皆さんは、「ファスティング」にどんなイメージを持っていますか? 何日も食べられず空腹に耐えきれなくなりそう、禁止事項が多くハードルが高そう…など、"つらく苦しい断食”を思い浮かべる人も多いかもしれません。
でも、イシハラクリニックの石原新菜先生によると「半日からでもOK」「期間中もお味噌汁や梅干し、黒砂糖は食べてOK」「つらくなったら中断可能」など、もっとフレキシブルにトライできるものだとのこと。そんな“正しくて効果的なファスティング”について、具体的な効果やメリット、向いている人・いない人、気をつけるべき点などを詳しく聞いてみました!
医師・イシハラクリニック副院長
処方を中心とする診療を行うかたわら、メディアへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、生活の中で実践しやすいアドバイスにも定評あり。著書は 13万部を超えるベストセラー『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム)をはじめ、『オトナ女子の不調がみるみる改善する本』(徳間書店)、『「空腹の時間」が健康を決める』(新星出版社)など30冊を数え、韓国、香港、台湾、ベトナムでも翻訳され出版されている。
そもそも「ファスティング」って何?
石原先生:ファスティングとは、日本語にすると「断食」で、水のみで行う水断食から、酵素ドリンクやジュースを飲みながら行うもの、半日など短い期間で行うプチ断食など、さまざまな種類があります。
もともと人間の体は「消化・吸収」の作業にいちばんエネルギーを使うといわれています。食べものが口の中に入ると、まず胃袋で4時間ほど時間をかけながら分解され、次に十二指腸で胆汁や膵液によってさらに分解、その後、小腸で栄養が吸収され、最後に大腸に到達する…というように、見えないところでとても大変な作業が行われているんです。つまり、毎日3食、お腹いっぱい食べていると、ものすごく胃腸に負担をかけることになります。
ファスティングをすることによって一時的に「消化・吸収」の作業をしなくなると、その時間が内臓のメンテナンスにあてられ、胃腸だけでなく肝臓や膵臓、腎臓なども休ませることができるのです。
ファスティングで期待できる効果は?
1. 全身の臓器の働きが活発になる
石原先生:食べものを摂取すると、消化吸収に必要な血液が胃腸に集まるため、ほかの臓器の働きが鈍ってしまいます。昼食のあとに頭がボーッとして眠くなるのも、これが一因。食べものを断つことで、血液が全身にしっかりと巡り、さまざまな臓器が活発に動き出すといわれています。例えばファスティング中、腎臓の働きがよくなって排出の力が高まると、驚くほど濃い尿が出てくることも。また、3〜5日間ファスティングを続けると目やにや舌苔が出たり、湿疹などの症状を訴える人も多いのですが、これは出しきれば出なくなりますし、食事を再開すれば治まります。
2. 血液中の老廃物を排出する
石原先生:1日3食、脂肪分の多い食事をしている人は、コレステロールや中性脂肪が高く、余分な栄養素で血液が汚れてしまっています。これがいわゆる「老廃物」で、体に必要な栄養素が取り込まれたあとの残り物。たくさん食べる人は、その分、老廃物もたまりやすいのです。ファスティングによって体内に栄養素が取り込まれなくなると、その老廃物がエネルギーとして使われるため、余分なものが排出されるといえます。
3. オートファジー機能やサーチュイン遺伝子が活性化される
石原先生:何日もファスティングを続けるのが難しい場合は、朝ごはんだけを抜いて胃腸を休ませる「1日リセット法」もおすすめ。16時間以上食べないことで「オートファジー」機能が働くからです。最近耳にすることが多くなったオートファジーとは、日本語にすると「自食」、つまり自分を食べるという意味で、軽い飢餓状態に陥ることで細胞の中のいらないタンパク質や、血管に付いている脂肪分などを回収してエネルギーに変える作用のことです。また、食べものの摂取量を減らすことで、「サーチュイン遺伝子」、別名、長寿遺伝子が活性化されるなど、さまざまないいステップにつながる効果も期待できます。
酵素ドリンクやジュースを飲むのはなぜ? 準備食や回復食はマスト?
石原先生:体の中にたまったものをエネルギーに変える=代謝を促すには、ビタミンB1、B2やB6などが必要です。水だけで断食をすると、この代謝がうまくいかなくなったり、低血糖で倒れてしまう可能性も。酵素ドリンクやジュースでビタミンやミネラル、糖分を摂取することで、体に極端な負担をかけるのを防ぐことができます。当院の断食施設では、抗酸化作用の高いにんじんジュースを出していますが、自分に合うもので大丈夫です。
ファスティング前に消化のよいものや糖質を抑えた準備食を推奨しているところもありますが、これはマストではないと考えています。逆に、回復食はとても大切です。長く固形物を入れていない状態で急に食べものを食べると、気持ち悪くなったり、下痢になってしまう危険があるためです。
1週間など、長い断食後の1食目は、おかゆをもっと薄めた「おもゆ」をおすすめしていますが、3日程度の断食なら、普通のおかゆや納豆、味噌汁、お豆腐なども少しずつ食べてOK。次の食事から、焼き魚などを少しずつ足していきましょう。せっかく断食をして胃が小さくなっているので、ファスティング後は食べすぎない習慣をつけていくといいですよ。
ファスティング中の注意点。実は向いていない人もいる!
