「心理カウンセリング」や「カウンセラー」「公認心理師」「臨床心理士」など、メンタルヘルスにかかわる職業や資格の名称は、知っているようで曖昧です。悩みの相談先を探すうえでも大切なカウンセリングにまつわる専門用語について、公認心理師・臨床心理士の井澗知美さんに伺いました。今回は、「臨床心理士」になるためのプロセスや資格更新の義務について。
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Q8.「臨床心理士」を取得するには、どんな条件が必要ですか?
公認心理師、臨床心理士
A8.指定大学院や専門職大学院の入学・修了が必要です
「臨床心理士」とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定を受けた心理専門職です。1988年から検定試験が実施され、公認心理師が誕生する前から社会的に信頼できる心理支援の専門家資格として取得されていました。
臨床心理士になるには、4年制大学を卒業後(学部はどこでも可)、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の定める臨床心理士指定大学院(1種、2種)、あるいは臨床心理士専門職大学院に入学・修了後、臨床心理士資格試験に合格すると、翌年には臨床心理士資格が与えられます。医師免許取得者なども受験可能です。
専門学校卒や短大卒、高卒の場合、臨床心理士になるには、まず大学に入学するか、大学3年次編入を利用するか、あるいは各指定大学院に問い合わせて「4年制大学卒業程度」と認めてもらわなければなりません。大学院によって科目の名前はさまざまですが、公認心理師と同様に基礎的な科目や基本的な理論、職域に関する科目などを学びます。公認心理師よりも、より臨床(実際の診察)について深く学び、研究法なども履修科目に含まれている場合が多いです。
臨床心理士の受験資格を得るためのルート
臨床心理士資格を取得するためには、おもに次の2つのルートがあります。
①臨床心理士指定大学院(1種、2種)を修了し、必要な年数の心理臨床経験を積む
心理臨床経験とは、教育相談機関、病院等の医療施設、心理相談機関等で心理臨床に関する従事者(心理相談員、カウンセラーなど)としての勤務経験のことで、無給のボランティアや研修員等は対象外です。
第1種指定大学院として定められている大学院に進学した場合は心理臨床経験不要ですが、第2種指定大学院として定められている大学院に進学した場合は修了後に1年以上の心理臨床経験が必要になります。
②臨床心理士専門職大学院において、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻し、専門職学位過程を修了する
この他に、海外での指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後に日本国内において心理臨床歴2年以上を有する人や、医師免許取得者で免許取得後に心理臨床歴2年以上を有する人も受験可能です。
臨床心理士試験の過去5年間の合格率は、60%台で推移しています。また、臨床心理士は資格取得後の自己研修が求められることから、5年ごとの資格更新が義務づけられています。資格更新には、5年間のうちに次のような活動を行い、合計15ポイント以上を取得する必要があります。
〈資格更新に必要な活動の取得ポイント〉
●臨床心理士研修会への参加(講師・発表者)…4ポイント
●臨床心理士研修会への参加(受講者)…2ポイント
●ワークショップ型研修会への参加(講師・発表者)…4ポイント
●ワークショップ型研修会への参加(受講者)…2ポイント
●研究誌・機関誌への研究論文に発表(原著)…10ポイントなど
より専門性が高いカウンセラーを目指すため、「公認心理師」と「臨床心理士」双方の資格を取得する人もいます。
構成・取材・文/国分美由紀
出典/『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)