「心理カウンセリング」や「カウンセラー」「公認心理師」「臨床心理士」など、メンタルヘルスにかかわる職業や資格の名称は、知っているようで曖昧です。悩みの相談先を探すうえでも大切なカウンセリングにまつわる専門用語について、公認心理師・臨床心理士の井澗知美さんに伺いました。今回は、公認心理師が守るべき「法的義務」と「職業倫理」について。

メンタルヘルス 井澗知美 カウンセリング 臨床心理士 公認心理師 カウンセラー-7

GoodStudio/Shutterstock.com

Q7.カウンセリングで話したことは、秘密にしてもらえるのでしょうか?

お話を伺ったのは…
井澗知美

公認心理師、臨床心理士

井澗知美
大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。専門は発達臨床心理学。国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、日本におけるペアレントトレーニングプログラムの開発に携わる。著書に『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)など著書多数。

A7.秘密保持義務など、公認心理師が守るべき義務や禁止事項は法で定められています

たとえ心理職の専門家としての知識や姿勢を持っていても、カウンセラーが守るべき行動に反していては、専門家として呼ぶことはできません。公認心理師法では、公認心理師が守るべき義務や禁止されている事項を「法的義務」「職業倫理」としてまとめていますので、どのようなことが法で定められているのか簡単にご紹介します。

「法的義務」として定められていることは、「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「連携等」「資質向上の責務」の4つがあります。

◆信用失墜行為の禁止
公認心理師資格を持つ人が、他の公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない、という意味です。この行為が具体的に何を指すのか、法律で定められているわけではありませんが、社会人として、またカウンセラーとして業務中のみならずプライベートでも行動に留意しましょう、ということです。

例えば、プライベートの飲み会でカウンセラーが泥酔してしまい、同業者や同僚を口汚く否定している場面をもしクライエントが見たら、どう思うでしょうか。クライエントは泥酔しているカウンセラーだけでなく、カウンセラー全体を信用できなくなってしまうかもしれません。

◆秘密保持義務
その名の通り、クライエントが話した内容など、業務で知りえた情報(秘密)を、許可なく他の人に話したり伝えたりしてはならない、という意味です。クライエントの情報を書いた紙やカルテなどを無断で人に見せることもいけません。この義務に違反すると、「一年以上の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則の対象や、公認心理師資格の登録取り消しなどの処分の対象となります。

ただし、この「秘密保持義務」には例外があります。それは、自傷・他害の恐れがあるケースです。そういう場合は「保護義務」といって、犠牲者になり得る人に対して警告したり、警察に通告したりする義務があります。

◆連携等
クライエントに援助を行うために多職種や関係者(家族や職場)などとの連携を保つ義務のことです。保健医療や福祉、スクールカウンセラーであれば教育現場、司法の現場などにも連携を取る義務があります。

そして、クライエントに主治医がいる場合は主治医の指示を仰がなければならないということも法律で定められています。これに違反した場合、公認心理師資格の登録取り消しなど、処分の対象となります。

◆資質向上の責務
カウンセラーが常に最新の研究や検査の開発などに目を向けて、スキルアップしていく責務のことです。研究会で他のカウンセラーの事例を学んだり、学会に行って最新の研究報告を聞いたりすることは、公認心理師として法的に定められている努力ともいえます。

公認心理師に求められる職業倫理

「法的義務」と重なる部分もありますが、公認心理師の「職業倫理」は下の7つの内容があげられています。その内容は大きく3つに分けられます。

〈かかわり方や態度〉
①相手を傷つけない、傷つけるような恐れのあることをしない
②相手を利己的に利用しない(多重関係を避ける)
③一人一人を人間として尊重する
④すべての人びとを公平に扱う。社会的な正義、公正・平等の精神を現す(差別をしない、など)

〈専門範囲の理解〉
⑤十分な教育・訓練によって身につけた専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉に寄与する

〈秘密保持とインフォームド・コンセント〉
⑥秘密を守る
⑦インフォームド・コンセント(十分な説明による合意)を経て、相手の自己決定権を尊重する

わかりにくい言葉について解説すると、「多重関係」とは、カウンセラーがすでに知っている人物をクライエントとする場合のことを言います。身近な人をクライエントとすることは、中立性や客観性、また相手への思い入れが強くなりすぎて、支援がうまくできなくなる場合があります。こういったリスクを避けるために、多重関係は禁じられています。もちろん、恋愛関係になることも禁じられています。

また「専門的な行動の範囲内」とは、公認心理師は公認心理師の専門性を超えて、支援することはできない、という意味です。例えば、小児科クリニックでカウンセリングを受けているクライエント(子ども)の悩みが両親の虐待によるものだった場合、クリニックだけでは対応できません。子ども家庭支援センターや児童相談所に勤めるカウンセラーが専門として対応するべきです。そして、そのような場合は必ずクライエントに理由を説明したうえで専門機関を紹介し、クライエントが「見捨てられた」と思わないような対応をする必要があります。

構成・取材・文/国分美由紀
出典/『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)