今の日本は、地震や災害がいつ自分の身に起こってもおかしくない状況です。災害の備えの情報はたくさんありますが、自分の生活スタイルに最適な備えがわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、災害看護のエキスパートであり、神戸市看護大学教授である神原先生に取材。一人暮らしの女性が防災リュックを選ぶのに必要な知識や市販のおすすめ防災リュック、その中身についても詳しく教えていただきました。
神戸市看護大学
コミュニティとつながり災害に強いライフスタイルを共に創る看護学のパイオニア。気候変動や災害リスクが健康(Wellbeing)に与える影響を研究し、国内外の生活文化に根ざしながら、新しいテクノロジーを取り入れた包摂的なケアの実践を展開している。多様な暮らしを支える環境づくりと、社会的ケアの実装に取り組み、よりresilient(強靭)な未来を目指す。
- 一人暮らしの女性におすすめの防災リュックとは?
- おすすめ防災リュックは「LA・PITA 防災セット SHELTER プレミアム」
- 防災リュックの中身をポーチ別にチェック!
- 食料と長期保存水の「白ポーチ」、電源や情報収集ツールが入った「オレンジポーチ」の中身
- 衛生用品入りの「緑ポーチ」、休息や睡眠をサポートする「水色ポーチ」の中身
- 緊急時に役立つ「赤ポーチ」の中身と「ウォーターバッグ」
- 一人暮らしの女性なら、これも防災リュックにイン!神原先生のおすすめグッズ
- 生理用品やフェムケアアイテム
- 赤ちゃん用のお尻拭き/腹持ちのいいプロテインバーや自分の好きなおやつ
- 飲みなれている常備薬/普段から使っている医療機器

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一人暮らしの女性におすすめの防災リュックとは?
神原先生:最近は各所で災害に遭うことが増えているので、防災リュックもさまざまなタイプが出ていますよね。実際にどれも役立つものです。しかし、防災リュックはただ購入しただけでは意味がありません。いざというときに“本当に使えるかどうか”というチェックが必要。
例えば、一人暮らしの女性の場合、あまりにも大きいリュックでは背負って避難するだけでも負担になってしまいます。水害時は傘をさして避難はできないので、レインコートを着用して避難するなど天候の要素も加味する必要があります。
また、実際に災害現場では、救援物資がすぐに手配されるわけではありません。さらには、毎日自分が使うアイテムも手に入りません。視力が悪い人はメガネやコンタクトが必需品ですし、お年寄りの場合は入れ歯や薬が必要不可欠だったりします。
災害と日常生活を切り離して考えるのではなく、日常生活の先に“災害”があると考えて防災リュックの中身を見直していきましょう。
おすすめ防災リュックは「LA・PITA 防災セット SHELTER プレミアム」