石原先生:ファスティング中は、カフェインやアルコールの摂取は臓器に負担がかかるのでNGです! また、家でダラダラ過ごすのも、つい冷蔵庫を開けてしまったりしてつらくなるので失敗の原因に。ウォーキングやヨガをするなど、体調を見ながら軽い運動をするのがいいでしょう。
低血糖でふらふらする場合は、酵素ドリンクを飲んだり黒砂糖を食べたりしてみてください。塩分摂取のため、具なしの味噌汁や梅干しを食べてもかまいません。また、生理中は貧血になりやすく、生理前は痩せにくいため、ファスティングをするタイミングには適していません。生理後に始めるのがおすすめです。
ここまでファスティングのメリットについてお伝えしましたが、実は向いていない人もいます。とても痩せている人にはファスティングをおすすめしていません。しっかり食べているのに痩せているという人は、もともと胃腸の栄養吸収が悪いので、ファスティングによって体重が落ちすぎ、体調が悪くなる可能性があります。貧血の人や、高齢者、成長期のお子さんも避けたほうがよいでしょう。
これからファスティングをする人へ
石原先生:絶対に何日間やらなければいけない、ということもないですし、つらくなりすぎたら中断してOK。最初はお腹が空きますが、慣れてくると「空腹が気持ちいいな」という感覚になれると思います。日頃食べすぎていると感じている人は、自分に合った方法でぜひトライしてみてくださいね!
実際にファスティングに挑戦してみた!
ファスティングの基本がわかったところで、セルフケアを広める活動をしているクリエイターChiiが、実際に2日間のファスティングに挑戦。くわしい様子はInstagramで動画をUPしているので、そちらもぜひご覧ください!
『NOUN』の酵素ドリンクで、2日間のファスティングSTART!
2日間コース+ハイドロジャー ¥25,488・回復食セット ¥2,700/NOUN
https://landb.junonline.jp/news/127227
Chii:今回は、SNSで話題になっている『NOUN』の酵素ドリンクで、2日間のファスティングに挑戦しました! この酵素は、75種類以上の食材と天然の野草を長期間熟成させて作られているそうで、プルーンジュースのような味。これまで飲んできた酵素ドリンクに比べて甘さ控えめで、さっぱりと飲みやすかったです。これを、1日180〜300ml、常温の水で3〜4倍に薄めて1日かけて飲んでいきます。
届いたファスティングキットの中には、筋肉を落ちにくくするアミノ酸や、肌・免疫に働きかけるビタミンCのサプリメント、無添加の梅干し、オーガニックルイボスティーが入っていて、これらは期間中にとってOKだそう。
●1日目
昼はストローでちょこちょこ飲むようにし、夜はお湯で割ってホットに。
Chii:開始日の朝は、まず良質な水を200〜400ml飲むことが推奨されています。私は白湯にしてゆっくり飲み、体を目覚めさせました。日中は脱力感がすごくて仕事にならなそうだったので、映画を観たり部屋を掃除したりして過ごしました。初心者の方は、お休みの日にスタートさせるほうがいいかもしれません!
途中お腹が空くこともありましたが、「空腹感は温かい飲み物で抑えられる」と同封されたマニュアルに書いてあったので、酵素ドリンクをお湯で割って飲んだり、付属のルイボスティーを飲むなどして、なんとか1日過ごせました。この日の夜は軽く入浴。お風呂から上がるとどっと疲れて、10時前には就寝してしまいました…。
●2日目
Chii:翌日は朝7時頃起床。いつもよりぱっちり目が覚めてすごく気持ちよかったです。なんとなく、前日より肌がワントーン明るくなり、浮腫も取れて輪郭もすっきりした気が…!
お昼は塩分摂取のため、白湯に梅干しを入れた「梅干し湯」を飲みました。不安だった2日目ですが、初日と比べて全くお腹が空くことがなかったのがびっくり。食事のあとに頭がボーッとしてしまうということもないため、仕事もはかどって普段よりいいクリエイティブが作れたような気がします! 2日だけでも体の変化を感じたので、ほかのファスティング体験者のエピソードも聞きたくなりました。
回復食はこんな感じ
ファスティング明けの回復食
Chii:ファスティングの2日間を終えたら、徐々に普通の食事に戻していきます。最初の3食は『NOUN』で購入した回復食セット(スッキリダイコン、中華粥、ミネストローネ)をいただきました!
1食目は、大根を昆布と干し椎茸のだしで煮た「スッキリダイコン」。食物繊維をしっかりとることで、静止していた胃腸の働きを通常に戻してくれるそう。私はSNSでおすすめされていた、きゅうりとりんごもプラスしました。セットに入っていた中華粥とミネストローネもとてもおいしく、満足感が高かったです。すべて無添加で、しかも電子レンジで温めるだけで食べられるので、ファスティング明けに何を食べたらいいかわからないという方や料理が苦手な方にもおすすめ!
ファスティングを終えて。体と心の変化
Chii:ファスティングの2日間と回復食期間の1日を合わせた計3日間を終えて、まず体のだるさや重さがすっきりしました! そして、特に大きな変化を感じたのは肌。「荒れたりしませんでしたか?」とSNSで質問をいただきましたが、実際はまったく逆。くすみが抜けてワントーン明るくなったのと、ハリも出て化粧ノリがよくなった気がします。
また、規則正しい生活を意識できるようになったのも大きな変化でした。ファスティング中のルール「寝る前4時間は食べない」を続けて実践していたからか、朝もすっきり起きられるように。ファスティングが気になっている方は、ぜひ短期間からトライしてみてください!
レビュー/Chii 取材・編集/種谷美波(yoi) Photo by xamtiw iStock / Getty Images Plus