阪神・淡路大震災から30年、東日本大震災から14年、そして能登半島地震から丸1年が経ち、大規模災害に対する備えが重要視されています。そんな中、いま注目を集めている資格のひとつが“防災士”。その数は2025年の現在、30万人を突破したそうです。

そこで今回は、現役の防災士としても活躍し、さらに上級救命技能、チャイルドケアプラス(小児救急救護法)、ペット災害危機管理士3級の資格も取得しているアイドル・時東ぁみさんに、防災士を志したきっかけなどを伺いました。

時東ぁみさん

アイドル・防災士

時東ぁみさん

1987 年 9 月 25 日生まれ。東京都出身。「ミスマガジン2005つんく♂賞」受賞をきっかけにデビューし、〝元祖メガネっ娘アイドル〟の愛称で親しまれる。歌手、舞台、イベント、防災士 など幅広く活動する傍ら、防災士の資格を生かしラジオ番組出演。現在は防災イベントの企画も行っている。 

幼い頃から“人を手助けしたい”という気持ちがあった

防災士 アイドル 時東ぁみさん 1

——「ミスマガジン2005つんく♂賞」を受賞し、元祖メガネっ娘アイドルとして活躍されていた時東さん。人を助ける仕事をしたいというお気持ちはいつ頃からあったんですか?


時東さんデビュー当時、私は17歳。進学をするか、それとも芸能活動をするのか迷ったんです。昔から体の不自由な人や、お年寄りにスポーツを教える人になりたくて、進学するなら体育大学と思っていました。

幼い頃から父に“困っている人がいたら助けなさい”と教えられていたので、小学生の頃からゴミ拾いをしたり、知的障害などがあるお年寄りがいらっしゃる施設にお手伝いに行ったり。ボランティア活動が好きだったんです。

そんなある日、父から“とても勉強になるから読んでみろ”って、乙武洋匡さんの著書『五体不満足』を渡されたんです。先天性四肢欠損症で生まれた乙武さんを見て、まわりの人が心配する中、お母様はただ“可愛い”と口にした。

障害を“個性”だと書かれているのを読んで、個性と考えたら、みんなものすごい個性を持っているんだと感じました。


そして、体育大学のオープンキャンパスに行ったときに、パラリンピックの水泳の映像を見せていただいたんです。そこでものすごいスピードで泳いでいる選手を見て、これまでとはまた違う視点が自分に芽生えました。

やっぱり、小さい頃から自分の中にあった、人を助けるという道に進みたい。ただ何かをサポートするのではなく、私自身がずっと得意で好きだったスポーツで伝えたい!と思ったんです。

アイドル 防災士 時東ぁみさん チャリティーの様子

「時東ぁみアジアチャリティープロジェクト」の一環で、ショップリターン商品の靴を販売、寄付を行う活動

つんく♂さんから、「防災士の資格があるよ」って教えてもらいました

——大学に進学したいと周囲の方に伝えたときの反応はどうでしたか?

時東さん:
芸能活動と体育大学への進学を同時にこなすのは、体力的に持たないと止められました。結局大学へは進学せずに、2年ほど芸能活動で忙しい日々を送っていました。でも、本音は人助けしたいという気持ちをあきらめきれない。

そんな私の話は、いつの間にかつんく♂さんの耳にも伝わっていたようで、ある日つんく♂さんから、“そんなに人助けが好きだったら、こんな資格があるよ”と教えてもらったのが防災士だったんです。

——アイドルとして活躍されている中で、やっぱり人助けをしたい、世の中に貢献したいという強い想いを持ち続けていらっしゃったんですね。

時東さん:
芸能活動をしているときも、いま自分ができることをしていたかったんですよね。なので、ライブごとに来て下さったお客さまに、盲導犬のための募金をお願いするといったチャリティー活動はやっていました。

