収束に期待が高まるコロナ禍。でも、巣ごもり生活で体がさびやすい状況が長引いていることで、アフターコロナになっても続く健康被害が不安視されています。

巣ごもり生活で、体がさびやすい状況が発生中!!

教えてくれたのは
上西一弘先生

女子栄養大学 栄養学部教授、栄養学博士

上西一弘先生

専門分野は、栄養生理学。特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究、 骨の健康と栄養、身体計測とライフスタイルをあわせた栄養評価、 スポーツ選手の栄養アセスメントとそれに基づく栄養サポートなど。 著書に、『女子栄養大学のスポーツ栄養教室』(女子栄養大学出版部) 、『たんぱく質量ハンドブック』(日本文芸社) 。

“体がサビる”という言葉を近年よく耳にしますが、それは体内で活性酸素が過剰に発生し、酸化ストレスにさらされている状態のことだそう。

「喫煙、過度な飲酒、精神的ストレスなどにより発生するのが活性酸素。通常は自分の体が本来持つ抗酸化力によって無害化されるのですが、その抗酸化力を活性酸素の量が上回ると健康問題に発展します。さらに酸化ストレスは、細胞の構成パーツである脂質やタンパク質、DNAを傷つけてしまい、細胞レベルで悪影響が生じます。そのため、生活習慣病やがん、老化、疲労、うつ症状などが引き起こされる原因になるのです」と上西先生。



自分の酸化ストレス度が高くなっているかは、専門的な検査をしないかぎり目に見える形で判断できません。まずは、日頃から酸化ストレスがたまりやすい生活をしていないか、チェックリストで確認してみましょう!

酸化ストレスチェック。喫煙、飲酒習慣、野菜やくだものを食べない、高カロリーな食事、運動習慣がない、ストレスを感じる、都市部に住んでいる、紫外線にさらされる時間が長い

自分やまわりの人を見てみると、上のリストにチェックマークが複数つく人が多いと感じませんか? 忙しい現代人は、ただでさえ活性酸素が発生しやすい生活習慣の人が多いと考えられます。それに加えて、コロナ禍で巣ごもり生活が長引いていることで酸化ストレス度がさらに高くなる傾向にあるんだそう。

例えば、あなたは今、こんな不調や心身の変化を感じていませんか?

●不安感の増加や娯楽の機会の減少で、ストレスが増加
●テレワークやオンライン授業に伴う活動量の低下
●自粛による運動不足と在宅中の間食増加によるコロナ太り
●消化吸収力の低下、便秘など腸の不調が発生

こうした状況下で酸化ストレスがたまったままの体を放置していると、コロナ禍が収束したあとも健康問題が続く危険性が!

サビない体をつくるための「食トレ」とは?

コロナ禍で増えている座りっぱなしの生活は、酸化ストレスを高める一因。意識的に歩く時間を増やすなど、適度に体を動かすことが必要。それに加えて、上西先生によると「さびない体をつくるには、発生した活性酸素を無害化する“抗酸化力”をアップさせることも重要です。そのため抗酸化成分を多く含む野菜や果物をたっぷりとり、自分がもともと持つ抗酸化力に上乗せするのをおすすめします」とのこと。

そんなふうに、"食べ物の持つ力"を生かして体調を整えるのが、食事トレーニング、すなわち「食トレ」!

鶏肉、アボカド、野菜の入ったサラダ

ご飯などの主食にプラスして、一日に以下の食品群から10食品とることを目指すのが、食トレの第一歩です。




“食トレ”に大切な10の食品群

魚・油・肉・牛乳・野菜・海藻・いも・卵・大豆・果物


(「さあにぎやか(に)いただく」で覚えよう!)


考案:東京都健康長寿医療センター研究所 



これらをバランスよく食べることができているか、日々の食事内容を見直すこと。食べ物の栄養を意識しながら、自分が食べたもので体がどう変わっていくか認識すること。そうすることによって、体のコンディションを管理しやすくなります。
「10の食品群のなかでも、食材に変化をつけるとなおいいでしょう。例えば、肉なら鶏肉ばかり食べるのではなく、鶏肉・豚肉・牛肉といろんな種類の肉を食べることが、さまざまな栄養を摂取することにもつながります」(上西先生)

注意したいのは、脂質や炭水化物中心の高カロリーな食事や多量の飲酒。これらは酸化ストレスを高める要因に。反対に、積極的にとりたいのはビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化成分を豊富に含む野菜や果物です。

キウイフルーツ

例えば、ビタミンCや食物繊維、カリウムなどが豊富なキウイフルーツ。スーパーで日常的に買える身近なフルーツのなかでは栄養素含有量とバランスがNo.1ともいわれます。



キウイフルーツを摂取することの効果は、酸化ストレスの度合いが一般の人より高くなりやすいアスリートのコンディショニングにおいても証明されているんだとか。「大学の男子陸上の長距離選手を対象とした調査で、キウイフルーツを1日2個摂取したところ、酸化ストレス度・抗酸化力の数値が改善。心理状態の面でも、キウイを摂取しなかったグループと比べて、ネガティブな気分の増加がほぼ見られませんでした」(上西先生)

食物の力をプラスして、抗酸化力アップ! 身近な食材の栄養を意識するところから始める「食トレ」で、サビない体を手に入れましょう。

取材・文/政年美代子 Photo by Jenifoto ,  YelenaYemchuk, Merc67 /iStock/gettyimages