猫背、巻き肩、スマホ首などの不良姿勢やむくみ、冷え…これらの悩みを解決するには、日常生活のクセで固く癒着した“筋膜”へのアプローチが必要かもしれません。姿勢を整え、自然と痩せやすく不調のない体へと導くメソッド「つまぷる」について、考案者のみっこさんに教えてもらいました。
心と体のコンディショニングトレーナー
オンラインレッスン「40代からの動けるからだクラブ」主宰。スポーツクラブ、ゴルフスクールパーソナルトレーナー、腰痛治療院整体師を経て独立。5000人以上のクライアントとのセッションの中で考案したセルフ筋膜リリース「つまぷる」が支持を集め、主宰のYouTubeチャンネルは登録者数78.7万人(2025年1月現在)にのぼる。メディア監修も多数手がけるほか、近著に「寝る前2分ゴロ寝つまぷるで勝手やせ! 」(Gakken)。
姿勢も体質も変わる。簡単なのに自然に引き締まるつまぷるがすごい!
──みっこさん考案の「つまぷる」はどんなメソッドか教えてください。
みっこさん(以下、みっこ):体の硬い部分をつまんでぷるぷる揺らすだけの簡単なメソッドで、日々の姿勢のクセでよれて固まり、ひきつれ状態で癒着した筋膜をはがすことを目的としています。
──なぜ、筋膜にアプローチするのでしょうか?
筋膜は、筋肉と脂肪の間にあり、筋肉を覆っています。例えるなら、全身を覆う、伸縮性の高いボディースーツみたいなもので、「第2の骨格」といわれ、全身を支えているんです。
しかし、長時間同じ姿勢でいたり、日常的に動かさない場所があったりすると、その部分の血液やリンパの流れが悪化し、筋膜に水分や血液が行き届かなくなり、筋膜同士がくっつき、ひきつれ状態で癒着します。その結果、体を伸ばしにくくなり、その場所の筋肉の動きがますます悪化し、脂肪がたまっていきます。
筋膜は脂肪と筋肉の間にあり、脂肪をしっかりとつまんで揺らすことで、ひきつれた筋膜をほぐすことができます。右のイラストのように、猫背が常態化すると、みぞおちや下腹の筋肉がひきつれて癒着し、猫背が固定され、お腹はますます使われず、脂肪が蓄積する悪循環に。
みっこ:そんな状態で運動をしても、使いたい部分やその周辺の筋肉、特にインナーマッスルを使えないので、なかなか体は引き締まりません。姿勢改善のためにピラティスやヨガ、ストレッチに取り組む方も多いですが、筋膜がひきつれた状態では、思い通りに体を動かせないし、筋肉を伸ばすのに無駄な力みが生じ、疲労感につながることも。
そこで、つまぷるによって筋膜のひきつれをはがし、筋肉の動きをよくすることで、ただ歩くだけでもウエストの筋肉が使えたり、手を伸ばす動作ひとつとっても、お腹や背中の筋肉が使えるようになります。つまり、同じ動きをしても、つまぷるをすることで、使える筋肉が変わり、自然と痩せやすい体になるんです。
もちろん、血流もよくなるので、肩こりや首こりといった体の不調の改善にも効果を発揮します。
──つまぷるはどのくらい続けると効果が実感できるか、目安はありますか?
みっこ:個人差はありますが、即効性が高いのがつまぷるのうれしいポイント。正月太りといわれる短期的な体重増加は、むくみが大きな原因なので、つまぷるで筋膜をはがし、血液、リンパが流れることで改善に向かうことが多いです。
また、基本のやり方を覚えればあらゆる部位に応用でき、例えば首につまぷるをすると、した側としていない側で首の倒しやすさに差があることが実感してもらえると思います。
効果をその場で実感できることは継続のモチベーションにもなり、続けることで体も必ず変わっていきます。
筋膜の癒着はやっぱり年を重ねるほどに悪化するので、年を重ねてからのダイエットでつまぷるはマスト。でも、20代、30代で太ってはいないけれどお腹が出ているという人や、巻き肩や猫背でなかなか洋服がしっくりこないという人も、つまぷるをすることで体重は変わらないけれど、体の形が変わることで印象が大きく変わります。
姿勢改善の副産物として、体の不調改善や引き締め効果を得られるといういいことずくめのメソッドなんですよ。
今や世代問わず、運動不足で筋膜が癒着しやすいライフスタイルを送っている人は多いと思います。つまぷるを日々の習慣に取り入れて、本来の姿勢を取り戻し、動きやすく、引き締まった、不調のない体をラクして手に入れましょう!
