薄毛、抜け毛はエストロゲンの減少が原因のひとつではありますが、生活習慣やヘアケアの改善で抜け毛を緩やかにすることが可能です。それでも困ったら、毛髪外来などを受診してみましょう。8の人に効果が見られるという薬剤治療についても、頭髪治療専門クリニックの医師に聞きました。

浜中聡子 (はまなかさとこ)先生

クレアージュ総院長 兼 クレアージュ東京院長

浜中聡子 (はまなかさとこ)先生

医学博士。北里大学医学部卒業。北里大学大学院医療系研究科 臨床医科学群精神科学修了。国際アンチエイジング医学会(WOSAAM)専門医、米国抗加齢医学会(A4M)専門医、日本抗加齢医学会専門医ほか。女性の頭髪治療専門クリニックとして、開院以来60万人以上の悩みと向き合い、丁寧な診療で多くの女性からの支持を得ている。

抜け毛スピードを緩やかにするには食事、睡眠、運動を意識して

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増田美加(以下、増田):地肌が透けて見える、髪が細くなりボリュームがない、年齢を重ねた場合だけでなく、20代~30代の若い世代でも髪の悩みが増えています。薄毛や抜け毛が気になったら、日常生活でどのように対処すればいいでしょうか?

浜中聡子先生(以下、浜中先生)
: 抜け毛を減らすには食事、睡眠、運動がとても大事です。まず食事ですが、髪にとって最も重要なのはタンパク質です。動物性タンパク質も植物性タンパク質もバランスよく摂り、健やかな髪を育てるために、亜鉛、銅、鉄、ビタミンB群などもしっかり補充してください。

海藻などの“黒いもの”を食べても、髪には影響しません。それよりも高タンパク、低脂肪のバランスの良い食事が大事です。

次に睡眠。髪の成長に欠かせない成長ホルモンの分泌に、睡眠は深く関係しています。なるべく日付が変わる前にベッドに入り、6~7時間の睡眠を目指しましょう。

有酸素運動は、髪に栄養や酸素を供給する血流アップにつながります。

セルフケアの基本はシャンプーの方法です

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増田:カラーリングやパーマ剤が、抜け毛や薄毛につながることはありますか?

浜中先生:頻度やカラー剤の質などを考えて負担を最小限とし、頭皮トラブルや髪の傷みを引き起こさない工夫をして、上手におしゃれと両立させてください。

紫外線の多い季節には、日傘や帽子で紫外線対策をすることも大事です。長時間、紫外線にさらされるときは、髪用のUVカットスプレーも良いでしょう。ただし、夜しっかり洗い流すことを忘れずに。

日常的な毛髪ケアとしては、まず何より正しくシャンプーできているかを見直しましょう。案外、正しく洗えていない方も少なくありません。

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正しいシャンプー、できていますか?

浜中先生:シャンプーは基本的に1日1回で十分です。シャンプー前にブラッシングをします。シャンプーは、髪より頭皮を洗うことを意識しましょう。スタイリング剤などで泡立ちが悪い場合や油分、臭いが気になったら、二度洗いをします。洗い忘れや流し忘れは頭皮トラブルのもとです。特に、襟足や後頭部は注意しましょう。お湯は38℃程度がおすすめです。42℃を超えると、必要な皮脂や水分まで奪ってしまうこともあります。正しいシャンプーができているか、以下の5つのポイントをチェックしてください。

①しっかり頭皮を濡らし、予洗いをする


髪だけではなく、しっかり頭皮を濡らし、まずはお湯だけで頭皮を軽く洗います。


 ②手の上でシャンプーを泡立てる


髪に直接シャンプーを付けてゴシゴシと泡立てると摩擦が生じ、頭皮にダメージを与えてしまいます。


 ③洗い方は頭の後ろからおでこに向かって


襟足⇒後頭部 ⇒ 側頭部 ⇒ 頭頂部⇒前頭部 ⇒ 生え際の順に、こすらず、地肌が動く程度の力で、マッサージするように洗います。


 ④毛の流れに逆らうようにすすぐ


シャワーは、下から上に向けて、髪の毛の流れに逆らうように流します。シャンプーやトリートメントが頭皮に残らないように注意して下さい。


 ⑤髪ではなく、頭皮を乾かす


お風呂から出たら、細菌が繁殖する前にすぐに乾かします。ドライヤーは10~20㎝程度離して、乾きにくい髪の根元から風を当てます。根元から毛先に向けて、指をぬきながら乾かすことで不必要な抜け毛を防ぎます。

ミノキシジルで7~8割に効果が!

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増田:医療機関は、何科にかかるのがいいでしょうか? どのような治療ができますか?

浜中先生脱毛症外来、毛髪外来のある医療機関で、発毛専門医にかかるのがおすすめです。健康保険は、円形脱毛症の一部にしか使えず、自費診療が基本になります。

治療法と費用を考えて選ぶことも大切です。医療機関ではカウンセリング、頭部写真撮影、診察、血液検査、血圧測定などの検査を行います。

女性に多い「びまん性脱毛症」(⇒VOL101)であれば、発毛効果が証明されている「ミノキシジル」で7~8割が改善します。軽い段階なら、「ミノキシジル」外用薬を使い、状態に応じて外用薬に内服薬を組み合わせたり、点滴や医療用サプリメントを使ったりすることもあります。

他にHARG療法、PRP療法、メソセラピー、自毛植毛などがあります。費用対効果を十分検討して、十分納得してから行うことが大切です。

増田:ミノキシジルを使った治療は、どのくらいで効果が出ますか?

浜中先生:びまん性脱毛症には、発毛効果が証明されているミノキシジルの外用薬、内服薬を中心に治療しますが、頭髪治療はヘアサイクルの関係があるため、即時的に効果が出るわけではありません。効果が現れるまでに、平均6カ月はかかりますが、先ほどお話ししたように、約8割に発毛が見られます。

効果を持続させるには、薬を継続する必要があります。症状によりますが、当院では月1回の来院で月額1万5千円~3万円(薬代含む)が治療費用の目安です。

増田:市販のミノキシジルはどうなのでしょうか?

浜中先生女性用の市販のミノキシジルは、濃度が1%です。当院では濃度6%以上を処方しています。

増田:平均6カ月で約8割に発毛が見られるとのことですから、セルフケアで生活習慣やヘアケアの改善を心がけても効果が見られないようでしたら、毛髪外来などを受診してみるのもいいかもしれませんね。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

イラスト/大内郁美 企画・構成・取材・文/増田美加