VIO脱毛をすべきかどうか、夏の水着シーズンを前に迷っている人も多いのではないでしょうか。VIO脱毛のメリット&デメリットや、どんな人におすすめかを東京銀座で美容婦人科クリニックを開業している喜田直江先生に聞きました。

喜田直江(きだなおえ)先生

なおえビューティークリニック院長

喜田直江(きだなおえ)先生

京都府立医科大学卒業。産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験。2003年より形成外科医として、形成外科の基本から縫合の技術まで幅広く習得。2006年より大手美容外科にて美容外科・美容皮膚科全般を習得。特に婦人科系の美容手術は、日本でも有数の症例数を誇る。2011年より現職。日本形成外科学会会員、日本性科学会会員、日本抗加齢医学会会員。
なおえビューティークリニック

そもそもVIO脱毛って何?

VIO 脱毛 ハイジニーナ

増田美加(以下、増田):女性だけでなく、男性の間でも広がってきているVIO脱毛。そもそもVIOってなんの略なのですか?

喜田直江先生(以下、喜田先生):VIOとは、形を表しているのです。フェムゾーンのVライン(ビキニライン)、Iライン(大陰唇~会陰部周辺)、Oライン(肛門周辺)のこと。英語の頭文字ではありません。


VIOの全脱毛は、別名ハイジニーナ脱毛とも言われています。ハイジニーナは、衛生・清潔な状態を意味するhygieneに由来しています。海外セレブの間では、アンダーヘア処理は男女ともに常識となっていて、ケアしていない人は不衛生と思われることもあるそうです。海外では、ハイジニーナ宣言をしている有名人も少なくありません。最近は日本の芸能人にも増えているそうです。


ただし、白人で金髪の方は、レーザーが反応しないので、ワックス脱毛や針脱毛が主流。日本のようなレーザー脱毛は、ヘアの色が黒いアジア人が主流です。レーザーは黒にしか反応しないので、金髪や白髪では脱毛できません。

白髪が増えてしまう前の「介護脱毛」!

増田:若い女性や男性の間に広がっているVIO脱毛ですが、最近「介護脱毛」が流行ってきていると聞きます。これはどういうことでしょうか?

喜田先生:介護脱毛とは、介護をされるときのための脱毛という意味です。親御さんを介護する年代になった更年期世代の女性が、親御さんのおしもの世話をしている経験から、自分が年をとって看護師さんやヘルパーさんからおしもの世話をされるときに、陰毛があると清潔を保つのが大変だろうと実感したからだと言います。将来の自分を考えて、アンダーヘアが白髪になる前に脱毛をしようという更年期世代の女性が増えているのは確かです

また、閉経後の女性の半数以上に起こるGSM(閉経関連尿路性器症候群)の尿もれ、頻尿、痛み、乾燥、かゆみなどに対しても、アンダーヘアがないほうがいいのかもしれないと考える方も増えています。GSMの症状で、外陰部と腟の萎縮が進むことで、乾燥してヒリヒリ痛かったりかゆかったりするときに、外陰部の保湿をするためには、アンダーヘアが邪魔になるという面もあるでしょう。

VIO脱毛のメリットや副反応のリスクは?

増田:アンダーヘアには、役割がないのでしょうか? 脱毛処理してしまうと困ることがあるのではないかと心配する人もいます。

喜田先生:昔はアンダーヘアによる保温性があったのかもしれませんが、現代では環境や衣服も進化し、アンダーヘアがある意義はなくなっています。脱毛によって、フェムゾーンを清潔に保つことができますし、フェムゾーンの皮膚を直接見ることもできます。

たとえば、フェムゾーンには性感染症、パジェット病などの皮膚がん、鼠径部水虫、水イボなどの病気もあります。自分のフェムゾーンを見たことがない人は、病気の早期発見のためにも、しっかり見ておくことが大切です。ほかにも、VIO脱毛のメリットには、見た目の美しさ、清潔・におい対策、カミソリ負け防止、肌あれ予防があります。

増田:リスクや副反応はありますか?

喜田先生:リスクはほとんどありませんが、レーザー照射ですので、熱によるやけどが起こることはゼロではありません。冷却装置を使用して照射していますが、肌の色が濃い方や日焼けをされている方、乾燥肌の方は可能性が高いですのでご相談ください。

人によっては照射直後に毛穴の周囲に一時的な赤みが出ることがありますがこれは数日間で消失します。また、体毛の濃い方、じんましん体質の方は、毛嚢炎といって、一時的にニキビのようなものができることがあります。ですが、これも1~2週間で治ることがほとんどです。

ほかには、レーザー照射後の炎症や摩擦によって、色素沈着が起こることがあります。脱毛期間中は、強い摩擦や日焼けは避けてください。私もVIO全脱毛していますが、デメリットは感じていません。

VIO脱毛できない人はいるの?