神原先生:一人暮らしの女性におすすめという視点ですと、防災用品のトップメーカーと防災士が共同開発した『LA・PITA 防災セット SHELTER プレミアム 1人用』は、レインコートが標準装備されています。
最近増えている“水害”も想定して、よく考えられたリュックだと思います。カテゴリーごとに、ポーチで分別されているのもよいですね。
防災リュックの中身をポーチ別にチェック!
食料と長期保存水の「白ポーチ」、電源や情報収集ツールが入った「オレンジポーチ」の中身
レトルトおにぎり(五目、うめしそ、昆布)またはアルファ米(白米、わかめ、五目)いずれかを選択・長期保存水 500ml×4本
防災アドバイスブック・単三乾電池・多機能ダイナモラジオライト・防滴調光ランタン(3段階調光)
左)白色ポーチの中身は、レトルトおにぎり(五目、うめしそ、昆布)と長期保存水500ml×4本。おにぎりは、レトルトおにぎりまたは、アルファ米(白米、わかめ、五目)とどちらか選べる。
右)オレンジポーチの中には、最重要アイテムの多機能ダイナモラジオライトがセットイン。AM/FMラジオ・サイレン・スマートフォン充電バッテリー付きの多機能ライトで、ダイナモ機能で手回し発電可能。手持ちのUSB充電ケーブルを外部出力端子に差し込めばデジタルカメラやタブレットも充電できる。
神原先生:災害時は、何よりも情報収集が大切なので、スマホの充電が切れてしまうことを想定しておきましょう。モバイルバッテリーは必需品です。さらに通信が途絶えてしまう可能性もあり、活躍するのが、“ラジオ”です。ラジオ局には非常電源が備えられているため、停電時でも放送が可能。ラジオから情報を得られるように準備を。
また、防災用ランタンはただ明るければよいというものではなく、避難所で生活する場合は自分だけではなく、周囲の人への配慮も必要不可欠になります。そのため、防災用ランタンは調光機能がついたものを選ぶのがベスト。こちらは本が読めるくらいの明るさから、周辺を照らす明るさまで3段階に調光することが可能です。
衛生用品入りの「緑ポーチ」、休息や睡眠をサポートする「水色ポーチ」の中身
コップ付き歯ブラシセット・全身ドライシャンプー・トイレONE・マスク・目かくしポンチョ
エアーマット・レスキュー寝ぶくろ・圧縮タオル・アイマスク・耳栓・レスキューシート
左)神原先生:緑ポーチの中身は、衛生用品。災害時の簡易トイレは、どの防災リュックにも付帯されていますが、肝心なのは“どこで簡易トイレを使用するのか”ということ。そのためにも、目隠し用のポンチョはぜひ準備しておきたいアイテムのひとつ。トイレ時だけでなく着替え、ママの場合は授乳時にも使用できます。そのほかは、全身用ドライシャンプーや歯ブラシ、マスクなどが入っています。必要に応じて旅行用のスキンケアアイテムやボディー用シートなど入れてもいいですね。
右)神原先生:水色ポーチ内の「レスキューシート」は、聞き慣れないかもしれませんが、アルミ製のシートのことを指します。金・銀のリバーシブルで、どの季節でも使える2way仕様が特徴。金色を表面にすれば太陽など外からの熱を吸収して体を温め、銀色を表面にすれば、直射日光や熱を反射させ炎天下でも涼しくなります。
また、避難所など慣れない環境下にいると、肉体的にも精神的にも夜眠れなくなることがあります。少しでも快適に過ごせるように、エアーマットや寝袋、アイマスク、耳栓などが入っていると安心ですよ。
緊急時に役立つ「赤ポーチ」の中身と「ウォーターバッグ」
蓄光ホイッスル・圧縮袋・レインコート・ティッシュ・簡易救急セット
ウォーターバッグ
左)神原先生:雨天には欠かせないレインコートのほかに、大音量の蓄光ホイッスルがセットされています。通常の笛は音を出すときに肺活量が必要ですが、防災用ホイッスルの場合はわずかな空気でも大きな音が出る設計になっています。
ホイッスルの音の大きさの100dBが実際にどの程度かというと、電車が通るときのガード下、騒々しい工場の中に該当する大きさ。さらに蓄光タイプなので、昼間は蛍光灯や太陽光の光を吸収して蓄え、暗闇では備えていた光を放ち、しっかりと光るのが特徴です。
そのほか、圧縮袋やティッシュ、ハサミ不要ですぐに使える救急セットが入っています。家にあるアイテムで防災リュックを備えられることに超したことはありませんが、防災用グッズはいざというとき、すぐに使えることを想定して作られています。すでに防災リュックを準備しているという人も、いま一度中身を確認してみましょう。
右)神原先生:災害時は断水となった場合は、各自給水所や給水車までポリタンクやバケツ、ペットボトルを持参して給水しに行くことになります。飲用水としてはもちろん、生活用水としても使用するため、できるだけ大きいサイズのポリタンクがあるとよいですね。
一人暮らしの女性なら、これも防災リュックにイン!神原先生のおすすめグッズ
生理用品やフェムケアアイテム

神原先生:避難所では、ナプキンが足りなかったという声も耳にします。生理ナプキンは多めに準備しておくのがベスト。また、近頃は吸水ショーツもあるので、併せて用意しておくとよいですね。
また災害時はお風呂に入れないことも多いので、衛生環境が悪化することも課題のひとつ。デリケートゾーンの拭き取りシートもあると便利です。
赤ちゃん用のお尻拭き/腹持ちのいいプロテインバーや自分の好きなおやつ
左)神原先生:水道が止まったり制限されている場合は、手洗いやシャワーを浴びることができません。そこでぜひ準備しておいてほしいのがウェットシートのみならぬ、“赤ちゃん用のお尻拭き”。
赤ちゃん用のお尻拭きは、アルコールが入っていないので肌に優しく、水分もたっぷり。手や体を拭いたり、身の回りの掃除まで叶う万能アイテムです。開封用のシールを剥がすと乾いてしまうので、予め蓋を装着しておくのもおすすめ。
右)神原先生:災害時だからといって、災害用食品を食べなくてはいけないというわけではありません。自分の好きなものを備蓄しておき、消費期限が近づいてきたらおやつ代わりに食べて、また新しいものを入れておく。というのも、立派な備えになります。
片手で食べやすく、腹持ちのよい“羊羹”や“プロテインバー”は、おすすめ。また、災害時は多くの避難所で、皆でお茶を飲みながら健康のこと、不安なことを話して共有する“お茶っこ”という活動が見られました。水だけでなく、ほっと一息つけるティーバッグなどを用意しておくことも心の休息につながりますよ。
飲みなれている常備薬/普段から使っている医療機器
左)神原先生:緊急時にいつも飲み慣れている薬が手に入るとは限りません。特に、ストレスがかかったときに起きやすいPMSや感染症、カンジダやヘルペスの再発なども考えられるので、症状をサポートしてくれる薬があると安心です。
右)神原先生:また、前述のとおり、眼が悪い人にとっては、メガネやコンタクトが必要不可欠ですよね。普段自分が使っていて、“いざというときになくては困るものは何だろう?”と考えることが、防災への入口になります。
撮影/柳 香穂 構成・取材・文/木土さや