——そこから実際に、防災士の資格を取得されるまでの道のりを教えてください。

時東さん
防災士養成研修と資格取得試験は、2003年から始まった制度です。私が取得したのは2007年のこと。養成研修は丸2日間、朝から夜までみっちり講座がありました。

教本なんて厚さが2cm弱くらいあって、手にした瞬間に“私これ全部覚えるの無理…!”って思ってしまうほど。当時の資格取得者はまだ2万人ほどで、いざ試験会場へ行っても、女性は私くらいしかいなかったんですよ。

 ——2025年では、防災士の資格取得者が30万人を突破したと伺いました。

時東さん:
会社ごとに資格取得を推奨していたり、会社全体で資格を取るという企業さんもいたりして、少しずつではありますが、やっと皆さまが認知してくれる資格になってきたなといううれしい気持ちです!まぁ、まだ女性比率は少ないんですけどね(笑)。

防災って、実はめちゃくちゃアップデートが必要な分野です

防災士 アイドル 時東ぁみさんインタビュー 3

——時東さんは防災士の資格以外にも、上級救命技能、チャイルドケアプラス(小児救急救護法)、ペット災害危機管理士3級の資格もお持ちですよね。

時東さん:
チャイルドケアプラスは、姪っ子を助けたいという想いから。ペット災害危機管理士も同じで、ペットを助けたいという想いから取得しました。

——アイドルのお仕事も続ける中、大切な人を守るために勉強して資格を取ろう!という、その湧き上がるエネルギーに圧倒されます。

時東さん:好きなことを楽しみながらやっているという、ただそれだけなんです。実は最初は、おばあちゃんのためにもホームヘルパーの資格も取得したいなと勝手に思っていたんですが、実務経験が必要で…。こればかりは、芸能活動と防災士を続けながらは難しいと思い、まだ取得できていないんですよね。

アイドル 防災士 時東ぁみさん 防災士のお仕事の様子

地方での防災講演会の様子

——現在の防災士活動についてはどうですか。

時東さん
実は防災って、めちゃくちゃアップデートが必要な分野なんです。少し前まではOKだったことが、いまNGということもたくさん…!

例えば、心肺蘇生では、心臓マッサージをしたあとに口をつけて人工呼吸を行うと習った人も少なくないかもしれません。ところが、次の段階では、人工呼吸は専用のマウスシートを介して行うことになりました。そして現在では、感染症などが流行したこともあり、医療従事者ではない一般の方が救助活動を行う際には、人工呼吸はしなくていいということになったんですよ。


——まったく知らなかったです…!時東さんは、防災に関する情報のアップデートはどうしていらっしゃいますか。

時東さん
これだけ長く防災の仕事をしていると、全国にたくさんの防災仲間がいるんです! 普通に防災士の資格を持っている仲間もいれば、大学教授で救命救急士の指導教員をやっている方も。そして、災害が起きたときは、実際に現地へ行っている仲間が情報を共有してくれるんです。

ニュースではこれが必要と言っているものと、実際の現場では欲しいものが違うということもありますよ。例えば能登半島地震では、食料不足や炊き出しの話題ニュースで流れていましたが、実際にはトイレ環境が間に合わず、大変な状況になっていることが報じられていませんでした。私は防災仲間や色んな人から資金を集めて、トイレのためのビニール袋を大量に買ってもらうようにしていました。

——今後時東さんが目指す、防災士の活動についても教えてください。

時東さん老若男女ペット問わず、笑顔で楽しく防災を学べるようにイベントや講演会、メディアで伝えていきたいですね。

——最後に、読者が防災を身近に感じるためのアドバイスもお願いします。

時東さん
いつ起こるかわからない自然災害に備えて準備するのはめんどくさかったり、何からやったらいいかわからなくて難しいと思われがちですが、自分の命を一番に考えてみてください。

コレがあれば生きていける。コレがなきゃ生活しにくい。そんなこと・モノから備えてみてくださいね。わからなければ、いつでも私に聞いてください!

撮影/柳 香穂 構成・取材・文/木土さや