増田:レーザー脱毛ができない人はどのような人でしょうか?

喜田先生:光線過敏症(日光アレルギー)の人、激しい日焼け直後の人、照射を希望する部位に未治療の感染症や皮膚の炎症がある人、真性ケロイドの人(肥厚性瘢痕は施術可能)、心疾患、出血性疾患、てんかん発作の既往がある人は、施術できない可能性があります。妊娠中の方もできません。

VIO脱毛する前には、まず、皮膚科の医師が診察をして、できるかどうかを判断します。軽い光線過敏症で湿疹や傷があっても、きちんと治療を受け肌状態が改善すれば施術はできる可能性があります。アトピー性皮膚炎の方も、医師の判断によってレーザー脱毛可能な場合もあります。心配な場合は、脱毛を行うクリニックのカウンセリングで相談してみてください。

色素性母斑、濃いホクロ、炎症性のあるニキビに対しても、レーザー照射はできませんが、その部分だけテープで保護して行わせていただく方もいます。

VIO 脱毛 メリット 副反応

温泉で人の目は気にならない?

増田:「温泉で人に見られたら恥ずかしい」という人もいますが、そういう人は、最初は人から見えるVラインだけ残すという方法もありますか?

喜田先生:そうですね。脱毛するのはいつでもできますから、IとOだけをまず試してみて、よいと思ったらVだけあとで脱毛して、全脱毛にしてもいいと思います。ただ、最近はほとんど残す方はいなくて、VIO全脱毛という方が圧倒的に多いです。特に更年期前の若い世代は、全脱毛派が多数。また、介護脱毛を考える更年期世代の方も、全脱毛を選択します。

少数派ですが、Vを一部残す方もいて、その場合はオーソドックスな逆三角形や卵型や楕円型などの形を決めます。I部分も少しだけ残すことを希望される方もいます。水着を着る機会が多い方や下着を楽しみたい方は、面積が少ない細めの形がいいと思います。

増田:私も更年期にVIO全脱毛を行い、VIO脱毛を決めたときからVを残す気持ちはありませんでした。ないほうがきれいに洗えて清潔で、保湿もしやすいと思ったからです。VIO全脱毛してみると、逆に温泉でヘアの残っている方を見ると目がいってしまいます。VIO全脱毛したことで、常に清潔に保てますし、保湿クリームなどの浸透もよく、お手入れもしやすいです。

毛量の多い方には特におすすめ

増田:VIO脱毛が特におすすめの人は、特にどんな人でしょうか?

喜田先生:衛生面を考えたら、すべての人におすすめしたいです。アンダーヘアは衛生的に保つのが大変です。汗、汚れ、尿、便がつきますので、アンダーヘアがないほうが衛生的に維持できます。特に、毛量が多い方は、毎日衛生的にケアしたり、ご自分で処理するのも大変だと思います。VIO脱毛は、更年期になってアンダーヘアの色が薄く茶色っぽくなっていったり、白髪が増えたりするとレーザー脱毛ができなくなってしまいます。

先ほどもお話したように、レーザー脱毛は、黒色にだけ吸収される波長のレーザーを照射します。毛根周囲に存在する毛を作り出す組織(毛乳頭や毛包幹細胞)に、熱によるダメージを与えることで脱毛するのです。行いたい方は、白髪が増えてしまう前に行ってください。

昔のVIO脱毛は、痛みが強いためあきらめてしまう方も多かったのですが、今は、痛みの少ないダイオードレーザーがありますので、継続しやすくなっています。 また、VIO照射は体勢を取るのが難しいので照射モレがおきやすいのですが、当院では婦人科の診察台で照射することで広い視野を確保し、照射モレを防ぐようにしています。

シェーバーでのセルフケアは?

VIO 脱毛 シェーバー セルフケア

増田:VIO脱毛をシェーバーでセルフケアするのはどうなのでしょうか?

喜田先生:まずは自分で脱毛ケアするのはいいと思います。最近では、高機能のVIO専用のシェーバーや肌に優しいフェムゾーン用のフォームも販売されていますので、おすすめです。カミソリだと肌を傷つける可能性があるので、できれば専用のシェーバーを使ってください。自分でケアして、VIO脱毛の便利さやよさを実感してから、さらなる快適性を求めて医療脱毛を決断するのもいいと思います。

増田:次回は、クリニックとサロン脱毛の違い、費用、施術準備や施術後のケアについて、引き続き喜田先生に伺います。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

イラスト/大内郁美 取材・文/増田美加 構成/福井小夜子(yoi)