律神経を整えることが、ストレスや疲労の回復に役立ちます。「特に睡眠は、心身を修復するための大切な時間。寝る前にはパソコンやスマホから離れ、脳や目を休ませ、リラックスするように努めましょう。副交感神経が優位になることで入眠がスムーズになり、睡眠の質も上がります」
●肝臓への負担は禁物! お酒の飲みすぎに注意
アルコールは肝臓で分解されるため、過剰な飲酒は肝臓に負担をかける要因になります。また、体内で分解しきれなかったアルコールは、口臭や汗のニオイとなって発散されてしまうこともあるのだそう。「適量を心がけ、肝臓に負担をかけないようにすることが大切です。疲れやストレスによるヤケ酒は禁物ですよ!」
●食事は食物繊維を意識。腸内環境を整える
肉などの動物性のタンパク質は消化に負担がかかるため、疲労やストレスで腸や肝機能の働きが低下していると、消化や分解が追いつかなくなってしまうのだそう。「腸内で分解しきれなかったタンパク質は腐敗が進み、悪玉菌も増えてしまいます。それが有害なニオイのもとになるのです」(桐村先生)
腸内環境を整えるためには、食物繊維やオリゴ糖などを意識的にとること。これらは腸の中の「善玉菌」を増やし、アンモニアを作る「悪玉菌」を減らしてくれます。「肉や乳製品などの動物性タンパク質は過剰にとらないよう注意し、豆やきのこ類、イモ類など、食物繊維の多いものを積極的にとりましょう」
先生&編集部おすすめ!「疲労臭」対策に使いたいケアアイテム
「体臭が変化するのは、よほど疲れているというサイン。体が悲鳴を上げていると思って、自分をいたわるようにしてください」と桐村先生。日々、ストレスがたまらないようリフレッシュを心がけるのに加えて、リラクゼーションにおすすめのアイテムをご紹介いただきました。
●ピローミスト
ラベンダーやカモミール、ゼラニウムなどの精油を配合したアロマスプレー。日中の活発な頭と体から、眠る準備へと切り替える香りです。寝室や枕などに。「自律神経を整えたい人におすすめ。夜寝る前に使うことでリラックスして眠りにつけますよ」(桐村先生)
グッドナイトピローミスト 45mL ¥3,190/ニールズヤード レメディーズ 0120-316-999
●エプソムソルト
国内で精製した高純度のマグネシウムを使用したエプソムソルト。「マグネシウムは、睡眠ホルモンの分泌に必須です。また、血流を改善し、筋肉をほぐしてリラックスをもたらしてくれます」(桐村先生)
エプソムソルト(浴用)750g ジャスミンほか ¥2,200/GRASSE TOKYO 03-6821-6211
内科医/tenrai代表取締役医師
最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療を行う。また、「プラネタリーヘルス」や「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決や世界の最新ヘルストレンド情報をさまざまなメディアで発信するほか、プロダクト監修も行う。ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』『腸と森の「土」を育てる~微生物が健康にする人と環境』(いずれも光文社新書)など。
構成・文/秦レンナ イラスト/くらちなつき