なぜ今、「香り」がストレス対策で注目されているの?
リモートワークやマスク生活が続き、新型コロナウイルスへの不安などが蓄積するなか、改めて「香り」の効果に注目する人が増えています。初めて緊急事態宣言が発令された2020年1月~5月の調査(※マーケティングリサーチ会社インテージ調べ)によると、芳香剤・消臭剤の売上金額は前年費150%に。
香りを使ったリラクセーションといえば、アロマセラピー。改めてその定義を東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部の朝澤恭子先生にうかがうと、「アロマセラピーとは、アロマ(芳香)+セラピー(療法)からなる言葉で、植物から抽出された精油を用いて、疾病の治療や予防、心身の健康やリラクゼーション、ストレス解消を目的としています」とのこと。
五感の中でも、脳にダイレクトに作用するのが香り。人は鼻から香りをかぎますが、鼻腔で香りの分子がキャッチされると、その情報が感情や本能をつかさどる大脳辺縁系、自律神経系をつかさどる視床下部に伝わります。その結果、体温や睡眠などの自律神経系、ホルモンの分泌といった内分泌系、免疫機能などのバランスを整えるというわけ。また、アロマセラピートリートメントなどによって、精油成分は皮膚からも体に働きかけることがわかっています。
おすすめの精油とその効果をおさらい!
アロマセラピーで使う精油は、それぞれに特有の芳香と効能があります。香りの好みはもちろん、体や心の状態に合わせて選ぶことで、症状の緩和につながります。女性ホルモンに働きかけるなど、女性に多い不調や悩みにおすすめなものも! 例えば…
●生理不順、PMS(月経前症候群)、更年期の不調には…イランイラン、ゼラニウムなど
●ストレス、不安、不眠には…ラベンダー、オレンジなど
●冷え性には…ジンジャー、ヒノキなど
●食欲不振には…ナツメグ、コリアンダー(パクチー)など
●片頭痛には…ラベンダー、イランイランなど
●ダイエットには…グレープフルーツ、オレンジなど
おもな精油それぞれの作用は以下もご参考に。
精油はどう使うと効果的? 気をつけるべきポイントは?
例えばバスタイムなら沐浴や、お風呂上がりのトリートメントに。また寝る前のリラックスタイムなら芳香浴や蒸気吸入など、精油にはさまざまな使い方が。特に道具も必要ないので、気楽に試せそう!
●芳香浴:ティッシュやハンカチに精油を1~2滴たらして枕元に置く。
●蒸気吸入:お湯に精油を1~3滴落として立ち上がる香りの湯気を楽しむ。
●沐浴:バスタブにお湯を張り、精油を1~7滴入れてよくかき混ぜて入浴する。
●手浴:洗面器などに精油を1~3滴たらして手を浸す。
●足浴:洗面器などに精油を1~3滴たらして足を浸す。
●トリートメント:アーモンドオイルやホホバオイルなどの植物性オイルをベースに、精油を1%以下の濃度(10ccのオイルに精油1~2滴ほど)になるように混ぜ、肌に塗ってマッサージ。
以下のポイントにも注意しながら、安全に精油を活用してストレス対策を!
●精油を肌に使う場合は必ず希釈する。
精油の原液は刺激が強いため、トリートメントなどに使う際は必ず1%以下の濃度に薄めて。
●グレープフルーツ、ベルガモット、オレンジ、レモンなど「光毒性」のある精油の使用後は直射日光を避ける。
光毒性とは、紫外線などの光を受けることで化学反応を起こして生じる毒性のこと。日中に使用する際は注意が必要です。
●妊娠中は避ける。
収縮・弛緩の作用で胎児への影響が出る可能性があるため。使用する際は医師や専門家に相談して。
●悪性腫瘍や炎症のある部位などへの使用は避ける。
医師による治療を受けたり薬を処方されている場合は、必ず事前に相談してから使用を。
●3歳未満の子どもに対して、また3歳未満の子どものそばでは使用するのを避ける。
脳への刺激が強すぎる恐れがあります。子どもがいる部屋とは別の部屋で使うなどの配慮を。また、3歳以上の子どもに使用する場合は成人の使用量の10分の1程度から始め、多くても2分の1程度にするなど注意しながら使いましょう。
東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部看護学科 准教授
専門は母性看護学、助産学など。東京医療保健大学のアロマセラピーサークル「ひいりんぐぽっと」で勉強会や技術トレーニングなどの指導にあたり、老人保健施設や東京医療センターでのボランティア活動、産後の女性へのハンドトリートメントなどの活動にも注力する。
構成・文/浅香淳子(yoi) Photo by Botamochi, LightFieldStudios/iStock/gettyimages