下腹ぽっこりを改善! 痩せやすい体へ導く基本のつまぷる
──ここからはつまぷるの実践方法を教えてください。
みっこ:今回は、つまぷるの基本のやり方と、腹筋全体を活性化する脇腹つまぷる、下腹ぽっこりにアプローチする下腹ほぐし、顔のむくみに効く耳ほぐし、首ほぐしを紹介します。
お正月明けでやる気が出ないな〜という人もご心配なく。すべて寝たままできるので、頑張らずにゆるく続けてみてください!
まずはつまぷるの基本のやり方と全身に影響する腹部の筋膜をリリースするつまぷるを紹介します。脇腹をほぐすことで全身を動かしやすく、さらに下腹をリリースすることで、ぽっこりお腹に集中アプローチしていきます。
つまぷるの基本のやり方
① 脂肪をできるだけ集めてつまむ。
② 脂肪をゆらす。
③ 脂肪をつまんだまま、つまんだ部位を伸ばす。
つまぷるのコツ
・脂肪は分厚くつまむ(脂肪が二段になるのはNG)。
・つまむ強さは、大福からあんがはみ出さないくらいが目安。
・つまみにくいときは体を倒したり、皮膚をさすって動くようになってからつまむ。
・ビフォーアフターで動きやすさの変化を確認する。
脇腹つまぷるのやり方
① あお向けで両膝を立て、両手で右の脇腹の脂肪をつまんで揺らす。つまむ場所を変えながら15秒間続ける。
② 脂肪をつまんだまま、両膝を左に倒しながら、手を上に滑らせ、脇腹が伸びることでつまんでいた脂肪が手から離れていく。場所を変えながら15秒間続ける。
③ 左脚を伸ばし、右膝は約90度に曲げて左に倒し、左手で右膝を押さえる。右手は右斜め上、遠くに伸ばし、右膝と右手で引っ張り合いながらウエストのひねりを感じる。視線は右手の指先へ。30秒キープしたら①〜③を左右を変えて行う。
下腹ほぐしのやり方
① あお向けで両膝を立て、両手で右下腹の脂肪をつまんで揺らす。つまむ場所を変えながら15秒間続ける。
② 脂肪をつまんだまま右膝を伸ばし、手を上に滑らせ、下腹が伸びることでつまんでいた脂肪が手から離れていく。場所を変えながら15秒間続けたら、左右を変えて①〜②を行う。
③ ばんざいをするように両手足を同時に伸ばし、かかとを押し出す。下腹の伸びを感じながら30秒間深呼吸を続ける。
顔のむくみをすっきり! 即効性抜群の耳&首つまぷる
みっこ:顔まわりのむくみ改善には、顔そのものより、耳や首といった顔まわりの部分をほぐすことで顔の血液、リンパの流れを促すのが◎。血色感アップや首こり改善にも効果的です。
お腹まわりのつまぷるついでに、寝たままこちらも実践してみてください。
顔のむくみに効く、耳ほぐし
① 両手で両耳の中心部をつかみ、外側に引っ張る。
② ①の状態をキープしたまま大きく口を開き「あ」→「い」→「あ」→「い」と繰り返す。
顔むくみに効く、首ほぐし
① 顔を横に向けると浮き出る胸鎖乳突筋を上から順番につまんで揺らすを繰り返す。
撮影/三浦晴 イラスト/フジノマ 取材・文/長谷日向子